2013年 04月 07日
機宜*73
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化学物質とは

人工的、あるいは工業的に合成した物質のことを一般的に化学物質と言っている。天然物ではない物ということ。
その数は非常に多く、何十万種類も存在する。
有毒性は物質によって大きな差があるため一概に論じることは出来ない。
化学物質は、固体(粉状含む)、液体、気体、ミスト等、様々な状態で存在している。


有機溶剤とは

有機溶剤は物を溶かす性質を持つ、常温で液体の有機物質の総称。
多くは毒性を持つ。
しかしながら溶剤が液体の状態で安定している時は管理さえしっかりしていればさほど問題はない。

生体との関係で問題なのは、有機溶剤が持つ揮発性と脂溶性という特徴である。
揮発性が発揮されると呼吸などにより容易に人の身体に入り込むことが可能であり、脂溶性が発揮されれば皮膚からも吸収されるということになる。

溶剤が揮発(蒸発)するということは気体になるということである。
蒸発速度は溶剤の蒸気圧に比例する。(気体へのなりやすさは溶剤の「蒸気圧」という数値を見ると分かるということ)
蒸気圧が高いと蒸発しやすく(気体になりやすく)、蒸気圧が低いと蒸発しにくい(気体になりにくい)と言える。
従って蒸気圧が高いほど高濃度暴露しやすい。
また沸点(沸騰する温度)とも関係があり、一般的に沸点の低い溶剤ほど蒸気圧が高く、高濃度暴露の危険性も高くなる。

有機溶剤の多くは経皮吸収する。


溶媒とは

固体、液体、気体を溶かす液体の総称。溶剤と呼ばれることも多い。
溶媒に溶かされるものが溶質であり、溶媒と溶質を合わせて溶液という。

一般的には、溶質をよく溶かし、化学的に安定していて溶質と化学反応しないことが溶媒の重要な条件となる。
(溶質と溶媒が化学反応を起こしながら溶解する場合がある)
目的によって、沸点が低く除去しやすい(蒸発しやすい)ことや安全性が重視される。

有機溶剤、水などが溶媒となる。
ちなみにフレオン(フロン)も溶媒として使える。
フレオンは化学的に安定しており,毒性も引火性もない。沸点が常温のものもある。


スプレー缶は、整髪剤や殺虫剤などの溶剤と、溶剤を噴射させるための噴射剤が入っている。
この噴射剤にかつてフレオン(フロン)が使用されていた。
喘息患者が使う吸入器にもフレオンが使われていた。
フレオンに圧力をかけて液体にし、そこに薬剤を混ぜておく。
缶を押すと噴射口の圧が下がり、中身がミスト状になって吹き出すという仕組み。
ミスト状にすることで肺に届きやすくなる。(薬を肺に運びやすい)



蒸発のしやすさ(気体へのなりやすさ)

●温度が25℃である場合の蒸気圧 (参考に沸点)

 ・水 23.8mmHg (沸点100℃)
 ・サリン 2.5mmHg (沸点150℃) 
 ・ソマン 0.4mmHg  (沸点198℃)
 ・タブン 0.057mmHg  (沸点248℃)
 ・VX  0.0007mmHg (沸点292℃)

サリンは水よりも蒸発しにくい(気体になりにくい)が、神経ガスと言われている他の物質よりも蒸発しやすい(気体になりやすい)ことがわかる。
インターネットの記事には「サリンは揮発性が高い」と書いてある人が非常に多いのだが、これは誤解を生じる表現である。
「神経ガス」も同様に誤解を与える。
元は液体の状態にあり、ガスにすることはそれほど容易いことではない。


●温度が20℃である場合の蒸気圧

 ・水 17.5mmHg

(化学兵器)
 ・サリン 2.1mmHg  
 ・ソマン 0.27mmHg 
 ・タブン 0.036mmHg    
 ・VX   0.0044mmHg

(法令指定有機溶剤の一部)
 ・トルエン 24mmHg
 ・イソプロピルアルコール 32.4mmHg
 ・ベンゼン 76mmHg
 ・四塩化炭素 89.6mmHg
 ・メタノール 96mmHg 
 ・クロロホルム 159.6mmHg
 ・アセトン 185.1mmHg
 ・ジクロロメタン 348.9mmHg
 ・ジエチルエーテル 442.2mmHg
 ・ガソリン、石油エーテル、石油ベンジンなど 250~400mmHg

(その他)
 ・エタノール 43.7mmHg
 ・フロン113 284mmHg
 ・アセトアルデヒド 740mmHg
 ・ホルムアルデヒド 3268mmHg


ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質の1つであり、発癌性もあると言われている。
家具や建築資材、壁紙を貼る為の接着剤、塗料などに含まれている。また防腐剤としても使用されている。
常温でも簡単に気化する。




気体の重さ

物質は温度によって状態を変える。気体⇔液体⇔固体
この時の質量・体積・密度の変化は下記の通り。

■質量―物質そのものが変わるわけではないから質量は変化しない。物質を構成する粒子(原子や分子)が温度変化によって消えるわけではない。

■体積―温度が高くなるほど大きくなる。液体→気体の体積の変化はとても大きい。

■密度―温度が高くなるほど小さくなる。温度が高くなると体積が大きくなることから、結果的に分子の密集度が小さくなる。

質量も密度も重さと言ってしまうので少々分かりにくいが、密度とは、単位体積あたりにどれだけの質量が含まれているかという状態量のこと。

気体から液体、液体から固体に変化すると、密度は増して同じ体積なら重くなる。
つまり、ほとんどの物質の重さ(密度)は、気体<液体<固体なのである。
但し水は例外で、液体よりも固体(氷)のほうが軽い。


気体の重さの指標としてあげられるのが、「密度」や「比重」である。

密度の単位はkg/m3。
気体は温度、圧力の影響により体積が変化するが、一般的に表示されている密度というのは基準(ノルマル)状態である(0 ℃・1気圧)。
気体比重は、空気を基準(1.29kg/m3)とした比であるために単位はない。
比重が1より大きいものは空気より重いということになる。


・水素      0.09kg/m3  0.07
・アンモニア  0.77kg/m3  0.51
・メタン     0.72kg/m3  0.55
・フッ化水素  0.92kg/m3  0.71
・一酸化炭素  1.25kg/m3  0・96
・窒素      1.25kg/m3  0.97
・酸素      1.43kg/m3  1.11
・二酸化炭素  1.98kg/m3  1.53
・プロパン    2.02kg/m3  1.56
・シアン     2.33kg/m3  1.81
・塩素      3.21kg/m3  2.49
・ヨウ化水素  5.79kg/m3   4.48


・トルエン 3.1

・サリン 4.8
・タブン 5.6
・ソマン 6.3
・VX   9.2

しかし必ずしも単一気体でない。
2種類以上の気体が混じった状態を「混合気体」というが、空気もそうである。
窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴンなどの混合気体である。
これらが分離しないのと同じように、違う物質が接すると混ざろうとする力が発生するので、単一気体との単純比較はできない。
撒かれたサリンはどういう状態にあったか?
サリンが空気より重いからすぐさま下に沈むとは言えないのである。

分子は絶対零度にならない限り絶えず運動している。
この運動によって分子 は「拡散」する。
例えば2種類の気体が容器の中に存在していて、容器内の場所により濃度に差があっても、時間が経つとその差はなくなり容器内の濃度は均一になる。

大気中に放出された気体はさらに拡散しやすく、すぐに空気と混合する。
空気との混合気体は相対的に空気と同じ密度(重さ)になると思われる。
こうした状態になった気体が分離して再び沈むことも考えにくい。


『サリンが来た街』という本ではサリンが空気より重いことが繰り返し強調されていた。
空気より重いサリンなのに4階や3階の住人を死亡させたのは不思議であるという論調。
一方、河野宅の犬や床に寝ていた奥さんの被害は下部であるから納得できたということであった。

「サリンの比重は空気よりもずっと重い(水の中で1.1、空気中では4倍)のに、マンションの上の階の人が死亡している。なぜなのか?

2匹の犬が最も早い時間にダメージを受けたのは、地面を這うサリンが母屋の縁の下を南北に走る通風口からダイレクトに襲ったため。


人は何故、窓を開けたり、換気扇を回したりして、換気するのか。
マンションの部屋で苦しんだ人は、何故屋外に出ようとしたのか。
屋外で撒かれた気体(仮にサリン)が拡散も希釈もせずに高濃度で移動したと考えることには無理がないだろうか。






 

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by yumimi61 | 2013-04-07 16:35


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