2013年 10月 06日
器官68
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音楽出版部門もソフト部門もあって売れっ子アーティストがいて赤字ならば、音楽は儲からないということではないの?

2007年にイギリスの「テラ・ファーマ・キャピタル」が買収したEMI。
買収前年の2006年の収支は8600万ポンド(約184億)の黒字ではあったが、すでにその前から負債を抱えていた。
テラ・ファーマの買収額は、負債込みで32億ポンド(約7660億円)、負債なしで24億ポンド(約5750億円)であった。
前述したがテラ・ファーマは買収資金の大半をシティグループから調達した。


テラ・ファーマは経費削減のため人員整理など企業再構築を試みた。
しかし投資会社から来た経営者で音楽事業の経験もないということから反感を買うこととなり、アーテイストが離反。
折しも2007年は、サブプライムローン問題やリーマンの破綻などにより世界金融危機に陥った年でもあった。
テラ・ファーマはEMIの不振をもろに受ける形となり、2008年には9億ポンド(約1800億円)の赤字計上した。
その責任を取り、2009年にガイ・ハンズがテラ・ファーマのCEOを辞任。


ガイ・ハンズは2010年にシティグループ相手に訴訟を起こした。
テラ・ファーマがEMIグループを買収した時にシティグループに騙されたと訴え出たのである。
「サーベラス・キャピタル・マネジメントがEMI買収に対抗案を提示する」という虚偽の説明をガイ・ハンズにしていたという。
サーベラス・キャピタル・マネジメントは、ソフトバンクとともにあおぞら銀行に関わった、いわゆるハゲタカファンドである。
またソフトバンクはヤフー(アメリカ)の株式による先物取引でシティグループから資金調達したことは先日こちらに書いた
最終的には和解に至ったが、シティグループの言い分としては、「サーベラスが対抗案の提示を取りやめたことを知らなかった」「EMIの企業評価はあなたがしたもので、サーベラスもシティグループも関係ない」というものであった。


EMIの業績は回復せず負債を積み上げ、2011年には34億ポンド(約4500億円)にもなっており、テラ・ファーマはシティグループに経営権(株式)を譲った。
出資者に譲ることにより、負債を12億ポンド(約1600億円)まで減らすことが出来たという。

(注)ポンドから円への換算は当時のレートを適用。



一番怖いのは経済活動に影響を与えうる人達を怒らせることである。

大手レコード会社を離れるアーティストが増えている。
理由は幾つかあるのかもしれないが、一番の理由はアーティストの収入(利益)を増やすためである。

レコード会社はアーティストの作った音楽を製造して宣伝し流通させている。
コストが掛かるのだから必要経費は引かれて当然。
アーティストと顧客の間に入るのでマージン(手数料)も取る。
これが分かっていないことには話にならないが、アーティストもおそらくこれくらいは分かっているのだろう。
では何が気に入らないかと言えば、「それにしたって取り過ぎだろう」ということらしい。
このことについては、スティーブ・ジョブズが説明してくれている。

=ジョブズの処方箋=

それは前払金を払うことを止めることだ。売上高から勘定すること。そしてアーティストにはっきり言うことだ。「私たちはあなた方に、入ってきたお金の中から1ドルにつき20セント差し上げましょう。その代わり前払金はもうなしです」と。会計はおかげでシンプルになるだろう。利益から払うんじゃない。収入を元にして支払うんだ。とてもシンプルだよ。成功すればそれだけお金もたくさん入る。成功しなければ一銭もお金は入らない。我々はこのまま行くと、マーケティングに伴う費用のリスクも負っているわけだから早晩消えてしまうかもしれない。しかし、成功しなければ金もないし成功すればたくさん金が手に入るというこの考え。これこそが解決策だ。ほかの世界でもそうすればうまく行くはずだ。


ジョブズの提案した解決策は、シンプルな能力主義、個人主義。
この考えに基づけば会社を「家・ファミリー」なんて考えるのは言語道断。
新人や失敗した仲間の育成や援助などすべきではない。
営業利益(本業の利益、必要経費は引く)でも経常利益(金融収支も含める)でもなく粗利益(売上高-原価)を基準にしろと言っているのだ。
じゃあ税金とか会社の建築費とか光熱費とか人件費とかはどうするの?
無視しろ。
え?
言っておくけどジョブズは社長よ。

「ほかの世界」、、、そう「投資」にも言えることである。というか、「投資」の否定である。


営業利益も経常利益も関係ないとすると、会社に頼る必要はない。自分でやればいいのだ。
それを大きく可能にしたのがインターネットである。
多少売上が減ったとしても手数料を取られない分だけアーティストは利益を確保できる。
しかしそうは言っても、これが出来るのはすでに有名になった人達だけ。
一発当てるだけでいいなら、何か話題を作ればいけるかもしれない。



いかにソフトバンクが行った買収が破格かということを思い知らされる。

EMIの音楽出版部門をシティグループから買収したのは「ソニー連合」。
ソニー連合とは以下の投資グループ。
買収額は22億ドル(約1760億円)。

・ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ
・マイケル・ジャクソン・エステート(マイケル・ジャクソン遺産管理財団)
・GSOキャピタル・パートナーズ(ブラックストーン・グループ傘下の投資会社)
・ジンウェル・キャピタル(兆赫?台湾?)
ムバダラ・デベロップメント(アブダビ政府傘下の投資会社)
・デービッド・ゲッフェン(映画プロデューサー)


ブラックストーンは、イー・アクセスの取締役(宮崎アラン)の経歴に出てきた
デービッド・ゲッフェンはその昔、カート・コバーンにギターを買ってくれなかった人(冗談)。



三匹の子豚のお話を読まずに大人になったのかしら?(ワラ?

EMIは130万曲ほどの版権を有しているそうだ。
版権というのは著作権の古い言い方であるが、著作権にも様々な種類がある。


【著作権(財産権)】著作者(個人)の権利。権利は移転することもできる。

・複製権-著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利
・上演権・演奏権(公演権)―著作物を公に上演したり演奏したりする権利
・上映権-著作物を公に上映する権利
・公衆送信権・伝達権-放送、有線放送、自動若しくは手動公衆送信(サーバー経由)、送信可能化に係る権利
・口述権-言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利
・展示権-美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
・頒布権-映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利
・譲渡権-映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利
・貸与権-映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
・翻訳権・翻案権-著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)
・二次的著作物の利用についての原著作者の権利-自分の著作物を原作品とする二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利

たとえば楽曲であれば、口述権、展示権、頒布権以外、全ての権利を有している。
但しこれだけの権利を個人で管理するのは大変である。
法律その他、勉強しなければならないし、それを管理するだけの時間や人が必要である。
従来のアーティストは楽曲の著作権を音楽出版社に譲渡したり管理を委託する契約を結んでいた。(レコード会社や音楽出版社が原盤権を有する)
それで取り分が少ないということになるのだろうけれども、会社員と考えれば不思議なことはない。
「サラリーマンにはなりたくねぇ」なんて歌った人もいたけれど、事務所やレコード会社に所属し、仕事を与えられ金銭管理などを任せ制約がある。会社員となんら変わりない。
「自由業」の人達の精神的な自由の無さときたら!彼らの自由の意味は就業時間だろうか。
つまり会社員と変わらないのに権利の主張の仕方が違う。
また流行り廃りの激しい世の中で、何十年も権利が守られる必要が本当にあるだろうか?(空き家は物騒だって住宅・土地調査チームも言ってわよ)
おそらく何十年も権利を主張すべき作品はごく僅かでほとんどは必要ないのである。

自由を売りにして、会社というファミリーや国家という体制を嫌う。
そのくせ徒党を組むのが大好きで、自分の家族や慈善家ぶりをアピールする。
だから主と属が反対になった時には、社会の秩序は保たれにくく、バランスが崩壊する。


【著作隣接権】著作物を公衆に伝達する者の権利。

・録音・録画権- 実演家
・複製権- レコード製作者放送事業者、有線放送事業者
・放送・有線放送権- 実演家放送事業者、有線放送事業者
・送信可能化権- 実演家レコード製作者放送事業者、有線放送事業者
・譲渡権- 実演家レコード製作者 
・貸与権- 実演家レコード製作者
・テレビジョン放送の伝達権- 放送事業者、有線放送事業者
・二次使用料請求権- 実演家レコード製作者
・レンタル報酬請求権- 実演家レコード製作者


どうしてテレビに出る人は偉い人で会社に行くお父さんは偉くないの?(全米が泣いた!)

EMIは、ビヨンセ、ジェイ・Z、ノラ・ジョーンズ、カニエ・ウェスト、アリシア・キーズなどのアーティストの楽曲の版権を所有しているとのこと。
ビヨンセやジェイ・Zは、こちらに書いた通りオバマ大統領一家ご用達のアーティストである。
ジェイ・Zは「ロック・ネイション」とマネージメント会社や「スター・ロック」というレコードレーベルを自身で設立している。(自身でと言ったって一人で出来るわけないけれど)
つまり利益を総取りしたい個人主義なのである。
そういうアーティストが大統領家のご用達でいいんだろうかと素朴な疑問を抱かずにはいられない。
少ない少ないと言うけれど、アーティストに支払われている金額は社会的な経済観念からみて適正だろうか?
オリンピック同様にみな思考停止しているようにしか思えない。


今後重点が置かれそうなのが【著作隣接権】。
デジタルコンテンツとしてのエンタテインメントである。






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by yumimi61 | 2013-10-06 00:18


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