2017年 01月 28日
父の病③
前記事に一般病棟入院基本料について書いた。
入院基本料は一定の条件のもと診療報酬の点数で決まるため、病院が独自に値段を付けられるものではない。(保険外の個室の差額ベッド代は病院独自で値を付けられる)
入院基本料の条件として大事なのは看護体制と平均在院日数(入院日数)である。
平均在院日数(入院日数)をクリアしないと所定の点数が付けられない(入院基本料が取れなくなる)ので、医療機関、特に急性期病院では入院期間短縮を目指している。
一般的には「3か月経つと追い出される」と言われることが多いが、救急搬送を受け入れているような急性期病院では入院期間は1~2週間を目標にしており、3か月なんて悠長なことはなかなか言っていられない。
このようなことを書いたわけです。

入院料金を決めるのは基本料だけでなく加算もある。
こんなケースには加算されるといった特定の場合にのみ加算されるものもあるが、そうではなくて基本料と同じく入院した誰にでも適応される加算が入院期間に応じた点数である。

入院患者の入院期間に応じ、次の点数(1日あたり)をそれぞれ加算する。
 ①1~14日以内の期間  450点加算
 ②15日~30日以内の期間  192点加算
 ③30日以上 加算なし

例えば、看護職員が入院患者7人に1人いる病院では、1日の入院基本料は15910円である。
その病院に入院した場合の入院料金には2週間までは4500円が加算されるので、1日20410円になるわけである。
入院期間が2週間を超えると加算分が、4500円/日から1920円/日になってしまい、1ヶ月を越えようものならば加算することが出来なくなる。
つまり1人の患者を長く入院させておくと病院の入院料金収入は減ってしまうわけである。
長く入院させると病院が儲からないような仕組みに診療報酬がなっているのである。
儲からないということは人件費が出なくなるということに繋がる。
給料が他よりも安いのに、生命危機にある重症患者が多く精神的にも肉体的にも辛い、患者や家族に訴えられる可能性がある、夜勤が多い、労働環境が悪いなんてことになれば看護職員が離職するだろう。
そうなると今度は看護体制が維持できなくなってしまう。


では国はどうして長く入院させないような仕組みを作っているのかというと、医療費がかさむからである。

(例)看護職員が入院患者7人に1人いる病院に1週間入院した。
20,410円(基本+加算)×7日=142,870円 ・・・病院の収入
 ・患者自己負担(3割の場合)  42,861円
 ・健康保険(国保や社保)負担 100,009円 ⇒医療費がかさむというのはこの部分のことを指す

さらには、1ヶ月の医療費の患者負担が高額になった時(一定額を超えた場合)、申請 して認められれば限度額を超えた分が高額療養費として患者に払い戻される。
公的医療保険における制度の一つなので、国保でも社会保険でも高額療養費の払い戻しは行われる。
そのため一般的な治療で入院する場合、本人負担がべらぼうに高くなるということは実はないのである。
金銭感覚は人によってだいぶ違うと思うのでうっかりしたことも言えないが、払えそうな金額で済むということなのだ。
入院してひとつ儲けようとか、会社を休み入院したからその間の給料分をカバーしたいとか、差額ベッド代や保険適用とならない食事代をカバーしたいという人は別だが、個人で保険会社の保険に加入などしなくても標準的な治療や入院費用は公的医療保険(健康保険)がかなりの部分カバーしてくれる。

医療費がかさむというのはその公的医療保険(健康保険)の負担が大きくなるということである。
健康保険には次の種類がある。

 ◾組合健保  主に大企業などの従業員が加入しているもの
 ◾協会けんぽ 主に中小企業の従業員が加入しているもの
 ◾船員保険  船員が加入しているもの
 ◾共済組合   公務員が加入しているもの
 ◾国民健康保険 自営業者や無職者などが加入しているもの

各保険には個々人から保険料が支払われていて、健康保険負担分の医療費はその保険料から捻出される。
組合健保や協会けんぽでは保険料を支払うのは労働者と雇い主である。、
組合健保では保険料(料率)を独自に決定できる。組合員(従業員)の医療費を抑えられれば保険料が少なくても済むし、会社が福利厚生に積極的であったり利益が出ている時には会社側が多く負担してくれるということも可能。
でもまあ全従業員の保険料の半分を会社が負担するわけだから会社の負担は大きい。
だから非正規社員などは加入させないといったことも出てくる。(そうすると非正規社員は国保に回る)
それでも会社が儲からなくなってくれば組合健保を維持することも難しくなってくる。
そのようにして組合健保を解散し協会けんぽに流れた会社も少なくない。
とはいってもここはまだ保険料が労使負担なので国は直接的には関係が無い。
一方共済組合や国民健康保険では、組合健保などの雇い主(使)に当たる部分が国家である。国庫負担金として拠出する。
国が直接医療費を負担するということになる。赤字国家にはこれが大変辛いというわけである。


国民の4割ほどは国民健康保険に加入しているそうである。
国民皆保険が始まった1960年代には国保というのは自営業者や第一次産業(農林水産業)従事者が主体であったが、現在は無職者が半分以上を占めており、次いで多いのは社会保険に入れない雇用者である。
無職者と言うと、そんなに失業者が多いのかと思うかもしれないが、一番多いのは定年退職した高齢者である。
会社を退職すると社会保険からは離脱せざるを得ないので国保に加入する。
従って60歳以上の国民の75%ほどは国保に加入している状況にあったのだ。
普通に考えれば高齢者ほど医療のお世話になる。つまり国保の医療費はかさむ。

●組合健保や協会けんぽ(運営者)←労働者と雇い主(保険料を支払う)
       ↓
   組合員の医療費負担


●市町村(運営者)←国保加入者と国庫負担金(保険料として支払う)
     ↓
  加入者の医療費負担


国民健康保険(通称:国保)は保険料を自治体が徴収している。保険料と言っているが税金である。
そして国庫からも拠出される。
国は親分で地方自治体より権力を持っているので、国庫負担金を決めるのは市町村ではなく国である。
加入者に課せられる税金(保険料)は一律ではなく市町村ごとに違いがあるのが特徴。
医療費が少なく抑えられる自治体は加入者の支払う税金(保険料)を少なくすることが出来る。
またどのように課するか、例えば高所得者には多く支払ってもらうのか、それとも平等割なのかといったことも自治体が独自に決定できる。

医療費増大に困った国は1984年から国庫負担の引き下げを始めた。
また会社を定年退職した人は会社で面倒みてくださいとばかりに退職者医療制度を創設して、会社に医療費を負担させ国保負担から除いた。
1984年には国保の保険料の約50%ほどを国が負担していたが、20年後の2005年にはおよそ30%になっている。
だからといって急に人々が病院にかからなくなるわけではない。
それまでと同じ程度のサービスを提供しようと思えば、国が出さなくなった部分を加入者に負担してもらうよりない。
こうして保険料はどんどん値上げされる。
あまり高くなると保険料が払えない人が出てくる。未納や未加入者が増える。国民皆保険が崩れてくる。
保険料収入や国庫負担金が減っていく市町村も国保財政難に陥って国保なんかやっていられないということになる。
2008年には後期高齢者医療制度を創設して75歳以上の国保加入者をそこに移しした。
市町村が運営者であり国庫負担金も30%程度あることは変わらないのだが、多くの加入者は国保よりも保険料が上がった。









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by yumimi61 | 2017-01-28 11:58


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