2017年 02月 13日
父の病⑤
(前回のおさらい)
一般的に「3か月で追い出される」「3ヶ月で転院させられる」と言われてるのは、急性期病院ではない病院における入院のことである。
かつては、療養型病床や慢性期病院(慢性期病棟)、老人病院などと呼ばれていたが、2000年介護保険法施行、2001年医療法改正で見直され、 高齢者とは限らない療養型病床(慢性期病院)と高齢者が中心の老人病院を「療養病床」として一本化した。
そのうえで、「医療療養病床」と「介護療養病床」に分けた。
「医療型療養病床」は医療保険を利用して入院する。
「介護療養病床(介護療養型医療施設)」は介護保険を利用して入院する。

「医療型療養病床」は病院が入院に応じてくれれば誰でも入院できるが、医療区分2と3の患者の割合をクリアしなければならないので、医療区分2と3の患者が優先される。

「介護療養病床(介護療養型医療施設)」も病院と思ってもらっていいが、誰でも入れるわけではない。
入所対象者は医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者(65歳以上)。
かかる費用は医療保険とは性質が違い、介護保険を使った施設入所に近い。
初期費用は必要ないが、月額利用料が必要。 月額利用料は施設や部屋の設備、世帯収入や課税状況によって違いがあるが、およそ9万~17万円/月ほどの自己負担となる。
医療保険ではないので高額療養費の対象でもない。
(おさらいここまで)


上に「介護療養病床(介護療養型医療施設)」に入るとおよそ9万~17万円/月ほどの自己負担があると書いたが、内訳としては次の通り。
 ①介護サービス費(入所して指定のサービスを受けるための自己負担分) 2~3万円
 ②居住費(賃料) 1~15万円
 ③食費  4~6万円
 ④介護サービス加算
 ⑤医療費
 ⑥理髪代など
 ⑦病院指定業者のレンタル品の使用料
 
個人差が最も大きいのが居住費である。病院の大部屋のような部屋ならば1万程度の負担で済むものからあるが、個室になれば高くなり、居住性を重視すればさらに高くなる。
また医学的管理が必要な人が入る場所なので、別途医療費がかかってくることが多い。
9万~17万円/月というのは比較的安くてという話で、1ヶ月の自己負担が20~25万以上になることも珍しくない。

介護保険では指定の介護サービスを1割自己負担で受けられるわけだが、①がその費用(自己負担分)である。
介護サービスは何でもかんでも希望するものを受けられるわけではなく、介護度に応じてサービスや金額は決まっている。
逆を言えば、どんなにお金を出すと言っても、介護保険における介護サービスはこれ以上は受け付けないということである。

要介護状態  支給限度額(単位) 自己負担限度額(円)
要支援1      4万9,700        約4,970
要支援2     10万4,000        約1万400
要介護1     16万5,800        約1万6,580
要介護2     19万4,800        約1万9,480
要介護3     26万7,500        約2万6,750
要介護4     30万6,000        約3万600
要介護5     35万8,300        約3万5,830
※1単位=1円
※1ヶ月あたりの限度額


そして実はこの介護保険にも高額介護サービス費制度というものがある。

区分     対象                                  負担限度額
第1段階  ・生活保護受給者                        ・・・1万5,000円(個人)
       ・老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税の人・・・1万5,000円(個人)
第2段階  本人および世帯全員が住民税非課税で
                     課税年金収入が80万円以下の人・・・1万5,000円(個人)
第3段階  世帯全員が住民税非課税で第2段階に該当しない人  ・・・2万4,600円(世帯)
第4段階  上記以外の人                          ・・・ 3万7,200円(世帯)

※(世帯)とは夫婦それぞれの自己負担額を合算できるということ。
例えば要介護5の夫と要介護1の妻がいた場合、自己負担限度額は35,830円と16,580円で合わせて52,410円となるが、高額介護サービス費制度を使えば世帯で37,200円あるいは24,600円でよいということである。

※年金は、65歳に満たない人の受給額が108万円以下、65歳以上の人の受給額が158万円以下の場合、所得税を支払う必要がない(非課税)。その金額を超えた部分は課税となる。
住民税はケースによって違うがおおまかな目安として、65歳以上で年金などの収入額が年間155万円以下であれば支払う必要がない(非課税)。
生活保護を受けている人、、障害者、寡婦(寡夫)で前年中の合計所得金額が125万円以下の人も住民税を支払う必要はない(非課税)。 合計所得金額が125万円以下を年金などの収入額に換算すると年間245万円以下となる。
国民年金の老齢基礎年金(満額)だけを受給している場合、年間78万なので非課税となる。
年間158万や155万という年金は、ひと月に換算すれば12~13万である。
障害者手帳を持っている人ならば、ひと月20万円までの収入は住民税非課税。 


「介護療養病床(介護療養型医療施設)」への入所は医療保険を使った入院とは違うので高額療養費の対象とはならないが、上記のとおり介護保険の介護サービス部分については高額介護サービス費制度の対象となる。

また、居住費・食費の補足給付もある。
但しその対象になるのは次に該当する人のみ。
注目点は所得だけでなく預貯金などの資産も加味されること。(マイナンバーで管理しているのかと思ったら、今のところそうではないらしく、持っている通帳のコピーを提出するように求められる)
今現在所得はないが預貯金は何千万何億と所有しているという場合がある。
当座の貧乏裕福は所得だけでは分からないということなのだ。
1人当たり1,000万以上の預貯金があると、年金暮らしの非課税世帯でも対象にはならない。

区分     対象                                  
第1段階  ・生活保護受給者
       ・住民税世帯非課税の老齢福祉年金受給者

第2段階  ・住民税世帯非課税で合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の人
       ・本人の預貯金などが1000万円以下(夫婦合わせて2000万円以下)

第3段階  ・住民税世帯非課税で合計所得金額+課税年金収入額が80万円以上の人
       ・本人の預貯金などが1000万円以下(夫婦合わせて2000万円以下)


上記の要件に所得も預貯金も満たないという人は、居住費と食費についても負担限度額が定められている。
国が示した標準的な居住費・食費を基準費用額として、基準費用額と負担限度額の差額が介護保険から施設に支払われる。
基準費用額を大幅に超える施設であっても基準費用額までしか支払われないということなので、お高い施設側としては受け入れたくなくなるであろう。

        多床室 従来型個室 ユニット型個室 ユニット型準個室  食費

第1段階    0円    490円     820円       490円      300円

第2段階   370円   490円     820円       490円      390円

第3段階   370円  1310円    1310円      1310円      650円

基準費用額 370円  1640円    1970円      1640円     1380円

※ユニット型とは、概ね10人以下を1グループとした生活単位(ユニット)としたケア体制のことで、食堂・リビング等の共有スペースを囲むように個室が配置されている。

※金額は1日当たり。居住費の1ヶ月個人負担限度限は、370円×30日=11,100円から1,310円×30日=39,300円となる。食費の1ヶ月個人負担限度額は、300円×30日=9,000円から650円×30日=19,500円となる。


「介護療養病床(介護療養型医療施設)」の入所期間は特に定められていないが終身を前提にはしていない。平均入所期間は約1年である。
実はこの「介護療養病床(介護療養型医療施設)」、2006年に新設の停止と2011年度末での廃止が決定された。
しかし移行が思うように進まず、2011年に廃止を2017年度末まで延長した。2017年度と言えば今年度!
何故廃止の方針なのか。
実は全ての施設の中で介護度が高い人が一番多くいるのが「介護療養病床(介護療養型医療施設)」である。
「介護療養病床(介護療養型医療施設)」の平均要介護度は4.39であるとすでに述べたところだが、ほとんどが4と5の人ということである。
特別養護老人ホーム(通称:特養、現在の入居基準は原則として要介護度3以上)の平均要介護度は3.85である。
動けない=重体というイメージが強いせいか医療法人が経営する「介護療養病床(介護療養型医療施設)」には介護度が高い人が集まってしまう結果になってしまった。
実際に動けないということは大変なことである。しかしながら必ずしも、動けない=医療の必要性が高い(医療としてお金になる)ということではない。
医療の必要性がない人が入所してしまうという問題の他、医療を売りにしている施設なだけに本来その人には不必要な医療までをも提供してしまう(医療費がかさむ)などの問題点もある。
また医療行為(例えば痰の吸引や経管栄養)を必要とする患者の受け入れ先が無いといった問題にも直面していた。
痰の吸引は介護職員では行うことが出来なかったため介護施設では受け入れ不可能となっていた。(2012年に喀痰吸引等制度ができ、介護福祉士や研修を終了した介護職員が行えるようになったため受け入れ可能な施設は増えてはいる)
自宅介護で家族が行うならば許可されるのだが、介護してくれる同居家族がいない場合には当然不可能である。
国は在宅介護を促したいのだ。


(医療保険)
■一般病床 89.4万床
■医療型療養病床 27.1万床
■精神病床 33.6万床

(介護保険)
●介護療養病床(介護療養型医療施設) 6.1万床 ・・・廃止が決定してから5~6万床減少した。
●特別養護老人ホーム 54.1万床
●介護老人保健施設 36.2万床

・有料老人ホーム
・軽費老人ホーム(ケアハウス)
・グループホーム
・サービス付き高齢者向け住宅


以前書いたように一般病床は看護体制と平均在院日数によって入院基本料に違いがでる。
7対1、10対1といった看護体制を敷く急性期病院は1~2週間での退院を目指している。
13対1(平均在院日数24日以内)や15対1(平均在院日数60日以内)といった看護体制の病院ではもう少し長くいられる。

入院基本料は一度退院すれば在院日数がリセットされるため、療養病床に入らず(入ることが出来ずに)一般病床で転院を繰り返す人が続出した。
そこで90日ルールと180日ルールが導入されたのである。

「90日ルール」
同じ理由で90日を越えて入院している患者は「特定患者」となる。再入院の場合でも前の入院日数も加算される。「特定患者」になると、看護体制には関係なく十把一絡げに、「検査、投薬、注射、病理診断、単純撮影、創傷処置・酸素吸入・留置カテーテル・鼻腔栄養等厚生労働大臣が定める処置」が包括された「特定入院基本料928点/日」となってしまう。これは15対1の入院基本料よりも低い。厚い看護体制を敷く病院にとってはたまったものではない。

「180日ルール」
同じ理由で180日を超えて入院している患者は、入院基本料の85%しか医療保険の対象にならず、残り15%分は全額患者の自己負担となる(難病、がん、重症、小児などは除外)。入院期間は転院しても通算される。
但し生活保護受給者は残り15%も公費負担となる。
例えば入院して1ヶ月の入院基本料が30万だったとする。30万の15%(4万5000)は保険外となり全額自己負担。
残りの85%(25万5000)は保険適用で、1~3割(2万5000~7万6500)が自己負担。こちらの部分は高額療養費の対象となる。


また近年急性期病院では疾病群別包括払い制度という診療報酬の算出の仕方が導入されている。
疾病群別包括払い制度(DPC, Diagnosis Procedure Combination)とは、特定機能病院を対象に導入された、急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度である。 日本の診療報酬は出来高払い方式をとってきたが、平成15年度よりDPC制度が導入された。平成24年時点では全一般病床の約53.1%を占めている。

DPCで用いる診断群分類は、約500種類の主な疾患(病名)を基本として手術・処置・副傷病名の有無などにより、さらに2494種類に分類したもの。
入院患者はそのうちのどれか1つに該当することになる。該当しない場合は今まで通りの計算。
これまで行えば行った分は多いにせよ少ないにせよ点数(お金)に反映された。これを出来高という。
DPCでは入院基本料の他、検査、画像診断、投薬、注射等が包括され、分類ごとに1日あたりの定額点数(包括点数)が予め決められている。入院日数も関係している。
(手術、麻酔、輸血、内視鏡・心臓カテーテル検査等、処置の一部、食事等についてはこれまで通り出来高)
DPCは過剰診療の防止や医療費増大の抑制に繋がるが、行っても行わなくても料金定額なので利益に繋げるためにはなるべく行わないほうがよい。そうとなれば今度は必要なことが行われない心配も生じる。
またこの方式ではアップコーディング(upcoding)という詐欺も可能である。(日本においては、診断群分類包括評価の対象となっている病院が、故意に実際と異なった病名をつけて、入院にかかる診療報酬を不正に多く請求すること
もっともどんな方式だって詐欺を行おうと思えば可能だろうけれども。


このように一般病床では入院日数に大変厳しい。
療養病床では入院日数に関する縛りが法的にあるわけではないが、良くも悪くも3ヶ月でおおよその結果が出る(目途が付く)と言われている。
手厚く熱心な医療、看護、リハビリを提供して劇的な回復をしたとしても、病院は成功報酬を取るわけにはいかない。
費用的には、どれだけ行ったかが大事であって、結果は関係ない。完全や成功を待つ必要はない。
従って医療型療養病床でも3ヶ月以内に退院させられるということになる。
唯一3ヶ月よりも長くいられるのが(平均1年)介護費用を利用しての入所(入院)となる介護療養病床(介護療養型医療施設)だったわけであるが、これが廃止の方向にある。









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by yumimi61 | 2017-02-13 12:40


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