2017年 02月 18日
父の病⑧
私は高校卒業後に一人暮らしを始めたので、父と一つ屋根の下に暮らしたのは10年あまりのことである。
そして多くの若者がそうであるように、家を出てから長男が誕生するまでの期間(私の場合は9年ほど)は実家に帰ることはそう多くなかった。

父の定年は、長男(1995年生まれ)と次男(1997年生まれ)の誕生の間にあった。
子供の成長に一喜一憂しながら慌ただしく流れる日々。
父の身体の変調や定年を迎えての心の変化に思いを馳せる余裕はなかった。
父がいつ病院を受診して、どんなふうに父の呼吸機能が悪化していったのか、実のところよく分からない。
禁煙をしたのかいつだったか、在宅酸素療法を始めたのはいつだったろうか、障害者認定を受けたのはいつのことだったろうか、思い出してみたが明確な記憶はまるでなかった。

父が亡くなった後に障害者手帳を見てみたら、「平成10年1月23日交付」とあった。
「肺気腫による呼吸機能障害3級」の認定を受けている。
1998年1月23日。次男が1997年4月生まれなので1歳前のことだ。
父が定年退職したのは1996年60歳の時だったと思うので、退職から2年で障害者認定を受けていることになるが、ということは在職中から呼吸が苦しかったのだろうか。
咳や痰は結構昔からあったが父は元気だった。私は元気な父しか知らない。
晩酌をし、休みの日にはあちこち出掛け、温泉に頻繁に通い、カラオケをした。山菜やキノコ採りをしたり山野草を愛した。飛行機に乗って海外旅行にも何度か行った。
定年間近でもそんな感じだったように思う。
いつからそんなに呼吸が苦しかったんだろう。
私の子供達が少し大きくなってからだって、ちょっとした山や公園に連れて行ってくれたり、バーベキューをしたり、温泉に一緒に行ったり。あの頃はまだ在宅酸素療法はしていなかった。
ゲートボールをしていて大会に出たりもしていたけれど、あの頃はもう酸素を吸っていたろうか。

煙草について言えば、私が子供産んで里帰りした時にはすでに父は煙草を一切吸っていなかった。
つまり肺がんが発見されたのは、禁煙して20年以上も経過してからのことになるのだ。



【障害の種類と等級】
 種類             等級 1級 2級 3級 4級 5級 6級
・視覚(目の不自由な人)      〇  〇  〇  〇  〇  〇
・聴覚(耳の不自由な人)      /  〇  〇  〇  /  〇
・音声言語(発語に障害)      /  /  〇  〇  /  /
・肢体(四肢に障害)         〇  〇  〇  〇  〇  〇
・内部                  〇  ※  〇  〇  /  /
 (呼吸器、心臓、腎臓、膀胱、直腸、小腸、肝臓に障害、AIDS)

/は単独障害での該当はなし。聴覚と言語など障害が重複した者はその等級(上位級)になることがある。
※の内部障害は2級は存在しない(重複の場合も)。


【内部障害(呼吸器機能障害)の場合】
1級 呼吸器の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
2級  ※
3級 呼吸器の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 呼吸器の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
5級  /
6級  /


【内部障害(呼吸器機能障害)の認定基準】
1級 呼吸困難が強いため歩行がほとんどできない者
    呼吸障害のため指数(予測肺活量1秒率)の測定ができない者
    指数(予測肺活量1秒率)が20以下の者
    動脈血酸素分圧が50Torr以下の者

3級 指数(予測肺活量1秒率)が20を超え30以下の者
   動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下の者
   又はこれに準ずる者

4級 指数((予測肺活量1秒率)が30を超え40以下の者
    動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下の者
    又はこれに準ずる者



前に医療保険を利用する医療型療養病床(高齢者とは限らない)について書いた。
医療区分とADL(日常生活動作)区分によって入院点数(基本料)が決まるタイプの病床である。
療養病床は法的な入院期間の縛りはないが、3ヶ月を目安に退院や転院を勧められる。

(医療保険)
■一般病床 89.4万床
■医療型療養病床 27.1万床
 ←これ!
■精神病床 33.6万床

(介護保険)
●介護療養病床(介護療養型医療施設) 6.1万床 ・・・廃止が決定してから5~6万床減少した。
●特別養護老人ホーム 54.1万床
●介護老人保健施設 36.2万床



医療型療養病床の医療区分3には酸素療法患者も含まれている。
・酸素療法を実施している状態 (安静時・睡眠時・運動負荷いずれかでSaO290%以下。常時流量3L以上を必要とする状態、心不全状態(NYHA重症度分類のⅢ度又はⅣ度)、肺炎等の急性増悪で点滴治療を実施している状態(実施から30日間)に限定。それ以外は区分2)


障害者の認定基準にある「動脈血酸素分圧」はPaO2という。
医療区分にあるSaO2は「動脈血酸素飽和度」のことで、「動脈血酸素分圧(PaO2)」と「動脈血酸素飽和度(SaO2)」は酸素解離曲線で表されるので、どちらかが分かれば片一方が分かるということになるが、「動脈血酸素分圧(PaO2)」も「動脈血酸素飽和度(SaO2)」も血液ガス分析をしないと数値が出てこない。
簡単には調べられないということ。
それを簡単に調べられるようにしたのが、経皮的動脈血酸素飽和濃度(SpO2)である。
「動脈血酸素飽和度」とは血液中(動脈)のヘモグロビンの何%が酸素を運んでいるかを示しているわけだが、経皮的とあるようにSpO2 はパルスオキシメータという簡易装置を用いて測定できる(指先などを挟んで測定)。
要するにSaO2=SpO2であるので、これが分かれば「動脈血酸素分圧(PaO2)」も推測できるという仕組みである。

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出典:ナースプレス(ナース専科) 心不全と呼吸不全のアセスメント 酸素化の指標


臨床的には、SaO2(SpO2)が96%以上なら正常値、95%未満は呼吸不全の疑いあり、90%未満は酸素療法の適用ということになる。
但し肺疾患を患って長い人や高齢者などは、SaO2(SpO2)が90~95%の呼吸不全疑い状態であっても、呼吸苦を感じることなく日常生活を送れる人もいる。徐々に低下してきたような場合。
マラソン選手などが酸素の薄い高地でトレーニングすることがあるように、ある程度の低酸素に適応していく場合もある。

障害3級に当てはまる「動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下の者」とは、「SaO2(SpO2)が85~90%の者」と言い換えることが出来る。
それはすなわち医療区分3の「安静時・睡眠時・運動負荷いずれかでSaO2が90%以下」にも当てはまってしまう。
つまり結構大変な状態である。酸素療法が必要。
父は定年から2年後にはこの状態にあったということになる。

実家にはパルスオキシメータがあって父は時々測定していたが、酸素療法を行っている状態での安静時は98~99%くらいであった。常時流量2.5Lだった。
肺繊維症や肺気腫での慢性呼吸不全の患者は歩行や動作時にPaO2やSaO2が大幅に低下する傾向が顕著であって、父もそうであった。動くと苦しくなるのである。






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by yumimi61 | 2017-02-18 13:50


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