2017年 04月 03日
山岳競技について
山岳部の雪崩事故が依然話題に上るので山岳競技について少々書いておこうかと思う。

死亡者を8人出した栃木県立大田原高校は全国高校総体(インターハイ)県予選会で9連覇中の強豪校であったとも報じられていた。
事故の遠因はこの辺りにあるのではないかと当初からなんとなく感じているが、あまりうっかりしたことも言えない。
山岳競技というのはその捉え方が多様であるため非常に難しい。評価価値基準は一様ではない。
従って部活動として他校と競うには難しいスポーツでもある。

山の近くに住む人々が日常的に、あるいは趣味の一環として山に登ることを別にすれば、山登りというのは歴史的にお金持ちの道楽の1つであった。
高く険しい山ほど人を選ぶ、宇宙旅行するのと同じように(?)、お金持ちでなければ出来なかったのだ。
現地までの旅費やら装備やら現地ガイドを頼む費用やら何かとお金がかかるものである。


ともかく大田原高校の山岳部が強豪ということなので、「がくらん」というサイトをあたってみた。

がくらんより
学力成績は点数化がしやすい側面があるので、学生生活はそれによって評価されがちです。
もちろん、学業に打ち込むことは、将来の可能性を広げたり、考える力の基礎を養うためにとても大切なことです。
だけれど、学校生活は必ずしも学力やテストの点数だけではありませんよね。
がくらんでは、部活動の強さを客観的に数値化して、使える情報としてまとめることを1つの目的としています。

『サッカー部ってどこが強いっけ?』『がくらんで見てみよう』
そんな会話が日常になるように、情報をまとめられるサイトを目指していきます。
今まであまり知られていなかったけれど実績のあるような部活も、存在感を示すことができるはずです。


このサイトに部活動ランキングというものがある。

部活動のランキングは、入力フォームから得られた大会名と結果から計算されます。
過去3年のデータ(今年、去年、おととし)がランキングの点数として反映されます。
ランキングはリアルタイムで更新されます。
つまり、がくらんは全国のユーザーの入力によってランキングが上下推移する、相互作用型の情報サイトです。


要するに在校生なり保護者なり教師なり学校関係者が大会記録をその都度自分で入力しないかぎりランキングには反映されない。自己申告制なのである。
部活動数としては多いだろうと予想される野球部でも全国で39校しかランキングに参加していない状況である。サッカー部では18校。
もっとも大会で好成績を収めなければ入力したくとも入力することがないので、入力できる学校は必然と限られてくる。
しかし自己申告制なので強豪校でもサイトの存在自体を誰も知らないこともあるだろうし、知っていても興味関心もないという学校もあるだろう。
ともかくサイトとしては成功している感じは全くない。

部活ごとのランキングで山岳部を調べて見る。
現時点でランキングに参加している学校は3校のみ。
1 位 / 3校中 広島県 修道高等学校 山岳部 男子 200,000 point
     2015年 全国高等学校総合体育大会(インターハイ) 団体戦 優勝(200,000ポイント)
2 位 / 3校中 栃木県 栃木県立栃木高等学校 山岳部 男子 2,400 point
     2016年 全国高等学校総合体育大会(インターハイ) 都道府県大会 団体戦 3位(2,400ポイント)
3 位 / 3校中 兵庫県 須磨学園高等学校 山岳部 男子 600 point
    2016年12月 都道府県大会 学校対抗得点 6LQZqAc9BOvS wgQmaLPvtshI 14位(600ポイント)

試しにキャッシュでも見てみた。いつのキャッシュなのかこちらには19校参加している。
大田原高校も含まれていて7位である。大田原高校は総体県大会で連覇中ということなのでポイントにはなるはずだが、現時点ではランキングに参加していないので入力する人がいなくなったということであろう。
このように同じ学校でも年が変わればランキング熱も変わるということである。

1 位 / 19校中 長崎県 長崎県立長崎北陽台高等学校 山岳部 男子 200,000 point
1 位 / 19校中 広島県 修道高等学校 山岳部 男子 200,000 point
2 位 / 19校中 岩手県 岩手高等学校 山岳部 男子 176,000 point
3 位 / 19校中 千葉県 千葉県立千葉東高等学校 山岳部 男子 160,000 point
4 位 / 19校中 広島県 広島学院高等学校 山岳部 男子 144,000 point
5 位 / 19校中 静岡県 静岡県立藤枝東高等学校 山岳部 男子 128,000 point
6 位 / 19校中 山梨県 山梨県立韮崎高等学校 山岳部 男子 116,000 point
7 位 / 19校中 栃木県 栃木県立大田原高等学校 山岳部 男子 104,000 point
7 位 / 19校中 愛媛県 愛媛県立松山南高等学校 山岳部 男子 104,000 point
8 位 / 19校中 福島県 福島県立橘高等学校 山岳部 男子 80,000 point
8 位 / 19校中 山口県 山口県立下松工業高等学校 山岳部 男子 80,000 point
9 位 / 19校中 高知県 土佐高等学校 山岳部 男子 64,000 point
10 位 / 19校中 神奈川県 神奈川県立麻溝台高等学校 山岳部 男子 56,000 point
11 位 / 19校中 群馬県 新島学園高等学校 山岳部 男子 48,000 point
12 位 / 19校中 福岡県 福岡県立修猷館高等学校 山岳部 男子 40,000 point
13 位 / 19校中 三重県 三重県立神戸高等学校 山岳部 男子 36,000 point
14 位 / 19校中 長野県 長野県屋代高等学校 山岳部 男子 32,000 point
15 位 / 19校中 栃木県 栃木県立栃木高等学校 山岳部 男子 2,400 point
16 位 / 19校中 兵庫県 須磨学園高等学校 山岳部 男子 600 point


日本における全国レベルの山岳競技として挙げられるのは、国民体育大会(国体)と全国高等学校総合体育大会(インターハイ)である。

国体の前身は1924年から太平洋戦争中の1943年まで行なわれていた明治神宮競技大会。
国民体育大会と名を変えて復活したのは終戦の翌年1946年(国体としては第1回)。
第1回から山岳部門はあったが当初は講演会などを行っているのみであった。
1959年(東京にて国体開催)に日本山岳協会が設立されスポーツ登山として見直しが図られ、1971年(和歌山にて国体開催)からは名称が山岳競技と改称された。
1980年(栃木にて国体開催)から山岳競技が正式競技となった。
国体には少年の部があり、中学3年生以上から出場可能である。
一般的には高校生が出場することから、全国高校選抜大会、全国高校総体(インターハイ)、国体・少年種別の3大会を制すると「高校3冠」と言われる。
(競技によっては3大会実施していないものもあり)

全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では当初は山岳部を有する高校が合同で登山をするような形をとっていた。
1967年の大会から順位は付けないが優秀校を10校ほど選ぶ方式を採用。
1994年の大会からは順位を付ける方式に変更した。
但し高校によってはインターハイ出場を目標にはしておらず高体連に登録していない山岳部もある。
全国高等学校総合体育大会(インターハイ)は高体連が主催。
要するに個々あるいは集団のスキルが高くてもインターハイには出場しない学校もある。



国体では、縦走競技、登はん競技、踏査競技の3種類の種目があった。
縦走競技や登はん競技は正直若さが必要である(そう言ったらオリエンテーリングもか)。
●縦走競技―山岳マラソンとも言われる。約7kmの山岳コースを、荷物を背負い一気に駆け上がる所要時間を競う。持久力を必要とする過酷な競技である。
●登はん競技―スポーツクライミングとも言われる。人工壁の競技場において規定の用具を使用してクライミングし、時間内にその到達高度を競う。
●踏査競技―山岳オリエンテーリングとも言われる。山岳地帯の競技コースにおいて、荷物を背負い、記入した定点の位置の正確さと所要時間を競う。

インターハイの競技は国体のそれとは全く違う。いわゆる採点競技である。
審査員が登山に同行していろいろなことを採点していくのである。
2泊3日で何時間も歩く。

採点内容
 ・事前準備(登山計画、ルート調査、食事メニュー)
 ・パーティーの統制や歩行技術
 ・装備品
 ・テント設営や撤収技術や整理整頓
 ・体力
 ・炊事
 ・天気図作成と気象予測
 ・読図
 ・登山全般に関するペーパーテスト
などなど

何をどう採点されているかは分かるような分からないような。
地元山岳会の人が審査員だったりするので、顧問が山岳会会員だったりすると対策もしやすいだろうけれども単なる山好きの場合には高得点は難しいかもしれない。
全国大会はこの方式で行われているが都道府県予選では踏査(オリエンテーリング)を取り入れている所もある。

日本が国体やインターハイで行っていた山岳競技というのは国際基準ではなく、日本独自の競技と言っても良い。
日本型の山岳競技はかなり手間暇がかかる。
また山岳競技と言っても、普段から登山をする人ではなく大会用に訓練された陸上競技の選手などが出場することもあった。
国際的に山岳競技と言えば、人工壁でのクライミングである。
そうしたこともあって、国体では2002年大会で踏査が、2008年大会には縦走が廃止され、現在国体の山岳競技はクライミング(リード、ボルダリング)に特化している。
従って尚の事インターハイの山岳競技は浮いてしまった形になった。


実際に高校の部活動で登山指導を行っている先生が書いた文章が参考になる。(一部抜粋、ラインは私が引きました)

http://www.geocities.jp/hiroshima_kokotozan/files/sidou.doc
『登山部指導と登山競技』
(第52回広島県高等学校運動部活動研究大会(平成26年11月21日(金)みよし公園カルチャーセンター)発表レポート) 登山専門部 安芸高校 西部伸也

1 登山競技とは
根本的な問題として,「登山は競技なのか」という疑問がある。登山が体育的な活動であり,軽重はあるものの相当の体力を要する活動であることには疑問はない。したがって登山部・山岳部・ワンダーフォーゲル部・等(以下,登山部で代表)が運動部・体育系クラブに属し,登山専門部が高等学校体育連盟に所属するのも不思議ではない。
ところが登山は他のスポーツとは異なり,相手との勝敗を競う競技として始まった活動ではない。
もちろん登山の歴史においては,未踏峰の初登頂を競ったということはあるし,時期も含めてより困難なルートの登攀に成功することで,優れた登山者としての名誉を得ようとしたことはよくあった。しかしながらそれらの活動は冒険家とも言える一部の先鋭的な登山者に限られた話で,一般の登山者は,より困難な登山への挑戦という意識はある程度普遍的ではあるにしても,他者と競うことを念頭に登山活動をするということはあまりない。
さらに,スポーツが競技となるためには一定のルールが整備され,異なった場所・時においても同様な活動を行いうるゲーム・試合とならなければならないであろうが,登山においては長らくそのようなルールの制定・標準化というものはなかった。


3 インターハイ登山大会における登山競技
 一方,学校体育のクラブ活動では,登山部も各都道府県で高等学校体育連盟の一専門部として組織されるようになり,各校の登山部が集う大会が運営されるようになった
。登山の大会は最初は単に各校が集まって合同で普通の登山を行うものであったが,学校のクラブ活動として生徒たちを指導する目標ともなるべく,より熟達した登山ができるパーティーを表彰しようという機運が生まれたものと思われる。
(略)
それではインターハイの登山大会ではどのような観点で競技が行われるのか。
インターハイ登山大会は国体山岳競技とは異なり,学校のクラブ活動の中で登山を指導しているのだということが大いに意識されている。
登山部の活動は,安全に留意しながら,いかに充実した登山活動が行えるかということが第一義であって,競技に勝つことが第一義ではない。もちろん充実した登山活動を行っていれば競技においても優秀な成績を収める可能性は高く,競技において優秀な成績を収めることができれば,充実した登山活動を行う素地が大いにあるといった相関はある。
インターハイの登山大会では,かつての国体山岳競技のように,登山活動の中の一部を抽出して競技化するのではなく,日頃の登山活動の充実と競技での優秀な成績との相関が高められることを意図して競技化が図られていると言ってよい。
高体連登山専門部の中では「安全登山の推進」ということがよく口にされるが,これは「充実した登山活動の推進」と言い換えてもよいだろう。より充実した登山を求めてより高度な登山に挑戦する中でこそ安全ということに価値があるのであって,平易な登山の中で安全といってもあまり意味がない。したがって全国登山大会における『審査基準』・審査細則は,登山の基礎を身につけることはもちろん,充実した登山活動の推進を念頭に制定されていると考えてよかろう。
登山の審査は100点満点方式で,体力30点・歩行技術10点・装備所持10点・設営技術10点・炊事技術5点・天気図作成5点・気象知識テスト2点・読図4点・自然観察(山域概要・登山用語・地形図知識)テスト4点・救急法テスト2点・医薬品所持3点・計画書作成6点・記録書記入4点・マナー5点の配分となっている。スポーツ活動であるから体力点の比重は高くなっているが,それだけではなく,登山に関連する技術や知識,登山に必要な装備・医薬品の適正な所持,なども審査対象となっている。(ただしこの審査基準は,インターハイ登山大会の経費削減と(国体と同様の)競技性の向上が全国高体連より求められる中で,インターハイ登山大会に従来の隊行動や班行動と異なるチーム行動が大幅に取り入れられることとなり,審査基準・配点の変更も現在検討されているところである。)


4 競技のみには収斂されない高校登山部活動
このようにして,元々競技とは異質のものであった登山が,学校体育のクラブ活動としての指導の過程で競技化されるようになったのであるが,それでは学校体育においては登山がすっかり競技に移行してしまったかというと,それは否である。
このことは各校の登山部が各都道府県の高体連登山専門部に加盟しているかどうか,また各校の登山部員が競技をする際に必要な日本山岳協会への選手登録を行っているかどうかに見ることができる。
広島県の場合は各校の登山部の高体連への加盟率は比較的高い方であるが,それでも10年ほど前の五日市高校や本年度の安芸府中高校などのように,登山部として一定の活動を行いながら高体連には加盟しない学校が皆無ではない。
さらに,東京都や神奈川県など大都市圏の都道府県にあってはかなりの数の学校が登山部はありながら高体連には加盟していないと聞く。
また,加盟校の各部員の選手登録率についていえば,広島県の場合は227人の登録で,登録率は92%であるが,例えば加盟校数が広島県の3倍ないし2倍近くあり,部員数も広島県よりかなり多いと思われる埼玉県や群馬県の登録数はそれぞれ25人,20人と少なく,登録率はかなり低いと思われる。
これらのことは登山の活動が決して競技のみには収斂されないことを示している。
選手登録をしない部員,高体連に加盟しない学校にあってはもちろん,登録部員や加盟校の間でも,競技に出場して良い成績を収めることにはあまり主眼を置かず,通常の登山活動に目的を置く傾向があったりするのは否めない。
他のスポーツ競技であれば合宿や遠征は大会で好成績を収めるための手段であろうが,登山の場合は,たとえば夏の日本アルプス登山のように,合宿・遠征それ自体が目的となっている。
登山にはまた,様々なジャンルがあり,岩登り,沢登り,雪山,さらにはバックカントリースキーという分野もある。これらの登山形態は高校生としては一歩進んだ登山であり,ある程度の危険性も増すため,これらの登山形態で競技が行われるということは通常ない。
高校生がそれらの登山形態を実践するときは,それらの登山自体が目的となっている。それらの登山で得られる充実感・満足感が最終目的である。高校生としてどれだけ困難な登山ができるかという観点で他校と競う面が全くないわけではないが,敢えて競い闘うというなら,むしろそれは厳しい姿も見せる自然の世界との闘い,困難に負けそうになる自分自身との闘いということになろう。



山岳競技は難しいと書いてきたが登山自体その位置づけが難しい。
広島の先生が書いている通り、登山は他のスポーツとは異なり相手との勝敗を競う競技として始まった活動ではない。道楽、趣味、レクリエーションである。
登山が道楽、趣味、レクリエーションならば仕事でも職業でもないはずである。もちろんどこかの代表選手でもない。国旗も校旗も背負っていない。好きだから行うのだし自己責任で行うものである。
広島の先生はこう続けている。
もちろん登山の歴史においては,未踏峰の初登頂を競ったということはあるし,時期も含めてより困難なルートの登攀に成功することで,優れた登山者としての名誉を得ようとしたことはよくあった。しかしながらそれらの活動は冒険家とも言える一部の先鋭的な登山者に限られた話で・・・
未踏峰の初登頂や困難なルートを競う一部の登山家(冒険家)も職業ではない。プロ登山家なんて別にないのだ。
自然の前ではみな素人である(な~んて)。
一部の先鋭的な登山も歴史的にはお金持ちが金に物を言わせて栄光や名誉を得るための手段である。
頂上に札束が金銀財宝が置かれているわけではないのだから出費しかない。
ではお金がない人は高みを目指すことは出来ないのか?貯めれば出来る!
あとは節約が大事ですね。パーティーを組むことも節約の1つになる。
成功の暁には本を執筆するとか写真集出すとか、教室などを開いて指導者になるとかガイドになるとか、名声によって儲ける方法はあるかもしれない。
そして何より寄付やスポンサーが大事になります。
どこの世界もスポンサー様さま。
高校の部活動だって強くなればスポーツメーカーからこれを着てくださいだの使ってくださいだの無料で持って来るわけで。芸能人にもそういうことはありますね。
極めるとどうしても商業臭くなってしまうもの。しかしながら極めればそれで食べていくことも可能となる。
登山や登山家として世間一般に注目されるのは(大手メディアが大々的に扱うのは)、一部の先鋭的な登山や登山家である。
そんなわけで、お金持ちの道楽や商業にまみれて行われる登山が目指すべき登山だと勘違いしやすい傾向にある。







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by yumimi61 | 2017-04-03 11:57


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