2017年 04月 03日
山岳競技について(続き)
少し前にテレビでスポーツ選手がインタビューに答えていた。
どんな大会の何のスポーツの選手だったか全く覚えていないが若い女性だったと記憶している。
その選手が「皆さんを感動させられるように精一杯頑張ります」と言うような感じで答えていた。
今のスポーツ選手は勝利や記録更新のために行っているのではなく、人々を感動させるために行っているのか、と私は少々驚いてしまった。
感動なんて偶然の産物であって、最初から選手が感動させるために競技していると知れば却って萎える気がするが、昨今は見る側もそうではないということだろうか。


そもそもスポーツって見てもらうことを前提に始まったわけではないと思う。
大前提にあるのは「楽しい」や「面白い」という気持ち。何かが出来るようになったり目標を達成しての「達成感」や「快感」。集団スポーツには集団スポーツならではの面白さや達成感がある(大変さもあり)。健康維持に行う人もいる。
自分自身が感動したり競技仲間と感動を共有することはあるが、見ている者を感動させてやるなんて思って行わない。
ところが最近は見せることを意識し、見ている人に感動してもらうことに意義を感じているようだ。
感動してもらうとは言わなくても良い成績で人々に喜んでもらうことに意義があるように思っているのでは。
プロスポーツとの関連でそうならざるを得ないのか。
日の丸を背負う試合が好きな日本人は特にその傾向が強いように思うがそうでもないのだろうか。
見てもらうこと前提の幼稚園・保育園・小学校の運動会にはその傾向が持ち込まれているような気がする。
兎にも角にもスポーツも承認欲求を満たす手段になっている面がある。

見せる(魅せる)ことを意識して行うのは興行である。
プロレスや相撲は興行である。
お金を取って見せるために行う興行は、舞台に台本があるのと同じで、ある意味シナリオ(八百長)があっても仕方がない。

登山は相手との勝敗を競う競技として始まった活動ではないところにもってきて、基本他者が見学できるスポーツ(競技)ではない。
他者が見ていないので感動させるも何もない。感動は自分の中にある。完全なる自己満足の世界。
孤独で閉鎖的で自己完結的でもある。
だから成果をやたら外に向かって発表したくなる人がいるのかもしれないが、他者が見ていないのだからまごまごすれば嘘がまかり通ってしまう。
行動も誠実さも全てが自身との戦いである。
そうした登山本来の特徴を考えると他者の存在がある合同登山、ややもするとパーティーすら微妙であるように思う。


単独登山かパーティー登山か。
アンザイレン(危険を伴う岩壁・氷面・雪面などで相互安全確保のために2人以上をザイルを結んで登降する)をすべきかどうか。
確保の態勢を取るタイプでもあっても滑落を止めるのは大変なことだろうから、一斉に登降している場合にはザイルを結んでいても止めることは不可能と思っていいのではないだろうか。1人滑落すれば道連れである。
アイザイレンをしていてアクシデントが起こった際には他の者が生きるためにザイルを切断する(アクシデントを起こした者を落とす)という判断を迫られることもある。
どちらにしても1人で済むことが済まなくなる。
それを望むのかそうでないかは外野が口出しすることではなくそれぞれが決めることだろうけれども、複数人いるとどうしたって気を使う(忖度する!)ということが出てくる。
自分の命や行動に自分自身で責任が持てない人は危険な山に登るべきではないと私は思う。
不思議なことだけれど、結構誰もが自分がアクシデントを起こす側だとは思っていなかったりする。
万一の時には道連れにされる側、ザイルを切る側だと思っている。
若いうちは死が身近でないのと同じようなことなのだろうか。


ヨーロッパの山やスキー場では雪崩れ注意の旗や看板が出る。
危険度に応じて黄色い旗、黄色と黒のチェックの旗、黒い旗。
そうしたところでも人の手が入っていない雪面(オフピステ)は非常に危険と言われている。

雪崩対策には、ビーコン、スコップ、ゾンデ棒!?
今回も雪崩対策にビーコンという話が聞こえてきたが、これを持っているかといって雪崩が発生しないわけではない。雪崩が避けられるようになるわけでもない。ビーコンは魔法の杖ではない。
無いよりは有るほうが良いくらいなもので、救出を保証するわけでもない。使い方を知らないのでは話にもならない。
即死してしまえば、何を使っても、使い方が素晴らしくてもダメだろう。まだ生きている人がいてこそ救出が可能。
入出力の指向性や複数の発信音(別のビーコンの電波が入り込む)などに惑わされることなく、精神的な動揺や混乱に負けずにビーコンを使いこなし、ここだ!というポイントを定めてゾンデ棒で確定する。(言うほど簡単ではないので練習が必要)
二次雪崩に十分注意しながら、雪崩のあとの重く締まった雪に耐えられる強度のあるスコップで掘り出す。
雪崩に埋没してから15分程度で急速に生存率が下がる(呼吸空間が確保できたかが生存率に大きく影響する)ので、それ以内に行わなければならない。



【大田原高校山岳の活動実績】(ホームページより)

・大会
県大会 インターハイ予選会(第1位のみインターハイ出場) 8連覇中
      関東大会予選会(第6位まで関東大会出場) 3連覇中
      新人大会(上位大会なし) 3連覇中 
上位大会 インターハイ(全国高校登山大会) 8年連続インターハイ出場
           平成20年(埼玉)  5位
           平成22年(鹿児島) 6位
           平成26年(神奈川) 7位   と全国でも活躍しています。
       関東大会(関東高校登山大会) 7年連続出場
           関東大会は、各都県代表チームとの合同登山を行う大会で順位付けはありません。

・夏山合宿
    平成27年 白馬岳(2932m)第26位  富士山(3776m)日本一
    平成26年 槍ヶ岳(3180m)第5位  北穂高岳(3106m)第9位 富士山(3776m)日本一
    平成25年 北岳(3193m)第2位   間ノ岳(3190m)第3位   富士山(3776m)日本一
    平成24年 奥穂高岳(3190m)第3位 富士山(3776m)日本一
   毎年、夏には、日本を代表する山々を舞台に、魅力ある山行を行っています。

・冬合宿
  毎年12月の下旬に日光白根山を目指して、2泊3日で冬山合宿を行っています。
  氷点下20度になることもある厳しい環境の中で(雪上にテントを張ります)、なかなか体験することができない素晴らしいひとときを過ごします。

・その他、春山(県内)、秋山(県内)も実施しています。



大田原高校は冬山合宿も行っている。
冬山はインターハイには直接関係ないだろう。
広島の先生が「他のスポーツ競技であれば合宿や遠征は大会で好成績を収めるための手段であろうが,登山の場合は,たとえば夏の日本アルプス登山のように,合宿・遠征それ自体が目的となっている」と書いていたが、それ自体が目的の合宿を大田原高校も行っていた。
大会で好成績を収めることと、登山そのものと、両方に足を突っ込んでいたような形になる。
夏山合宿では標高順位が記されている。これだけでも目指すべき登山の嗜好が分かる。
今回の件は、大会で好成績を収めることと登山そのものと、その両者の隙間に落ちてしまったような遭難であるという印象を持つ。
但し亡くなった生徒さんの保護者の方の反応を見ていると、登山が自己責任であるということ十分理解しているような感じがあった。
高体連が主催しているインターハイでの競技中に遭難したとかだったら問題あるだろうし、責任の所在を明らかにする必要があるだろうけれども、登山が目的の合宿であるならば例え部活動中といえど自己責任と言われても仕方ない。
高校生の部活動加入や合宿参加は強制ではないはずである。


かつてはマイナースポーツだった登山が、山ガールブームや中高年の登山人気を経て、今やメジャーになりつつある。
インターネットで社会全体が大きく変わったが日本の登山ブームに一役買っているのが山レコというサイト

ヤマレコは、登山、ハイキングなど、山に関わる全ての方を対象にしたコミュニティサイト です。 写真、GPSログと同期したルート図、標高グラフなどを投稿できる登山の計画や 山行記録(登山記録)を中心に、日記や掲示板などの機能も豊富に揃っています。

他人の旅行記(旅行話)ほど興味を持てずつまらないものはないが、これから自分が行く場所の参考にしようと思えば他人の旅行記ほど役に立つものはない。自分が行ったことのある場所を後から見るのも比較や共感などできるためにそれなりに楽しめる。
このような心理を付いたサイトが山レコだと思う。便利で登山という同じ趣味を持つ人には有益なものであろう。
私も御嶽山の噴火の時には、噴火に遭遇した人の山レコを探した。(記事にリンクしたような気もするが定かではない)
山レコもSNSと同様に弊害もある。基本にあるのは承認欲求だと思う。

佐倉葉ウェブ文化研究室
 自己顕示欲充足システムに飲み込まれる登山者と事故の危険性
 ~インターネットの普及による山行への影響について『ヤマレコ』を事例にして~


 アウトドアレジャーのうち”登山”は油断すると事故に繋がるし最悪”死ぬ”。だから、事前の計画、装備、技術、経験が問われる事になる。

 今回取り上げるのは、”登山”と”ウェブ上の活動”が組み合わさった場合にどうなるかということである。 インターネット時代における登山の問題としてよく挙げられるのは”即席パーティによる遭難”である。 ウェブ上で一緒に山を登る人を募集すると見ず知らずの人達による即席パーティになる。 即席パーティの為、参加者同士の意思疎通がうまく行かなかったり、お互いの実力が判らないまま登山を行うことにより、お互いに足を引っ張ってしまい、事故や遭難に繋がっていくという問題である。 これはこれで問題なわけだがここでは取り上げない。

 ハイカーに”目立ちたい””同情してほしい”という気持ちがあって、ウェブ上の活動でそれを満たそうとする場合、どういう行為に繋がっていくのか。 そしてその行為はやがて事故に繋がっていくのではないか。それがこの文の内容であり、 舞台はウェブ登山界の中で圧倒的な存在感をみせる登山SNS『ヤマレコ』である。


・拍手目的の山行記録
・ユーザーの遭難死

yucon氏(パーキンソン病を患っていると自身で語っていた)
 yucon氏は鈴鹿山脈をよく歩いているハイカーであり、2011年7月3日から山行記録を書いている『ヤマレコ』ユーザーである。 氏は道迷いや滑落を起こしている、危なっかしいハイカーであった。

 2012年07月16日、yucon氏は御池岳山頂からT字尾根(バリエーションハイキングのコース)を道中で出会ったR氏と一緒に進む。やがて道に迷い、予定していなかった谷に降りてしまった。 一日ビバークをしたものの登り返し、再び御池岳山頂に戻ることに成功。しかしながら再びT字尾根を進み再び道迷い。前日と同じ谷に降りてしまう。しかもR氏と逸れてしまった。 T字尾根に登り返すことや谷を下る事を試みるも失敗し谷で数日過ごす。22日、捜索しにきた人(この人もヤマレコユーザー)に発見された。

遭難記を書いたことで『ヤマレコ』内の有名人となり、狭い世界の中の話ではあるが脚光を浴びる存在になったのである。 それを裏付ける数字として山行記録の拍手数が遭難以降上昇している。また、山行記録につけている写真数が遭難以降上昇しており、 山行記録を書くモチベーションが上がったと考えられる(*3B)。 彼は遭難後もバリエーションコースをよく歩いており、しかも夏の低山。さらに時々、道を間違えている。遭難後は以前にも増して危ないハイキングを行っていた。
2013年11月23日、yucon氏はまず銚子ヶ口に登り、そこからを御在所岳へ向う途中で遭難(山と高原地図では赤点線コース)。 27日に救助される。しかし28日、搬送先の病院で死亡した。


uedayasuji氏
uedayasuji氏は八ヶ岳や北アルプスをよく歩いているハイカーであり、2012年12月22日から山行記録を書いている『ヤマレコ』ユーザーである。 氏は『ヤマレコ』内で活発に活動しており、『ヤマレコ』にはまっていたと考えられる。山行記録における氏のコメント数は6000を超える。

uedayasuji氏はナイトハイクが多い(これは仕事の関係上致し方ないところもあると見受けられる)。また、雪渓歩きをして雪渓の下に落ちる、物をロストするなど危険な山行をしていた。 さらに、鐘楼をピッケルで叩いたり鳥居に蹴りをいれたりして、それを山行記録に書くという事も行っていた。 しかし、こういう事に対し、ネット上で他のヤマレコユーザーから注意される事は殆ど無かった。 逆に「生還できてすごいですね!」「すごい運ですね!」「すごい体力ですね!」みたいなコメントばかりであった。 唯一、一人だけコメントで忠告し続けた人(元ヤマレコユーザー)がいたが、その忠告も途中で無くなった。

2015年3月28日、彼は赤岳を真教寺尾根から登る。 前日にナイトハイクで牛首山まで行き、ここで幕営。この時点で標準コースタイムの2倍の時間がかかっていた。 深夜は雪が降り積もり、そのまま赤岳まで行っても下山予定の13時には間に合わないことから、下山した。 4月11日、再び真教寺尾根へ。滑落し死亡した。








[PR]

by yumimi61 | 2017-04-03 15:35


<< 臓器移植について      山岳競技について >>