2016年 12月 06日 ( 1 )

2016年 12月 06日
杓子定規
染色体の秘密

e0126350_124661.jpg


細胞>細胞核>染色体(常染色体2n+性染色体)>クロマチン繊維>ヌクレオソーム(ヒストン・DNA)

●染色体
2nの染色体は組み換え可能。nは22本。母由来と父由来のnがあるので2nとなる。
この他に女か男かを決定する性染色体が2本あるので、染色体数は全部で46本。

何故「染色体」という名称かと言うと、塩基性の色素でよく染まる部分だから。クロマチン(染色質)とも言う。
細胞学者が細胞を特異的な染料で染色してみたら染まる物質があった。この染まる物質を総称してクロマチンと名付けた。
その後、その染まったクロマチンは、細胞分裂(有糸分裂)の時に構造を変化させて何やら棒状の構造体になることが分かった。構造体になったので、これをクロモソーム(染色体)と名付けた。
最初はそれがなんだか分からなかったわけである。これが1880年代のことである。
その後、クロマチンに含まれるDNAやクロマチンが遺伝情報を担っていると認識され、構造を含め怒涛の研究ラッシュが始まるが、それらは最初の発見からは100年近くも経過していて全て第二次世界大戦後のことである。
電子顕微鏡の発展なども待たねばならなかったわけである。

細胞分裂(有糸分裂)には体細胞分裂と減数分裂とがある。
減数分裂についてはこちらで詳しく説明したが、生殖細胞では受精をするので2nのままではなくnにする必要があり、体細胞の分裂とは違うものである。
ただ生殖細胞だけに、この細胞が生まれてくる子の遺伝に大きく関わるものであることは容易に想像できる。
ところが近年では、有糸分裂に減数分裂を含めないことが多い。
この場合、有糸分裂という語は(本来の意味から離れるが)体細胞分裂とほぼ同義の語として用いられる。
有糸分裂の定義は、クロマチンが染色体を形成し、この染色体が紡錘体によって分配される分裂様式なので、有糸分裂に減数分裂を含めないと、染色体の定義も揺らいでくる。
言っている意味がお分かりでしょうか?染色体は有糸分裂時にしか姿を現さないということになります。

●クロマチン繊維―沢山のヌクレオソームが密集して繊維を形成したもの

●ヌクレオソーム―DNAとヒストンからなる物質(8個の塩基性タンパク質であるヒストンからなる芯にDNAが巻き付いたもの)
e0126350_1292488.jpg

●DNA―ヌクレオチド(デオキシリボースという糖とリン酸と塩基の結合)が繋がった物質。
      DNAの塩基にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類がある。

人間の1つの細胞の中に含まれているDNAの長さは全長2mとされている。
それが46本の染色体に分かれているわけだから、染色体1本あたりのDNAの長さはおよそ4cmで、これがヒストンに巻き付いていることになる。
なあんだ2mかとか、4cmか、と思うかもしれないが、マクロの世界ではなくミクロ世界での2mや4cmは大変なことである。

細胞の大きさ(直径)は概ね10~30㎛である。
(1㎛=1/1000mm)→1㎛は1mmをさらに1000等分した長さ(1000個に分けた長さ)
細胞ですらこんな小さいのに、染色体は細胞の中の核に入っている。
上の図の②の中に入っているわけだからさらにさらに小さな場所である。
染色体の中にはヒストンが沢山あってそこに巻き付きながら長さを稼いでいるわけである。
e0126350_133229100.jpg



個人の居場所

遺伝情報はDNAの中に隠されている。
ゲノムと遺伝子という言葉も何となく使っているが、本当はそれぞれ意味がある。

■ゲノム(全遺伝情報)―生物に必要な全ての遺伝情報  
■遺伝子(エキソン)―タンパク質の作り方についての情報 1.5%

「遺伝子」と呼ばれる部分は全情報の1.5%でしかない。

「ヒトゲノム計画」から人間は3万弱の遺伝子を持っていることがわかったそうである。およそ3万の決定項目(情報)が1.5%ということである。
血液型に関する遺伝子、髪の色に関する遺伝子、肌の色に関する遺伝子など様々な遺伝子があるわけだが、それらの遺伝子が各々どこにあるかということはだいたい決まっているそうである。
例えば、1番染色体にはABCDEFGHIJKLMNの遺伝子があり、Aの遺伝子は1番染色体の端にあるというように。
何番染色体のどこにあるという遺伝子の位置のことを「遺伝子座」と言う。

遺伝情報はDNAの中に隠されている。
ヌクレオチド(デオキシリボースという糖とリン酸と塩基の結合)が繋がった物質。
DNAの塩基にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類がある。


この遺伝子座において、数塩基~10塩基未満ととても短い塩基を繰り返す特殊な領域があるそうで、そこがDNA型鑑定(個人特定)に用いられている。
その特殊な部分はいったい何の遺伝情報の部分なんだろうか?神様が個人特定用に特別に儲けた箇所なのかしら?
ともかく個人を決定するのは反復数である。

同じ塩基配列が繰り返して存在する特殊な「縦列反復配列」があり、その繰り返し回数は人によって異なり、DNA型の「偶然の一致」は1000兆分の1の確率でしかないということである。

常染色体は対で存在している。その対は何かと言えば、母由来と父由来ということである。
従って反復回数も、母由来と父由来がある。
(例)
花子さんの反復数―母由来6回、父由来8回
太郎さんの反復数―母由来8回、父由来9回
花子さんと太郎さんの長男―母(花子さん)由来6回、父(太郎さん)由来9回
花子さんと太郎さんの長女―母(花子さん)由来8回、父(太郎さん)由来9回


全て同じ?

細胞の数は成人で60~100兆ほどになると言われている。
生殖細胞を除く全ての細胞に同じ染色体(DNA)がコピーされているという。
しかしながら身体中の全ての細胞を隈なく調べたわけではない。60~100兆もの細胞を調べられるわけがない。

しかもである。
若い時ほど細胞分裂は活発であるものの、細胞分裂は一生涯を通して繰り返し行われている。
一人の人間の全生涯に通り過ぎた細胞の数というのは60~100兆なんてものではない。
生まれては死ぬを繰り返しているのだ、その全てを調べられるわけがない。
全ての細胞が同じようにコピーされているというのは推測にすぎない。違う可能性だってある。

赤ちゃんの時と、若い時と、高齢となった時の、細胞のDNAは本当に同じであろうか?
途中で修復もなされているはずだ。変わっていないと言うならば、何のための相同組み換えなんだと言いたい。

さらに事は複雑で、生殖細胞は減数分裂により染色体数が半分となるが、ただ単に父由来と母由来と染色体が綺麗に2つに分かれるわけではないのだ。
2nのnとnは相同染色体なので、半減の過程で交差し組換えが起こることが知られている。
父母からの2nが生殖細胞ではnとなるが、もしこれが父と母に真っ二つに分かれてしまえば、nとなった時点でどちらかの遺伝情報はそっくり消えてしまう。
しかしそうではなくて、この時に組換えを行いながら減数分裂するという。
この相同組換えがうまくいかないと生殖細胞(精子・卵子)は作れないそうだ。
ということは、減数分裂時の相同組換えにもリスク回避という意味合いがあるのだろう。
化学物質や放射線により傷ついたDNAを修復するのも相同組換えによってである。
だからその種のゲノムが持ち合わせていない遺伝子(DNA)を導入しても、相同組換えによって修復されて無くなってしまう可能性が大いに考えられる。
またたとえ導入に成功したとしても、そんな余計な遺伝子(DNA)があれば生殖細胞は形成されない可能性がある。


さらに場所によって違う可能性も捨てきれない。輸血や臓器移植を行った人ならばどうかということもある。
違う場所の細胞はDNAも違うかもしれないという可能性である。
その可能性を少しでも排除したいと努めるならば、せめて同じ場所のDNAを比較対象にすべきであろう。
要するに血痕や精液のDNAと、口腔粘膜のDNAの比較ではダメだということである。


細胞死という問題

人に必ず死が訪れるように細胞にも必ず死がある。細胞の寿命は部位によって違う。
また人は死んだけど細胞はぴんぴんしていますという事はない。
細胞は一番上の図に示されたものである。図は開いて中を見せているが本当は閉じている。細胞膜に覆われている。
細胞が死ぬと細胞内容物は放出されてしまう。
この地球上のものすべてはバラバラになって元に戻っていく運命にある。(エントロピーの増大則)
細胞とて例外ではない。いつまでも細胞膜に包まれてぬくぬくとしているわけではない。
人間が生きている間にイレギュラーで細胞死が起こった場合には、放出された細胞内容物によって周辺組織に炎症などが引き起こされる。
計画的な(予めプログラムされた)細胞死(アポトーシス)(細胞の寿命)の場合には、細胞内容物は断片化され再利用される。

また染色体が現れるのは細胞分裂のときだけ。死んだ細胞はもう分裂はしない。

外界に放たれた細胞はいつまでも生きてはいない。細胞は死ぬ。死ねば細胞内容物も放出される。DNAも。
血液や精液が体の外に出て時間が経てば細胞は死んでしまう。細胞は原形を留めない。
外界に触れるという事は変質もする。何らかの化学反応が起こる。
外界には異物も溢れている。違うものが容易に混ざり込む環境にある。
そんな外界にあったとされるDNAで個人を特定するなんて馬鹿げた話だと思いませんか?


案ずるより産むが易し!?

実際にどうやってDNA型鑑定を行っているかと言うと、分析用試薬キットと分析機器を使用する。
個人特定に用いているのは同じ塩基配列が繰り返して存在する特殊な「縦列反復配列」であると書いたが、個人(個体)特有のDNA配列のことを「遺伝子マーカー」と言う。
遺伝子マーカーは1箇所ではなくDNA中に複数個所あり、場所によって異なる結果が出てしまうので、個人識別に用いる場所を定め、そこに対応した試薬キットを使うことが望ましいが、徹底はされていない。

放射線の話で放射性核種を分析するのは難しいと書いた。
その分析に用いられる検出器と測定用モジュール一式は数百万~一千万越えにもなるという、あの話である。
それでも捉えるられるエネルギーは僅かなので増輻させていると書いたが、DNAでも増幅を行っている。
通常核種分析として行われているのは「ガンマ線エネルギースペクトル分析」である。
放射性物質から放出されるγ線のエネルギーは、それぞれの放射性物質(核種)ごとに違いがある。要するに固有のエネルギー(数値)を持っている。
その差でもって核種を突き止めようとするものである。
しかし拾えるエネルギー(測定器で捉えるられるエネルギー)は僅かなので増輻させて調べる。
元々のエネルギーにあまり差がない場合の確定は難しいらしい。
β線やα線は核種ごとの固有のエネルギーがなく(最大値のみ)、透過力も弱いので、これまた分析はとても難しい。


DNAを増幅する方法はPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれる。PCRという装置があるのだ。
小保方さんのSTAP細胞の論文の中でもPCRは登場した。
(PCRの特徴)
・ヒトのゲノム(30億塩基対)のような非常に長大なDNA分子の中から、自分の望んだ特定のDNA断片(数百から数千塩基対)だけを選択的に増幅させることができる。しかも極めて微量なDNA溶液で目的を達成できる。
・増幅に要する時間が2時間程度と短い。
・プロセスが単純で、全自動の卓上用装置で増幅できる。


2本組のDNAを水溶液に入れて、その水溶液を高温にしたり、冷却したりして、変性を起こさせ1本にしたり、再び2本に戻したりする。
つまり温度の上下を繰り返すだけでDNAの合成が繰り返される(DNAが増幅する)という根本的に変性してしまわないのか心配な代物。
温度だけと言っても、DNA合成酵素や増幅対象ではないDNAも必要。

ともかくPCRは特定のDNA断片(数百から数千塩基対)だけを10万~100万倍にも増幅できる。


特定するのは難しい?

「不規則な収納が生む自由」 前島一博 国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター(生命誌ジャーナルより)

細胞が分裂する際にできる染色体のDNAはヒストンの芯に巻き付いた直径11nm(ナノメートル=1mの10億分の1)のヌクレオソーム構造をとっています。それが規則正しく折り畳まれて直径30nmのクロマチン線維となり、さらに集まるという階層構造を形成していると考えられてきました。ところが、国立遺伝学研究所の前島一博さんが詳細に調べたところ、定説のようなクロマチン線維は存在せず、より柔軟でダイナミックな姿が浮かび上がってきました。教科書に書かれてきた図は違うのではないか。こんな基本を問う研究です。

ヌクレオソームが沢山あるわけだが、それが規則正しく畳まれてクロマチン繊維になっているというのが定説。
クロマチン繊維の図を探せばどれもヌクレオソームが整然と並んでいる。その繊維の長さは30nmほどだという。
でもそれが確認できなかったという研究報告である。

30nmクロマチン線維も、それがさらに規則正しく束ねられた高次の構造も存在しないのである。私たちの実験は、染色体にはヌクレオソーム線維が不規則に収納されているという、まったく新しい染色体像を示している。

  これまで、電子顕微鏡で30nmのクロマチン線維が観察されていたのはどうしてだろう(図1)。試験管内の実験では、ヌクレオソーム線維の濃度がうすく、線維内のとなり同士のヌクレオソームが結合しやすいため、30nmのクロマチン線維を作りやすいことがわかっている。また、通常の電子顕微鏡は試料を真空中にさらすため、化学固定・アルコール脱水・樹脂包埋・切片作成そして染色という複雑なプロセスを経る必要がある。この過程で、人工的に凝集したヌクレオソーム線維を30nmの構造として観察していた可能性も高い。一方、私たちの実験が用いたクライオ電子顕微鏡は「生きている」状態を観ている。細胞を高圧下で急速凍結し、極低温下(-150 度)で薄片にし、それを極低温下でそのまま観察するからである。また、X線散乱でも化学固定・アルコール脱水なしで、溶液のなかの染色体を観察する。そのため、ヌクレオソーム線維の凝集が起きなかったのである。


自由とは裏腹に、染色体のこのあたりという目ぼしを付けるのが非常に難しくなりますね?










[PR]

by yumimi61 | 2016-12-06 13:22