2016年 12月 17日 ( 1 )

2016年 12月 17日
マスメディアの暴走
この口、なんのロ、気になるロ~♪

昨日一昨日の日露首脳会談で凄く気になったことがあった。
「日ロ」という表記である。

【「日ロ」表記を使用しているマスメディア】
NHK
TBS
フジテレビ
テレビ朝日

朝日新聞
東京新聞
日本経済新聞
時事通信
東洋経済

ロイター
BBC
ニューズウィーク

上毛新聞


主要テレビ局で言えば、日本テレビとテレビ東京が「日露」を使用していた。
主要新聞では、読売新聞、産経新聞、毎日新聞が「日露」使用である。

会談があることを知っていたり、そのことについて喋っていたり映像があったりすれば、日本とロシアと分からなくはないが、そうでなければ「日ロ」ではピンとこない。
分かっていたって違和感ありまくり。
「日ロ」ってなに?ひぐち?にっこう?暗号?ということになりかねない。

違和感のもとはカタカナの「ロ」が、漢字の「口」(英語でmouth)、記号の「□」とそっくり(形は同じ)だから。
パソコン入力文字だからこそ微妙な大きさの違いを何時なんどきも変わることなく再現してくれるけど、手書きで書けば大きい時も小さい時もある。人の書き癖によって大きさも変わる。
「口」「ロ」「□」

点滴袋に穴が開けられ混入物によって死者まで出した病院の名称が「大口病院」だった。
(内部犯行のように報道されていたのですぐに逮捕されるかと思いきや未だに未解決ですね・・)
この病院名も口を少々小さく書いてしまえば大ロ病院である。 「大口病院」「大ロ病院」
まあそれでも「だいろびょいん」や「おおろびょういん」と読む日本人は少ないだろうとは思う。
では「大口契約」はどうでしょうか? 「大口契約」「大ロ契約」
「大ロ契約」は大ロシア帝国との契約のこと、なあんて。

ともかく、学校教育で「日露戦争」などと学んできた私達は「日ロ」よりも「日露」にずっと馴染み深いのだ。
だからといって「露西亜」と書くわけではない。「ロシア」である。
そのへんはちゃんと使い分けている。
なにもロシアだけではない。
外国の国名には漢字表記が存在する。
日米、日英、日蘭、日独、日仏、日印などなど、関係や同盟などで2つの国の名前を略して言う時、ほとんどの場合漢字を用いている。
日ア、日イ、日オ、日ド、日フ、日イとは言わない。


そういうことか!

読売テレビの道浦俊彦氏が日露と日ロの使い分けについて書いている
日本テレビも2010年10月までは「日ロ」を使用していたらしい。
そこにどうして使い分けていたかの理由が書かれていた。

「露は1917年の革命以前の帝政ロシアのみに使用する。(例)日露戦争」

第一次世界大戦中の革命で皇帝が倒され、ロシア帝国は社会主義国のソビエト連邦に移行した。
1991年12月にソ連が崩壊し、ロシア連邦になった。
「ロシア」と言う時には、皇帝という君主のいる国と、いない共和国(大統領時代)とがある。
だからその2つを区別するために、旧ロシアを「露」、新ロシアを「ロ」と表現していたということのようだ。
しかし時を経たのでもうその区別をやめましたというのが日本テレビということ。(同じグループの読売新聞はかねてから「露」だった)
(ちなみにフジサンケイグループも、フジテレビは日ロで、産経新聞は日露である)
ドイツにもフランスにも皇帝がいた帝政時代があるので、帝政だけでは理由になりませんね。帝政というよりも社会主義国時代を区別したということでしょうか。
でもその区別が一般に周知されていない以上、区別は意味あるものとはならない。独善的。
伝えるのが使命であり仕事であるメディアの本分から外れる。「露」と「ロ」の違いを自分だけ分かっていたって仕方ないだろうと思う。

どの国も歴史あっての国であり領土である。
途切れることはない。どんな形にせよ連続して今があるのだ。
領土とか条約問題だって同じはずで、だから難しくもあるわけで。

2000年12月4日、プーチン大統領はこう演説した。
「十月革命前後の国家の象徴を一切否定することは間違えている」
ロシア連邦という国家がある日突然発生したわけではないということだ。あんな時代もこんな時代もあってのロシア連邦である。(うるうる、涙)
国旗は300年間使われてきたロシアの三色旗(白・青・赤)を、国歌はソ連の楽曲を、国章は東ローマ帝国から継承した「双頭の鷲」を、軍旗には紅旗を用いることを提案した。
12月9日、賛成371票と反対51票により、プーチン案は可決した。
敵を作らないように大層気を使ったプーチン大統領だったが、外側には敵ばかり!?



そそそそそ~と

では日本の政治の場ではどうだったのか。
首相官邸も外務省も「日露」を使用している。安倍首相のTwitterも確認してみたが「日露」使用だった。
日本経団連も「日露」を使用している。

「じゃあ日ソはどうなのよー。ソならいいわけ?日ソ共同宣言とか普通にみんな使っているでしょう!」と思う方もいるかもしれませんが、これには事情があります。
ソビエト連邦(ソ連)にも漢字国名はある。「蘇維埃」「蘇聯」
漢字一文字で書けば「蘇」である。
玉音放送の原稿冒頭部分で「蘇」が用いられれている。ソ連のことである。

朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ

朕は帝国政府をして、米英支蘇4国に対し、その共同宣言を受諾する旨、通告せしめたり。

私は、アメリカ・イギリス・中国・ソビエト連邦の4国に対して、それらからの共同宣言(ポツダム宣言)を受け入れることを、日本政府に通告させた。


それなのに何故「日蘇」が一般的にならなかったかと言うと、「蘇」という漢字が常用漢字ではないからだ。

まず戦後当用漢字が決められた。
1946年(昭和21年)11月5日に国語審議会が答申し、同年11月16日に内閣が告示した「当用漢字表」に掲載された1850の漢字を指す。 

当用漢字は、さまざまな漢字のうち制定当時使用頻度の高かったものを中心に構成されており、公文書や出版物などに用いるべき範囲の漢字として告示され、その後学校教育、日本新聞協会加盟マスメディアなどを通じて普及した。複雑かつ不統一だった従来の正字体の一部に代えて、略字体を正式な字体(新字体)として採用した。
第二次世界大戦前から漢字制限主義者と表音主義者は、漢字は数が多く学習に困難であるから制限または廃止すべきであると主張し、作家・山本有三、土岐善麿らは漢字の濫用が軍国主義復活につながると主張し、実際に、文部省を中心に常用漢字表による用字制限などを試みた
しかし民間や文学者、日本語学者からの反対意見も強く、改革は行われないでいた。
戦後連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) の占領政策となった国語国字改革のもと、簡素化と平明さを目指して、戦時下に作成された標準漢字表内の常用漢字を基に当用漢字が策定された。


漢字乱用は怖いと書いた某アナウンサーもいたが(それに対して私は昨今の固有名詞の平仮名乱用が怖いと書いた)、実は漢字=軍国主義という考え方は古くからあったものなのだ。
画数が多く、赫赫としているので、威圧感を与えるのだろうか?(かくかくと角張っているから?)

「蘇」は当用漢字に含まれなかった。

1981年に当用漢字が常用漢字に取って代わった。
1981年(昭和56年)、常用漢字表が告示されたのに伴って当用漢字表は廃止された。

日本文部科学省文化審議会国語分科会の答申に基づき、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」として内閣告示「常用漢字表」で示された現代日本における日本語の漢字である。 


幾度か改定があり、現在は2136字が選定されているそう。
「蘇」は常用漢字にも含まれていない。
常用漢字ではない漢字は学校で教えることもない。
従って「日蘇」は使われず「日ソ」だったのだ。
「露」は常用漢字であるので、日露は問題ない。
ちなみに日本国憲法に使われている漢字は全て当用漢字(常用漢字)に盛り込まれたそうである。


昔の名前で出ています!?

もちろん常用漢字以外は絶対に使ってはいけないということではないし、常用漢字に含まれているのに平仮名で書いたからといって罰則があるわけでもない。

新聞には新聞常用漢字表という日本新聞協会新聞用語懇談会がまとめた独自の漢字表がある。
しかし常用漢字とそう大きく変わるわけではない。
例えば2010年に告示された改定「常用漢字表」(2136字)と比較すると、そこから7字を除き、常用漢字以外から5字を加えて、2134字となっている。
日本の新聞や放送局は原則としてこの表に準拠した漢字を使用しているが、さらに若干の増減を加える社もあり、朝日新聞社などは「蘇」を付け加えている。
だから朝日新聞は「日露」どころではなく「日蘇」だっていけるわけである。
もっと言えば、固有名詞ならば常用漢字でなくても良いのである。(「蘇我さん」を「ソ我さん」とか「そ我さん」とは書かない)

但し固有名詞であっても、常用漢字表にある新字を使うという基準があり、旧字や標準字体以外の異体字は新字体に直すのが標準運用。
戸籍が「澤」でも「沢」にされてしまうというわけ。
でも名前で商売している芸能人は特別扱いらしいです。
新聞が「澤穂希」を「沢」と書き「長澤まさみ」を「長沢」と書かない理由
ただこれも独自路線を敷いている社もあるらしい。
朝日新聞など、ほとんどの新聞では「沢穂希」と書かれているが、毎日新聞では「澤穂希」。テレビ局ではNHKが「澤穂希」という表記になっていた。


独断と偏見の賜物?

昨日、東京で両首脳が会談と共同記者会見を行った後、経団連会館に場所を移し、「日露ビジネス対話」の全体会合に出席し挨拶をした。
主催: 【日本側】 (一社)日本経済団体連合会(経団連)、(一社)ロシアNIS貿易会(ROTOBO)
     【ロシア側】露日ビジネスカウンシル、ロシア産業家企業家同盟、実業ロシア

※(一社)とは一般社団法人の略語です。株式会社が(株)と書かれるようなこと。

日露ビジネス対話 Российско-Японский бизнес-диалогより
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「日露ビジネス対話」は両国の経済界が主催した催しものであり、「日露ビジネス対話」はその催しの名称、いわば固有名詞である。

ところがNHKはこの固有名詞も書き換えてしまっている。
誰かが名付けた固有名詞というのは特別な意味合いが込められている可能性だってあるわけで、独断で変えられるようなものではないはずである。

日ロビジネス対話 経済協力プランめぐり意見交わす NHK NEWS WEB 12月16日11時56分より
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日本経済新聞も日露ではなく日ロ派ではあるがはさすがに固有名詞までは書き換えなかった。
しかしながらそれ故に同じ記事内に日露と日ロが混在するという異様な記事になっている。

日ロ経済協力8項目を具体化へ ビジネス対話  2016/12/16 11:19日本経済新聞 電子版
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ららららら~ん

オランダ(阿蘭陀)は漢字1文字に略すと蘭である。
実はこれも常用漢字ではない。
しかし江戸時代の蘭学や蘭学塾などが歴史的に有名であるため、蘭がオランダであることは比較的よく知られていると思う。
また外務省や財務省などの省庁もオランダの略語として蘭を使用している。
1970年に発効された「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約」(正式名)は公に日蘭租税条約と呼ばれてきたし、それに置き換わる形で2011年に署名された条約も新日蘭租税条約と呼ばれている。
このように常用漢字ではなくとも固有名詞であるために省庁や新聞でさえも使用している漢字もあるのだ。

だから本当は1956年の日ソ共同宣言(正式名:日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言)だって日蘇共同宣言でも良かったはずなのだ。
それをあえて「ソ」と表記したのには何らかの意図があったのではないかと勘繰ってしまう。

ちなみにイタリア(伊太利)の伊も常用漢字ではないが、これも省庁や新聞でも日伊として使われている。








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by yumimi61 | 2016-12-17 13:20