2017年 03月 27日 ( 1 )

2017年 03月 27日
父の病㉓
少し間があいてしまうと、どこまで話したのか、どこまで聞いたのか、忘れてしまうことはよくありますね。
もっとも「聴いてない」「読んでいない」状態であれば、それは忘れたのではなくインプットされなかっただけのことです。

自分の体験した出来事や過去についての記憶が抜け落ちてしまうことを記憶障害と言います。
但し物忘れは普通によくあることなので、物忘れと記憶障害との境目は非常に難しくもあります。
また上に書いた通り、何かに接してもインプットされない(インプットが弱い)体験や情報などもあります。
全てが同じ強さや量でインプットされるわけではありません。
同じ場所にいても、同じ状況にあっても、見ているもの、聞いているもの、感じているものは、ひとそれぞれ違う。
同じ教室にいても、教師の話を聴いていない、教科書を読んでいない、違うことを考えていた、これでは授業の内容をインプット出来ない。
インプットされなかった事柄については当然アウトプットも出来ません。
但しインプットは自身の体験でなくとも、書物やメディアや他人から得た情報を自身の体験としてインプットしてしまうこともあります。
例えば恐怖の体験をインプットしても、その時の空の様子はインプットしていない。(恐怖の体験は空の様子よりも個の生命維持に関係しているため記憶として勝る)
しかしながら後から得た情報をその時に自分が見た空と誤ってインプットしてしまうことがあるということになります。
あるいは別々の情報(記憶)を誤って繋げてアウトプットしているか。


記憶障害は認知症の主たる症状の1つです。
「年寄りは過去に生きている」と言われることがあるのですが、まず短期記憶が失われるからです。

■短期記憶
短期記憶を司るのは脳の海馬と呼ばれる部分である。
一時的に保存するための記憶装置で、保存できる期間は最大最長で1~2週間と言われる。
インプットされた体験なり情報はまず海馬で一時的に記憶される。
あくまでも一時的な記憶であり時間の経過と共に失われるのが定め。
全ての記憶は海馬が取りこみ、一時的に保存し、記憶の重要性を判断する。
繰り返し入ってこない一度だけの体験や情報は重要ではないと海馬は判断し忘れてしまう。

認知症では海馬(短期記憶)が正常に機能せずに、海馬にすら記憶が格納されにくい状態となっているため、新しい事を覚える事がとても難しくなる。
また元々短い保存期間がさらに短くなっていく。数十秒とか。
これを短期記憶障害と言う。
認知症初期では比較的直近の記憶から失われていき、ついさっきの出来事が思い出せなくなり、次第にこれまでの記憶など思い出せない事柄が増えていく。
そのため認知症テストではこの短期記憶を中心に調べている。

■長期記憶
長期記憶を司るのは大脳新皮質の側頭葉という部分。
記憶容量が1000兆項目分ある(大容量)。記憶保存期間も長い。
海馬で重要な記憶と判断されたものはこちらに移されて長期記憶として残る。(睡眠中にコピーされる)
どんな記憶を重要と判断するかと言うと、生命維持に必要な記憶。
生命維持に必要な記憶とは繰り返される体験や情報である。
(天気予報が毎日繰り返されているからと言って10年前の今日の天気を覚えているということではない。晴れという状態がどういうものか、雨という状態がどういうものか分かっていて忘れないということである。今日の天気が分かるのは短期記憶となる)
また喜怒哀楽など強い感情を伴うほど海馬から側頭葉に移りやすい。

この領域に入った記憶は普段は忘れていてもきっかけなどがあれば記憶の底から引っ張り出すことが出来る。
健常者であれば基本的には死ぬまで持ち続ける記憶。
ここにあったのに、この記憶が抜け落ちてしまうことを長期記憶障害と言う。(例えば自分の名前を忘れるなど)

●陳述記憶(宣言的、顕在的、自伝的)・・・言葉に出来る記憶

・エピソード記憶障害
経験の記憶(エピソード)そのものを忘れてしまう障害。
本人は体験自体が記憶から抜け落ちているので体験していないと主張するため、周囲と話がかみ合わなくなり、人間関係が悪化することがある。

・意味記憶障害
学習から得た言葉の意味などを忘れてしまう障害。意思疎通が難しくなってくる。

●非陳述記憶(非宣言的、潜在的)・・・繰り返し練習によって体得した技術的な動作や経験則に基づいた潜在的な記憶など言葉に出来ない記憶。条件反射もこれにあたる。

・手続き記憶障害
身体で覚えたことを忘れてしまう障害。自転車や楽器の演奏など。
意識しないで出来るようになったはずなのに、いちいち考えないと出来なくなってしまう。
認知症の60~70%を占めるアルツハイマー病の最終段階ではこの記憶も失われるため日常生活の単純な作業も出来なくなる。(家事、歯磨き、衣服の着方など)
通常は身体で覚えたことは忘れにくいものである。
しかしながら逆に、身体で覚えたこと(例えば車の運転)が通用しなくなった(MT→ATなど)場合や、身体で覚えているのに外から「右に切って」などと声を掛けられると、咄嗟にどうすべきか訳が分からなくなり思わぬ弊害を生むこともある。
反対に身体で覚えていて意識していないと思っていても実は意識して行っていることもある。その意識が注意力散漫で外れたり、軸がずれているのに意識しないで身体の記憶だけで行ってしまうと間違いが起こることがある。(アクセルとブレーキの踏み間違えなど)

・条件付け障害
条件反射のような受動的な反応が起こらない、条件刺激に対して習得したはずの反応や回避反応が出なくなる。(例えば反射的に車のブレーキを踏む反応が遅くなる、反応しないなど)

・プライミング障害
チェックと言えばワンピース(バスでもいいけれども)、というような記憶がなくなる。

その他に局在病変による失行・失読・失書・視覚認知異常などが起こることがある。
失行や視覚認知異常はアルツハイマー病に多い。


人間の脳細胞は成人以降毎日死んでいく。脳細胞は再生はしない。つまり脳細胞の数は減っていく一方なのである。
認知症を引き起こす原因の60%以上を占めるアルツハイマー病では、脳細胞が減少し、海馬を中心に脳全体が萎縮するとされる。
再生しない脳細胞だが海馬だけは例外で適切な食事・運動・睡眠・生きがい・恋などがあれば再生増殖可能との報告もある。





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by yumimi61 | 2017-03-27 20:13