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2017年 01月 28日
父の病③
前記事に一般病棟入院基本料について書いた。
入院基本料は一定の条件のもと診療報酬の点数で決まるため、病院が独自に値段を付けられるものではない。(保険外の個室の差額ベッド代は病院独自で値を付けられる)
入院基本料の条件として大事なのは看護体制と平均在院日数(入院日数)である。
平均在院日数(入院日数)をクリアしないと所定の点数が付けられない(入院基本料が取れなくなる)ので、医療機関、特に急性期病院では入院期間短縮を目指している。
一般的には「3か月経つと追い出される」と言われることが多いが、救急搬送を受け入れているような急性期病院では入院期間は1~2週間を目標にしており、3か月なんて悠長なことはなかなか言っていられない。
このようなことを書いたわけです。

入院料金を決めるのは基本料だけでなく加算もある。
こんなケースには加算されるといった特定の場合にのみ加算されるものもあるが、そうではなくて基本料と同じく入院した誰にでも適応される加算が入院期間に応じた点数である。

入院患者の入院期間に応じ、次の点数(1日あたり)をそれぞれ加算する。
 ①1~14日以内の期間  450点加算
 ②15日~30日以内の期間  192点加算
 ③30日以上 加算なし

例えば、看護職員が入院患者7人に1人いる病院では、1日の入院基本料は15910円である。
その病院に入院した場合の入院料金には2週間までは4500円が加算されるので、1日20410円になるわけである。
入院期間が2週間を超えると加算分が、4500円/日から1920円/日になってしまい、1ヶ月を越えようものならば加算することが出来なくなる。
つまり1人の患者を長く入院させておくと病院の入院料金収入は減ってしまうわけである。
長く入院させると病院が儲からないような仕組みに診療報酬がなっているのである。
儲からないということは人件費が出なくなるということに繋がる。
給料が他よりも安いのに、生命危機にある重症患者が多く精神的にも肉体的にも辛い、患者や家族に訴えられる可能性がある、夜勤が多い、労働環境が悪いなんてことになれば看護職員が離職するだろう。
そうなると今度は看護体制が維持できなくなってしまう。


では国はどうして長く入院させないような仕組みを作っているのかというと、医療費がかさむからである。

(例)看護職員が入院患者7人に1人いる病院に1週間入院した。
20,410円(基本+加算)×7日=142,870円 ・・・病院の収入
 ・患者自己負担(3割の場合)  42,861円
 ・健康保険(国保や社保)負担 100,009円 ⇒医療費がかさむというのはこの部分のことを指す

さらには、1ヶ月の医療費の患者負担が高額になった時(一定額を超えた場合)、申請 して認められれば限度額を超えた分が高額療養費として患者に払い戻される。
公的医療保険における制度の一つなので、国保でも社会保険でも高額療養費の払い戻しは行われる。
そのため一般的な治療で入院する場合、本人負担がべらぼうに高くなるということは実はないのである。
金銭感覚は人によってだいぶ違うと思うのでうっかりしたことも言えないが、払えそうな金額で済むということなのだ。
入院してひとつ儲けようとか、会社を休み入院したからその間の給料分をカバーしたいとか、差額ベッド代や保険適用とならない食事代をカバーしたいという人は別だが、個人で保険会社の保険に加入などしなくても標準的な治療や入院費用は公的医療保険(健康保険)がかなりの部分カバーしてくれる。

医療費がかさむというのはその公的医療保険(健康保険)の負担が大きくなるということである。
健康保険には次の種類がある。

 ◾組合健保  主に大企業などの従業員が加入しているもの
 ◾協会けんぽ 主に中小企業の従業員が加入しているもの
 ◾船員保険  船員が加入しているもの
 ◾共済組合   公務員が加入しているもの
 ◾国民健康保険 自営業者や無職者などが加入しているもの

各保険には個々人から保険料が支払われていて、健康保険負担分の医療費はその保険料から捻出される。
組合健保や協会けんぽでは保険料を支払うのは労働者と雇い主である。、
組合健保では保険料(料率)を独自に決定できる。組合員(従業員)の医療費を抑えられれば保険料が少なくても済むし、会社が福利厚生に積極的であったり利益が出ている時には会社側が多く負担してくれるということも可能。
でもまあ全従業員の保険料の半分を会社が負担するわけだから会社の負担は大きい。
だから非正規社員などは加入させないといったことも出てくる。(そうすると非正規社員は国保に回る)
それでも会社が儲からなくなってくれば組合健保を維持することも難しくなってくる。
そのようにして組合健保を解散し協会けんぽに流れた会社も少なくない。
とはいってもここはまだ保険料が労使負担なので国は直接的には関係が無い。
一方共済組合や国民健康保険では、組合健保などの雇い主(使)に当たる部分が国家である。国庫負担金として拠出する。
国が直接医療費を負担するということになる。赤字国家にはこれが大変辛いというわけである。


国民の4割ほどは国民健康保険に加入しているそうである。
国民皆保険が始まった1960年代には国保というのは自営業者や第一次産業(農林水産業)従事者が主体であったが、現在は無職者が半分以上を占めており、次いで多いのは社会保険に入れない雇用者である。
無職者と言うと、そんなに失業者が多いのかと思うかもしれないが、一番多いのは定年退職した高齢者である。
会社を退職すると社会保険からは離脱せざるを得ないので国保に加入する。
従って60歳以上の国民の75%ほどは国保に加入している状況にあったのだ。
普通に考えれば高齢者ほど医療のお世話になる。つまり国保の医療費はかさむ。

●組合健保や協会けんぽ(運営者)←労働者と雇い主(保険料を支払う)
       ↓
   組合員の医療費負担


●市町村(運営者)←国保加入者と国庫負担金(保険料として支払う)
     ↓
  加入者の医療費負担


国民健康保険(通称:国保)は保険料を自治体が徴収している。保険料と言っているが税金である。
そして国庫からも拠出される。
国は親分で地方自治体より権力を持っているので、国庫負担金を決めるのは市町村ではなく国である。
加入者に課せられる税金(保険料)は一律ではなく市町村ごとに違いがあるのが特徴。
医療費が少なく抑えられる自治体は加入者の支払う税金(保険料)を少なくすることが出来る。
またどのように課するか、例えば高所得者には多く支払ってもらうのか、それとも平等割なのかといったことも自治体が独自に決定できる。

医療費増大に困った国は1984年から国庫負担の引き下げを始めた。
また会社を定年退職した人は会社で面倒みてくださいとばかりに退職者医療制度を創設して、会社に医療費を負担させ国保負担から除いた。
1984年には国保の保険料の約50%ほどを国が負担していたが、20年後の2005年にはおよそ30%になっている。
だからといって急に人々が病院にかからなくなるわけではない。
それまでと同じ程度のサービスを提供しようと思えば、国が出さなくなった部分を加入者に負担してもらうよりない。
こうして保険料はどんどん値上げされる。
あまり高くなると保険料が払えない人が出てくる。未納や未加入者が増える。国民皆保険が崩れてくる。
保険料収入や国庫負担金が減っていく市町村も国保財政難に陥って国保なんかやっていられないということになる。
2008年には後期高齢者医療制度を創設して75歳以上の国保加入者をそこに移しした。
市町村が運営者であり国庫負担金も30%程度あることは変わらないのだが、多くの加入者は国保よりも保険料が上がった。









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by yumimi61 | 2017-01-28 11:58
2017年 01月 25日
父の病②
1月18日の未明、父は炬燵から立ち上がろうとして後ろに倒れ、そのまま起き上がれなくなったそうで、母が3時にトイレに起きた際に「うーうー」というような声で何とか自分の存在を知らせたらしい。
母が「救急車を呼ぼうか?」と訊くと首を横に振って断ったため、母が父の首の後ろに手を入れ子供を抱えるようにして付き添い4~5時間同じ状態でいたらしかった。
その間にも何度か起き上がろうとしたが力が入らず起き上がれなかったそうだ。
母も力があまりないので力で起こしてやるようなことは出来ない。

年末頃から昼間はベッドで横になっていることが多かったのだが、母の話だとどうも夜中に起き炬燵に座っていたらしい。
呼吸器疾患や心臓疾患の人が呼吸苦になった時には起座位のほうが楽なのである。
父のベッドはもともとリクライニングベッドだったのだが壊れてしまっていて上げ下げが効かなかった。
12月の上旬にはいつもお世話になっているケアマネージャーさんが電動ベッドのレンタルを働きかけてくれて、父は一度は了解したのが何を思ったのか直後に断っていた。
私も「起きていたほうが楽なんじゃないの?」と何度も尋ねたが、「寝てれば大丈夫」と言う返事で、現に私が昼間行った時などは静かにベッドで寝ていた。
夜中になると不安感が増大して余計に呼吸が苦しくなってしまうのだろうか。

1月17日13時頃ににD病院で出してもらった鎮痛剤トラムセット10錠は、1月19日午前中には残り1錠になっていた。
1月19日午後がかかりつけの病院の呼吸器外来の日だったので受診した。
家の中でトイレにいくくらいはなんとか動いていたが、それ以上動くことはもう無理なので病院での移動は車椅子を利用した。


呼吸器外来の医師に12月中旬以降の状態や17日にD病院を受診して鎮痛剤を処方してもらったこと、18日未明の出来事、緩和ケアを希望することなどを話した。
すると今日入院させましょうと言ってくれた。
B病院の緩和ケア病棟への転院を前提にかかりつけの系列の病院(E病院)へ入院が決まった。


放射線治療を受ける前、父は治療はしなくてもよいと言っていた。
私は全く治療しないにしても放射線治療を受けるにしても状態が悪化してきた時が在宅では難しくなると思っていた。
そこで最初の段階から緩和ケアを行っている病院を気にしていたのだった。
前述したとおりD病院では放射線治療の時にスタッフが緩和ケアについてアンケート(問診)を取っていた。
また新病院のB病院では病院案内に緩和ケア病棟とあったので緩和ケアを行っていることを知った。
C病院で「定位放射線治療はやはり出来ない(難しい)」と言われた時にも、治療は仕方ないが最期の時が心配である旨伝えた。
「そういう意味も含めて近くの病院で放射線治療を受けておいたらどうか」とC病院の放射線科の医師にアドバイスされたのだった。

E病院にも呼吸器科があるわけではないのだが、父は以前にも肺炎で入院したことがあって馴染みがある。
家に戻ることなく受診から直に19日の夕方にE病院に入院した。
入院前のE病院の医師と話をして気管切開や経管栄養を希望するかどうかを確認されたが望まない旨伝えた。
状態によっては転院前に・・ということも覚悟の上。
移動は両病院の看護師さんが行ってくれ、夕方入院なのに夕食にも即対応してくれて、その前に摂食・嚥下障害の有無を確認すると言語聴覚士が病室を訪ねてくれるなど本当に一安心だった。
病院スタッフは基本みんな親切で本当によくしてくれる。
たぶん父も精神的に安心したのではないかと思う。
ただE病院の看護師さんが「この病院では普段そんなに強い鎮痛剤(麻薬系のことだと思う)は使わないので置いてないんですよ。早く転院できればいいですね」と言っていたように、鎮痛剤が効かず痛みが酷くなるようならば緩和ケアしかないだろうと思う。
痛みに苦しむということは本人も家族もスタッフも大変である。


看護師をはじめ病院スタッフは常に入院患者のQOL(quality of life)維持や向上に努めている。
出来ればずっと病院にお願いしたいという人も少なくないだろうと思う。
病院で見てもらえれば家族は安心。
病院嫌いな患者さんは少なくないが、そうは言っても本人にとっても安心。現実的な話、身内より他人のほうが良いこともあるのだ。
でも病院にずっといるこということはなかなか難しいことでもある。
一般的にはよく「3か月たつと退院や転院するように迫られる」というようなことが言われる。
どうしてこういうことが起きるのかと言うと、病院や病院スタッフはボランティアで行っているわけではないから。利益を出さなければならないのだ。
(災害ボランティアだってずっとではない、急性期だけですよね!?ボランティアですらそうなのだからボランティアでない場合には当たり前という話になる)


入院料金に大きく関与しているのは看護職員の配置である。
看護職員が多く配置されている病院ほど診療報酬の点数が高くなる。

【一般病棟入院基本料】
看護体制 1日の点数 看護師比率 平均在院日数
 7対1   1591点   7割以上   18日以内
10対1   1332点   7割以上   21日以内
13対1   1121点   7割以上   24日以内
15対1    960点   4割以上   60日以内
特別     584点     ―       ―  
(特別とは上記を満たさない場合)

看護職員が入院患者何人に対して1人いるかということが看護体制。7人に1人、10人に1人など。
平均人数なので平日昼間にはもっと多くの看護職がいる場合もあるし、夜間や休日はもっと少なくなる。
夜間も病棟ごとに最低2人は看護職員を配置しておく必要があるが、大抵最低人数2人で担当している。
「私1人で2人分働くので」とか言ってもダメである。

1点10円なので、看護職員が入院患者7人に1人いる病院では、1日の入院基本料は15910円となる。
そのうち患者さんの負担は1~3割。残りの部分は国民保険や社会保険が支払う。

看護師比率とは看護職員(看護師と准看護師の合計)のうちの看護師(正看護師)の割合のこと。
ランクが高い(入院基本料金が高い)病院ほど正看護師が多く必要になる。

平均在院日数は病院の一般病棟の入院患者から計算する。
例えば7対1の病院で平均在院日数18日を超えると、たとえ看護職員が十分に足りていても7対1の点数(入院基本料)を課すことが出来なくなってしまうのである。
看護職員を多く抱えるといことはそれだけ人件費がかさむのに、入院基本料金が安くなってしまっては元も子もないという状況に陥る。
看護体制の確保、平均在院日数の縛り、それ以外にもランクを維持するのは条件があるが、次第に条件は厳しくなってきている。
病院経営も大変なのだ。
看護体制が7人に1人、10人に1人の病院が一般に急性期病院と言われる病院で、こうした病院では3か月も入院させておけない。平均在院日数絡みで1~2週間勝負。
短期間入院を稼ぐためには手術よりも内視鏡のほうが良い。1クールの放射線治療を入院して行う理由などどこにもない。
とにかくベッドの回転率は病院にとってとても重要なのである。

過去記事
機宜*58 病院を入院から考える
機宜*61 入院とベッドの関係性 矛盾を抱えて
(診療報酬の点数は2年ごとに改定されているので過去記事とこの記事の点数は異なっています)






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by yumimi61 | 2017-01-25 17:11
2017年 01月 23日
父の病
1936年(昭和11年)1月3日生まれの父は今年のお正月に81歳となった。
昨年80歳の誕生日を過ぎたところで肺に影が見つかった。
肺がんと診断されたのは3月だった。
すでに肺気腫の持病を持っており在宅酸素療法をしていたくらいで呼吸機能が良くない。
手術は難しいだろうと思っていたが、検査入院の結果手術も化学療法も無理だという結果が出た。
日常的には然程支障なく暮らせていても臓器や血液に問題がある場合の手術は要注意なのだ。

とくに術前術中術後の呼吸管理は非常に大事である。
全身麻酔では人工呼吸器を使用するために肺へ大きな影響を及ぼす。
また手術操作を容易にするための処置も呼吸抑制などを起こしやすい。
術後は一般的に呼吸機能が一時低下する。
つまり呼吸機能が正常でないと(余力がないと)手術中や術後の状態が死に直結してしまうのである。
普段は酸素を補いながら日常生活は支障なく送れていたとしても、手術となると全く話は違う。
在宅酸素療法患者(慢性呼吸不全患者)に限らず、例えば肺がんを早期に発見して肺を一部切除した場合なども同様で、肺を一部切除後に新たに違うがんに罹患した場合には呼吸機能が問題になって手術が出来なくなるようなことも起こり得る。

父は肺炎にも幾度か罹ったことがあり、もともと肺機能があまりよくないこともあって「最悪のことも覚悟して置いてください」と言われたこともあったが回復してきた。
病院は毎月かかさず受診していた。
しかし肺に影が見つかった時には、その大きさはすでに6~7cmあった。

今の時代はどこの病院も事も無げに本人にがんの可能性やがんであることを告知する。
他にどんな方法があるのか、どんな方法が最善なのかと問われれば答えに窮すが、患者本人の落ち込みは見た目以上に大きいものである。
「80歳まで生きられたからもういい」「周りに迷惑かけるだけだから治療などしなくていい」と口では言っていたが混乱して眠れない日々過ごしたようだ。
「あまり寝付かれないからラジオでも聞くかと思って夜中に付けてみたけどガチャガチャしたのしかやっていなかった」とこぼしたこともあった。
食欲旺盛な人だったが食欲がなくなった。

かかりつけの病院から呼吸器に強い病院を紹介してもらって検査入院した。(A病院)
その病院が昨年4月に統合され新病院になったため新病院に罹り直した。(B病院)
B病院で、手術や化学療法が不可能、放射線療法も難しいと言われる。
放射線療法はがん細胞だけでなく正常細胞をも破壊してしまうので、結局呼吸機能を落とし危険であるという判断である。
父は「治療はしないで放っておく」と言っていたが、B病院の医師が僅かな望みとしてということで「定位放射線治療」を勧めてくれた。

定位放射線治療は精密なコントロールのもとピンポイント(病巣)目がけて多方向から放射線を照射するものである。
個々の線源からの放射線は細く弱くても、多方向から病巣に向けて照射するので、病巣部に対しては大きな線量となり効果を上げることができる
通常の放射線治療よりも周囲の正常細胞に当たる線量を減少させることが可能で副作用が最小限に抑えられる。
この治療の体幹部への照射は2004年から保険診療の適応となっている。
治療が行える病院は限られていて群馬県内では2~3か所。
新病院のB病院でも導入予定だったが、導入を待っていたら間に合わないと言われて別の病院(C病院)を紹介された。

この治療は転移が無い状態で腫瘍が5cm以内が適応とされている。
父の場合は大きさ的に最初から微妙ではあった。
(肺の場合はステージに関係なく腫瘍の種類や位置によっても手術や放射線治療の適応が変わってくる)


5月連休前にC病院を受診して、連休明けに短期入院で治療を行う予定で体にマークを入れて準備をした。
場所をずらさないという精度が非常に大事な治療なので、このマークがとても大切である
消えないように消さないようにとの注意を受けて連休明けを待ち、治療開始直前に受診。
画像検査の結果からなのか、そこで「定位放射線治療は難しい」と告げられた。
そして家から近い病院で普通の放射線治療を受けたらどうかと言われ、D病院に移ることになった。
5月から6月いっぱいまで通常の放射線治療を1クール通院で受けた。
この治療の最中に姪っ子(父にとっては孫)が亡くなった。
1クール終了直後の検査で腫瘍が少し小さくなったそうだがそれ以上の治療はもう出来ないので、放射線治療終了後はかかりつけの病院の呼吸器外来(月1回)に移った。

かかりつけの病院→A病院→B病院→C病院→D病院→かかりつけの病院

呼吸機能が以前よりも悪くなるのは避けられず、力仕事や俊敏に動くことは難しくなったが、酸素を供給しながらなんとか過ごせていた。
しかし12月中旬から胸に痛みが出始めたようで体調がみるみる悪くなった。
食欲が無く、トイレにいくというような動きでも呼吸が苦しくて大変で、年末頃からは一日ほぼ寝ているというような生活になった。
何度も「病院に行こう」と誘ったが「大丈夫」と断られる。
年が明けてからはさらに状態は酷くなった。
そうこうしているうちに大雪が降り外出が余計に大変になってしまう。
そうこうしているうちに父も痛みに耐えかねたようで、1月17日にやっと病院に行く気になってくれたので連れて行った。

痛みが出てきたということは、がんの末期の疼痛であろう。
私はそう思ったので、放射線治療を受けた病院に連れて行った。
放射線治療を受けた際に緩和ケア(末期の痛みコントロールなど)の希望についてのアンケートをスタッフがとっていたので、内科受診して緩和ケアに繋げてもらおうと思ったのだ。
ところがその日は内科に呼吸器の医師が不在であった(心臓専門の医師に診てもらった)。
放射線治療後の経過を診ていないことや呼吸器の態勢が万全ではないとのことで、受け入れには消極的な感じであった。
緩和ケアも専門の科があるわけではなく、院内でチームを作って対応にあたっている状況だということだった。
でもとても長い時間話を聞いて下さり、最後は「専門外で治療は一切しないということを了解してもらえるならば私が主治医になってもいいですよ」と言ってくれた。
そのドクターが「がん難民」という言葉を使っていたが、最期の時はやはりなかなか難しい。


がん難民救済のカギ 止まらないがん難民の発生

現在、日本のがん治療の現場では納得した治療・療養生活を探し求めてさまよう「がん難民」と呼ばれる患者さんが増えていることが大きな問題となっています。手術や抗がん剤治療といった標準治療はほぼ平均的に全国に行き渡っているにもかかわらず、がん難民になる患者さんが跡を絶ちません。何故でしょうか?

日本のがん治療の全体像は、手術・抗がん剤・放射線治療を中心とした標準治療とがんの終末期のケアを目的とする緩和医療の2つに大きく分けられています。一般に標準治療で約半分のがん患者さんに根治が望めます。しかし、残りの半分は根治が見込めない患者さんたちです。ここで標準治療を使いきるあるいは標準治療ができなくなった時点で、「もう、治療はありません。あとは、緩和医療です」と言い渡されます。

また、抗がん剤の副作用で心身ともにボロボロになって、「もう、イヤだ」と、その先の抗がん剤治療を拒否した場合も「もう、治療はありませんから来なくていいです。あとは緩和病棟に行ってください」と見捨てられます。

ほかにも、抗がん剤治療の副作用で苦しんだ身内や知人を見たことのある方のなかで、最初から「抗がん剤治療はやりたくない」という患者さんも同様です。「それなら、もう来るな」です。

ところが、がんが身体に残っている、医師に見捨てられた“元気な”がん患者さんはたくさんいます。そういった患者さんは、「自分はまだ、こんなに元気なのに治療がないから緩和病棟に行けといわれた。本当に、もう諦めなくてはいけないのか?」 という思いから、何らかの治療・希望・可能性を求めてさまよう「がん難民」となるのです。がん難民は標準治療と緩和医療とに連続性がなく、両方の間に大きなスキマが存在することにより生まれます(図)。

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このスキマをいちばん実感しているのは患者さんご本人、あるいはそのご家族の方々でしょう。このスキマでは「これ以上治療はない」が前提のため、標準治療を提供する大学病院、がん専門病院、総合病院では解決策が出てこないことが多いのです。

一方、緩和医療ではモルヒネによる疼痛コントロールなど、がんに伴う症状の緩和行為は行うものの、がん病巣そのものに対しての医療行為は何もしないで死を待っているのが現状です。多くの患者さんは、たとえ緩和病棟を勧められようと延命効果が見込めないと告げられようと心の中では、いつまでもがんそのものに対する何らかの治療行為を求めています。

医療法人社団キャンサーフリートピア 銀座並木通りクリニックより>


上の記述とは少し違うのだが、父も私も積極的な治療行為は求めていない。
父は母の事を気遣っているせいもあるが、病院よりも自宅にいたい人である。
その父が私に病院に連れて行かれることを嫌がらなかったということはよっぽど体の状態が辛かったということなのだ。
私は父に痛みが出てからは緩和ケアを希望していたわけだが、その緩和ケア自体受け入れ先がそんなにない。
隙間の治療がないという問題だけではなく、緩和ケア専門の病院なり科を持つ病院が不足しているという問題もあるのだ。



1月17日受診のD病院では「緩和目的でうちに来るにしても他の病院に行くとしてもかかりつけの呼吸器の先生を介したほうがよい」とアドバイスされた。
かかりつけの病院の呼吸器の医師もその病院には月に2回しか来ていなかった。
だから待ってられずにD病院を受診したということもあったのだが、かかりつけの病院で19日がその医師の診察日だったので、D病院で話を聞いてくれた医師に「なんとか今日少々強めの痛み止めを出してもらえないでしょうか」とお願いして鎮痛剤を処方してもらった。
胸が痛むようになってからの父は市販の鎮痛剤を服用して誤魔化していたようだったのだが、その鎮痛剤も底をつきたらしかった。

ドクターはトラムセットを10錠ほど処方してくれた。
鎮痛剤としては結構強い薬ではあるが、通常は非がん性疼痛に処方される。
逆を言えばがん性の痛みというのはそれほどに強いということでもある。
トラムセットには弱オピオイド系と呼ばれる物質が含まれており他の鎮痛剤とは違う効き方をする(抗炎症作用はない)。
弱オピオイド配合製剤で、麻薬系鎮痛剤と考えてよいものだが、日本の法律では麻薬扱いされていない。
ドクターも「麻薬系ではないが強めの薬を出しておきましょう」と言って処方してくれた。
他のオピオイド系(麻薬系)より依存性が少ない。
麻薬系鎮痛剤であっても適切に用いている限り薬物中毒は起きないとされているが、それらの薬よりも依存性が低い。

ただし乱用は誤った使用方法ではやはり中毒に陥る。
こんな記事もある。

米国で蔓延する「オピオイド系鎮痛剤の中毒」
オピオイド系と呼ばれる鎮痛剤には驚くほどの常習性がある。米国では鎮痛剤の使用および乱用が蔓延状態であり、米国政府の試算によれば、2013年にはおよそ190万人の米国人がこうした鎮痛剤の依存症だったという。そこでアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2016年3月中旬、医師が鎮痛剤の処方を管理するための新しいガイドライン(PDF)を公開した。

オピオイド系鎮痛剤に関しては以前から、「薬物治療」と「薬物中毒」の境界が曖昧だ。そして規制当局は、両者のバランスを取ろうとして苦労してきた。

オピオイド系鎮痛剤はもともと、植物のケシ(Opium poppy)からつくられた。ケシの実から採集されるアヘン(Opium)が、古来から麻薬として使われていたのだ。紀元前3400年ころの古代シュメール人たちもケシを栽培しており、「喜びをもたらす植物」と呼ばれていた。

20世紀はじめの米国では、アヘン中毒が問題になっていた。1908年にはセオドア・ルーズベルト大統領がアヘン中毒に対処する「アヘン・コミッショナー」を初めて任命したが、当時の米国では400人にひとりがアヘン中毒であり、そのうち2/3は女性だったという。1914年のアヘン規制法により、上流階級の白人女性でアヘン中毒になる人数は減少したが、非合法の利用は減ることはなかった。その後も政府は規制の努力を続け、1924年、1951年、1970年にも、(ほかの麻薬も含めた)規制法が成立した。

しかしその一方で、製薬会社はアヘンからさまざまな鎮痛剤(オピオイド系鎮痛剤)を開発していった。1804年にはモルヒネ、1832年にはコデインが作成され、1874年には、モルヒネからヘロインもつくられた(最初は鎮咳薬として販売されたが、注射器投与により強力な麻薬作用が生じることが判明し、厳しく規制されることになった)。その後、アヘンに含まれるアルカロイドからオキシコドンが合成されたほか、ヴァイコディン(コデインから合成されたヒドロコドンとアセトアミノフェンを配合したもの)やパーコセット(オキシコドン・アセトアミノフェン・パラセタモールを複合的に配合したもの)などの各種オピオイド系鎮痛剤がつくられていった(米国では処方薬として購入できるオピオイド系鎮痛剤が、日本では違法薬剤であることも多い。たとえばオキシコドンは2015年6月、トヨタ自動車の女性常務役員が麻薬取締法違反容疑で逮捕された原因となった)。

米国では、慢性痛の治療に使われるオピオイド系の鎮痛剤が乱用されており、中毒状態になっている者は190万人。死亡者は1999年から2014年までで16万5,000人に上るとされる。



■代表的な非ステロイド系鎮痛剤の強さ
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)>インドメタシン>ロキソフェナクナトリウム(ロキソニン)>メフェナム酸(ポンタールなど)> イブプロフェン(ブルフェンなど)=アセトアミノフェン(カロナールなど)>アスピリン(バファリンなど)

非ステロイド系鎮痛剤にも副作用や習慣性がある。
トラムセットは副作用が吐き気以外にほとんどないわりに非ステロイド系鎮痛剤よりも鎮痛作用が強い。
(でも他の麻薬系鎮痛剤と比べると5分の1程度の鎮痛作用)











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by yumimi61 | 2017-01-23 13:32
2017年 01月 16日
日本国憲法の秘密-452-
これまでいろんな角度から原子力を見てきた。そのどれもが素晴らしくてどんな角度から見ても核分裂の利用は困難で、利点も大して無く、在り得ないという結論に至ってしまう。
1つ嘘をつくと、それがばれないようにとまた嘘をつく。嘘は雪だるま式に大きくなっていく。

核分裂の利用は困難でもウランは天然に存在する物質であり、これを使用することは出来る。
ウランは放射性物質であり有害化学物質である。
人体に影響を与える有害化学物質は数多くあるし、人を大量に殺傷する能力を持つ兵器は核兵器だけではないだろう。
そもそもなぜ核兵器と言うかと言えば、「原子核の分裂」を利用しているから。
でも放射性物質を積載した爆弾(汚い爆弾)だって、投下爆発後に拡散した放射性物質(核種)の「原子核が崩壊」を起こしていく。つまりこちらも核兵器である。
放射性物質は無暗に拡散させないことが大事(放射性物質に限らず細菌やウイルス、危険な化学物質もそうだけれど)。
もっと簡単なのは原子力発電所など放射性物質が存在している箇所を狙って爆弾を落としたりミサイルを撃ち込むこと。それだって核兵器となりうる。
稼働しているとかしていないとかは関係ない。そこに放射性物質がありさえすればよいのだ。
ミサイルに積み込む放射性物質よりも遥かに多い量の放射性物質がそうした施設にはあるのだから、そちらのほうがずっと効率がよい。核分裂なんか別に必要ない。

人間にとって一番脅威なのは予防の手だてがないものだろう。そして非選択性なもの。
自分には関係ないと思うものに対しては概して興味が薄く積極性も欠けるものなのだ。
もし世界が何より核兵器を拡散させたくないと考えているならば、放射性物質の悪影響に対しては予防の手だてがなく、非選択性だと思っているということになる。
そうでないならば、予防の手だてがあり、選択性がある(自分は大丈夫)と思っていることになる。
あるいは、核兵器なんか存在しないと思っているか(核兵器は裸の王様)。


2007年4月に、コスタリカ・マレーシア両政府の共同提案として「核兵器禁止条約(案)」が国連に提出された。
しかしこの条約は未だに発効されていない。
2015年4月27日開幕の核兵器不拡散防止条約再検討会議に向けて事前にオーストリアのアレクサンダー・クメント軍縮担当大使が、国連加盟国(193ヶ国)全てに「悲劇を二度と起こさないため、核兵器を法的に禁止することで無くす。この考えに貴国は賛同するか?」という外交文書を送ったそうだ。
この時点での賛同国は南米やカリブ海諸国、アジア、中東、欧州の一部など計65カ国で3分の1程度だった。
再検討会議の場でも同大使が「核兵器禁止条約」の発効を精力的に働きかけた。
アメリカは「地道な核兵器削減努力に水を差す行為」と反発したそうである。

アメリカ「核軍縮が進んでいないという発言には失望しました。我が国は軍縮の義務に真摯に向き合っています。議長、そして皆さん、禁止条約派の主張には注意してください。議論を単純化しています。たとえ、あなたの国が調印しても、調印しない国が出てきたら、どう思いますか?確実に不信感を持つでしょう。」

オーストリア「リスクが高い核兵器で安全を守れるというのは幻想です。まさにギャンブルだと何故気づかないのですか?人類のために目覚めてください。核兵器を禁止しましょう。」

唯一の原爆国と積極的に謳う日本は、2013年に一度だけ拘束力がない共同声明に賛同した以外は、これまで一貫してこの提案への賛同を拒否してきた。
この時も賛同せず、どうしてなのか?と報じられたので覚えている人もいるかもしれない。
あのイランだって(失礼!)賛同しているというのに。
もっともアメリカと日本だけでなくNATO(北大西洋条約機構 アメリカとカナダ及びヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟)に加盟している国はどこも賛同していない。ヨーロッパの国の多くは加盟している。
オーストリアはNATOに加盟していない国なのだ。

加盟国
1949年 アイスランド、アメリカ合衆国、イギリス、イタリア、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク
1952年 ギリシャ、トルコ
1955年 ドイツ
1982年 スペイン
1999年 チェコ、ハンガリー、ポーランド
2004年 エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア
2009年 アルバニア、クロアチア
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by yumimi61 | 2017-01-16 17:27
2017年 01月 15日
日本国憲法の秘密-451-
人はみな自分が正しいと思っている。
正しさの基準は自分にある。
個人を尊重すればそれは少しも間違いではない。
何を主張しても何を選んでも良いはずだ。
選択肢だって沢山あるほうが選びがいがあるだろう。
他人の人生を生きているのではない、自分の人生を生きているのだから。
本来それ以上もそれ以下も無い。自分の人生は自分で選ぶものだ。人が口出しすることではない。
でもそれを法律や社会や親族が許さないことがある。
法律や社会や身内の人間が力や多数を盾に制限を与え制裁を加える。
自分の好きなように生きられるわけではないのが現実でもある。

①Aを主張して、Bを主張する人を批判する人がいる。
②Bを主張して、Aを主張する人を批判する人がいる。
③どちらかに決めることは愚か、人間や社会は一様ではないと、Aを主張する人やBを主張する人を批判する人がいる。
なんとなく③が素晴らしいようなのだが、行っていることは同じ。結局みな同じことをしている。
ある意味これもパラドックス。
自分と違う主張がすーっと胸に浸透するなんてことはまずないと思っていい。
どんな体裁を整えても自分の考えに沿わない人は気に入らない。これが人間の本性だと思う。
そのことに気付いているからこそ「褒めて育てる」や「承認欲求」などが蔓延する。
自分の考えに沿わないけれどあの人が好きだということは在り得ないのだろうか?
愛されたいがゆえに、自分の考え方に沿わないことに酷く失望するのだろうか?

本来、一個人としてそれを行っているのか、仕事の一環として行っているのか、社会の一員として行っているのか、親族として行っているのか、どの立ち位置にいるのかによっても主張や行動は変わるものだ。

例えば、例えばAをオバマ大統領に、Bをトランプ次期大統領としてみよう。
Aはクリントンさんではないか?選挙で負けたクリントンさんはこの比較には当てはまりません。
選挙で勝利したのは誰が何を言おうと、トランプさんだったのだから。
報道などではだいたいトランプ次期大統領は悪者である。
だから②の人が劣っていたり悪く言われたりする。そうはっきり言わなくても必然的にそうなる。
選挙で勝った人を批判するということは多くの選挙民が馬鹿だと言っているのと同じである。

では実際、AとBとどちらが良いのか、どちらが正しいのか。誰しもが納得する明確な答えは存在しない。
比較に値する存在(この場合は同じ国の大統領職ということで比較に値する)であっても、選挙のように白黒付けることは出来ない。
誰かにとって良いことは、誰かにとって良くないことであったりするのだ。
どうしても白黒付けたければ、多数決を取って収めるしかない。
人は金で動く、人は愛で動く、人は気分で動く、人は欲で動く。
多数決を支えているのは個人の欲であり愛であり、個人に帰結する。客観的な指標など別に必要なく動く。
つまり多数決の結果は票を投じた個人の勝ち負けに直結する。
負け戦などしたくないと思えばわざわざ選挙に出向いたりもしないだろう。負けるくらいなら最初から参加しないと棄権する人がいる。
勝ち負けは思う以上に人々の日常に根付いている。スポーツに熱狂する人なんか軽く凌駕するくらい広くに勝ち負けは浸透している。
だから選挙の前には下馬評がとても大事になる。どちらかが優勢な雰囲気は投票行動をも左右することになる。




客観的にみると、原子力発電所よりも危険なのは、酸化ウランを六フッ化ウランに転換したり再び酸化ウランに戻す転換施設と、六フッ化ウランを用いているウラン濃縮施設である。
それは昨日書いた通り、ウランという放射性物質・有害化学物質のほかにフッ素という有害化学物質を大量に扱うからである。
フッ素は水に反応して(加水分解反応)フッ化水素を生じる。
加水分解と酸化は同じではない。酸化数(電子の変化)を伴うのが酸化で、伴わないのが加水分解。
フッ素は大気中の水分や人間の身体の水でも反応してフッ化水素を生じるのだが、このフッ化水素も非常に危険で呼吸器や皮膚・粘膜を破壊するという急性症状を示し、最悪死亡してしまう。

一般的に「フッ素」と言えば、虫歯予防のフッ素であろう。
虫歯予防のフッ素はフッ化ナトリウムである。

かつてフッ化ナトリウムとフッ化水素を間違えてしまった事故が歯科医院で起こったことがある。

1982年4月20日午後3時50分頃、八王子市内の歯科医院で、同院の院長である歯科医師(当時69歳)がう蝕予防用のフッ化ナトリウムのラベルがある合成樹脂製小瓶の液体を脱脂綿にしみこませ、市内に住む3歳の女児の歯に塗布したところ、辛いと訴えた(フッ化ナトリウムは本来無味である)。
女児の母親と同院の助手の女性が女児の体を押さえつけ、さらに液体を塗布したが、女児は診察台から転がり落ちて苦しがり、口からは白煙が上がった。
救急車で近所の医院に搬送され、症状が重篤であるため東京医科大学八王子医療センターに転送されたが、同日午後6時3分頃、急性薬物中毒のため死亡した。
翌日、女児の通夜の席で、歯科医師は脳血栓の発作を起こし倒れた。

この液体は、歯科材料商社から大瓶で購入し、歯科医師が当日小瓶に移し替えて使用していたが、事故後、歯科医師の妻(当時59歳)が「薬を間違ったのでは」と思い、ためしに塗布液を自分の歯に塗ってみた。ところが、強い刺激とともに歯ぐきが荒れたため、うがいをして吐き出したという。妻はこの液体を中身ごと自宅の焼却炉で処分した。妻には医学や薬学の知識はなかった。

その後の調べで、同年3月19日に歯科医師の妻が市内の歯科材料業者に、フッ化ナトリウムのつもりで「フッ素」と注文し、業者はこれを歯科技工用のフッ化水素酸と解釈し、同院に配達した。その際、毒物及び劇物取締法に基づき、受領書に捺印を求めた。これは、フッ化ナトリウムでは不要のものである。この瓶と従来使用していたフッ化ナトリウムの瓶の意匠が異なることについて、歯科医師は「前年暮から新たに取引を始めた業者であり、別のメーカーの製品ではないか」と思いこみ、品名を確認していなかった。

歯科医師は刑事責任を問われた。1983年2月24日、東京地方裁判所八王子支部で業務上過失致死罪により禁錮1年6月執行猶予4年の有罪判決を受け、この一審判決が確定した



フッ化ナトリウム(フッ素)は歯科医院で塗布することが主流だったが、その後歯磨き粉や洗口液などに加えられるようになり、現在は自分で塗布するような商品も販売されている。
世界的には水道水に添加してしまうという方法が採られている。
日本でも検討や議論があったが現在国内で水道水にフッ素を添加しているのは米軍基地内と群馬県下仁田町役場内の水道水だけだそうである。
この虫歯予防のフッ素に関しても反対している医師や科学者がいる。


水道水フッ化物添加についての議論


フッ素はほとんどの場合(ウラン濃縮で利用する以外は)化合物として存在しているが、化合物とはフッ素と何かがくっついたという状態である。
多少性質は変わるがフッ素自体がなくなったわけではない。
塵も積もれば山となるではないが、日々口にするようなものに有毒なフッ素を添加するのはいかがなものかということである。
商品ならば嫌ならば買わなければよいが、水道水に入れられてしまうと選択性がなくなってしまう。(ミネラルウォーターを買えばよいじゃないか?)
そういう意味ではやはり問題はあると思う。
ちなみにフッ素化合物を水道水に添加することを世界で最初に導入したのはナチスだったと言われている。(虫歯予防?人体実験?痴呆化目的?)


戦後の1950年代にアメリカで水道水への添加を巡って科学者の間で一大論争が起こった。

アメリカにおけるフッ素の有効利用の始まりはアメリカにおけるアルミニウム産業でした。
産業廃棄物であるフッ素の毒性と処理に手を焼いていたアルコア社の主任研者フランシス・フレイリーは、メロン産業研究所の研究員ジェラルド・コックスにフッ素の歯に与える影響を研究して、その有効利用を提案しました。
そして、コックスは 1939 年に虫歯予防のために、公用の水道水にフッ素を添加することを提唱します。

また、このメロン産業研究所は、アルコア社の株主であるアンドリュー・メロンが設立したもので、真の目的は、大企業が起こす大気汚染・土壌汚染などの公害に対して行われる訴訟から産業を守るために有利なデータを作成することでした。
同社はアスベスト産業を守るために「アスベストは安全である」と長年主張し続けています。

その後、欧米において「宣伝広告の父」との異名をもつ、エドワード・バーネイが「虫歯予防にフッ素」というキャッチフレーズで水道水へのフッ化物添加キャンペーンをテレビ・ラジオ・ポスターなどを用いて全米で大々的に展開しました。
そして、「フッ素は安全なもの、体に良いもの」というイメージが一般社会に定着したのです。

THINKER 虫歯予防”フッ素”の真実 より>


1950年代は、時代的に核兵器開発や核の平和利用(原発)が盛んになってくる時期である。
(アメリカのアイゼンハワー大統領が、1953年12月8日にニューヨーク の国際連合総会で「平和のための原子力」演説を行った。)
アメリカの一大論争の際、低濃度ならば安全であると主張したフッ素添加支持派の中心的人物がハロルド・ホッジだった。ホッジは原爆と無縁ではなかった人物であった。
原爆にしろ原発にしろウランを濃縮する必要がある。そこではフッ素が使用される。

ハロルド・ホッジ博士は、予期される核実験反対や訴訟に備え、あらかじめウランやプルトニウムを人体に注射し、その毒性を測る実験を指揮していました。
それと同時に核兵器の製造時に大量に使用し、排出されるフッ素ガスの毒性を一般大衆に察知されないように安全性をアピールしておく必要があったのです。
そのためにどうしても「フッ素は安全なもの」として一般の人々のイメージに浸透させておく必要がありました。こうしたことが、すべてからんでいるためにフッ素に関しての真実はいまだに隠蔽されたままなのです。
<出典は同上>


1930年代ハロルド・ホッジはアメリカのロチェスター大学の医学部と歯学部で、フッ化物と歯のフッ素症の研究を含む毒物学を探求した。
当時のアメリカで取り上げられていたのは虫歯予防ではなくて、天然に存在するフッ化カルシウムの濃度が高い地域でフッ素症の発生が認められることと、フッ化物を含む工業的大気汚染による健康への悪影響であった。
水道水にフッ化物を添加するのではなく、水道水からフッ化物を除去することが課題であった。


潮目が変わったのはやはり戦時中の原爆開発だったのだろう。
ホッジはウランとプルトニウムの安全性を調べる人体実験を行ったという。

The US government settled with the victims' families, paying $400,000 per family. Seven victims were injected with material smuggled into a hospital secretly through a tunnel. One unmarried, white 24-year-old woman was injected with 584 micrograms of uranium; another 61-year-old man was injected with 70 micrograms per kilogram of uranium.:93 Hodge also arranged for Dr. Sweet to inject 11 terminally-ill patients with uranium for their brain tumors; however, these subjects may have known they were being tested.

Hodge is also singled out by BBC journalist Christopher Bryson in his book The Fluoride Deception as having played a key role in promoting the implementation of water fluoridation in the U.S., from which the water fluoridation controversy stems. Hodge's position on the Manhattan Project was connected with his knowledge of fluoride from his tenure at the School of Medicine and Dentistry in Rochester, New York. Fluorine and fluoride by-products were considered as highly dangerous and had been quite thoroughly researched by Kaj Roholm at that time. Modern toxicological profiles confirm the industrial risks inherent in working with fluorine, fluoride and hydrogen fluoride.Bryson makes the case that Hodge knowingly lied in testimony to Congress regarding the safety of fluoridation.


ホッジは戦後も米国原子力委員会(AEC)の薬理・毒物学部門を率いてウランやベリリウム(有毒性が高いと言われている)の吸入影響などを研究していた。
そんな中、水道水のフッ化物添加を推進していたわけである。

しかし1993年にアメリカの地方紙アルバカーキー・トリビューンのアイリーン・ウエルサム記者(ジャーナリスト)が"The Plutonium Experiment"(プルトニウム実験)と題してホッジの戦時中の人体実験を暴露した。
彼女はこれによりピューリッツァー賞をはじめ数多くの賞を受賞し、ホッジの評判はがた落ちとなった。
彼女は1999年にも "The Plutonium Files: America's Secret Medical Experiments in the Cold War"(プルトニウム・ファイル:冷戦におけるアメリカの秘密医学実験)」という書を執筆し賞を受賞している。

タイトルはプルトニウムだがホッジはウランの実験もしている。
戦時中はウラン爆弾の実現性が乏しくプルトニウムに期待する向きがあったが、やはりプルトニウムは有効ではなく、戦後はプルトニウムから離れてウランを中心に研究していたということだろうか。

アメリカ合衆国における人体実験
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by yumimi61 | 2017-01-15 14:10
2017年 01月 14日
日本国憲法の秘密-450-
ウランは酸素を与える酸化剤や助燃性の性質を有し、酸素を奪う還元剤としての性質も持つ。自然発火性も有している。
また水素とも極めて反応しやすく水素化物(水素化合物)を作る。水素吸蔵合金の性質も持つ。
非常に反応性の高い物質である。
こうした特徴を上手く使えば役に立つことも多いが、反面取り扱いが難しい物質でもある。
核燃料として用いられているのはウラン単体ではなくて酸化ウランである。
水との両立性に優れ、融点も高くなる(約2800℃)。
ウラン単体よりもずっと安定していて取扱いやすい。

原発や軍事利用のウランは濃縮をして(ウラン238と235の比率を変えて)使用しているが、濃縮を行うためにはウランを気体にする必要がある。

ウランの融点と沸点は昨日書いた。
ウラン単体は、融点(固体→液体)1132 °C、沸点(液体→気体)3745 °Cである

ウラン単体を気化して濃縮を行うならば、沸点3745 °C以上の温度を維持し続けなければならない。
この温度を維持するということはなかなか大変なことであるし、非常に多くのエネルギーが必要になる。
ウランは最初から効率があまりよろしくないが、さらにこれではさすがに効率が悪すぎると思ったのだろう。
そこでどうしたかというと、「六フッ化ウラン」を使うことにしたのである。
フッ素化したウランということである。
六フッ化ウランは常温では固体だが56.5 °Cで昇華(液体とばし)して気体になる。
3745 °Cを維持するのと、 56.5°Cを維持するのでは、その差は歴然。

濃縮は僅かな質量差(中性子3つ分)を頼りに行うので、もしもフッ素にもいろいろ種類(核種)があり質量差があればウランの差なのかフッ素の差なのか分からなくなるが、幸い(というかだからこそ選ばれたんだろうけれども)フッ素は天然に存在する核種がただ1つしかない元素である(単核種元素)。

ちなみにヨウ素やセシウムも単核種元素である。天然に存在しているものは安定した核種である。
ところがヨウ素やセシウムは核分裂により新たに放射性核種が誕生する(と言われている)。分裂片のことである。
ヨウ素129やヨウ素131やセシウム137などは新たに生まれた放射性核種である。(ヨウ素129は核分裂の他ウランの自然崩壊でも生成される)(ヨウ素による健康への影響を心配するならばヨウ素129も取り沙汰されてよいはずなのだが、ウランの半減期が長いところに持ってきてヨウ素129の半減期も1570万年と長いためあまり注目されずにいる)
ヨウ素127が安定同位体であり、他37種類が知られているものの、全て放射性同位体である。
これらの新たに生まれた放射性核種が単核種元素の存在比を乱してしまっている(よく分からなくさせている)。
ヨウ素について言えば、安定ヨウ素127とヨウ素129以外は半減期が短いため、通常環境中にはないとされる。(どこかで放出され、それを採取し、計測して、人間があーでもないこーでもないと考察を加えているうちにヨウ素ではなくなっているだろうから環境中にあることを知ることは出来ないということ)


◎天然ウランが核燃料になるまで
天然ウラン→酸化ウラン→六フッ化ウランに転換→(気体にして濃縮)→酸化ウランに再転換→酸化ウラン粉末→プレス機で成型・加工→高温で焼き固めてペレットに→核燃料


◎フッ素の黒歴史
酸素を発見したアントワーヌ・ラヴォアジェも単離には至らなかった。

1800年、イタリアのアレッサンドロ・ボルタが発見した電池が、電気分解という元素発見に極めて有効な武器をもたらした。
イギリスのハンフリー・デービーは1806年から電気化学の研究を始めると、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、バリウム、ホウ素を次々と単離。しかし1813年の実験では電気分解の結果、漏れ出たフッ素で短時間の中毒に陥ってしまう。デービーの能力を持ってしてもフッ素は単離できなかった。単体のフッ素の酸化力の高さゆえである。実験器具自体が破壊されるばかりか、人体に有害なフッ素を分離・保管することもできない。

アイルランドのクノックス兄弟は実験中に中毒になり、1人は3年間寝たきりになってしまう。
ベルギーのPaulin Louyetとフランスのジェローム・ニクレも相次いで死亡する。
1869年、ジョージ・ゴアは無水フッ化水素に直流電流を流して、水素とフッ素を得たが、即座に爆発的な反応がおきた。しかし、偶然にも怪我一つなかったという。

ようやく1886年、アンリ・モアッサンが単離に成功する。白金・イリジウム電極を用いたこと、蛍石をフッ素の捕集容器に使ったこと、電気分解を-50℃という低温下で進めたことが成功の鍵だった。当時は材料にも工夫があり、フッ化水素カリウム (KHF2) の無水フッ化水素 (HF) 溶液を用いた。だがモアッサンも無傷というわけにはいかず、この実験の過程で片目の視力を失っている。フッ素単離の功績から、1906年のノーベル化学賞はモアッサンが獲得した。翌年、モアッサンは急死しているが、フッ素単離と急死との関係は不明である。


そんなフッ素を大量に・・・。

その性質上、フッ素を単体で使う場面は少なく、フッ化カルシウム (CaF2) と硫酸 (H2SO4) から生成するフッ化水素 (HF) を介して利用されることが多い。ウラン235 (235U) 濃縮のため、揮発性の高いフッ化ウラン (UF6) を製造する目的で単体フッ素が利用されることは、特筆すべき事柄である。

フッ素の化合物は、一般に極めて安定しており、長期間変質しないという特徴を持つ。この性質は環境中で分解されにくく、いつまでも残存するということを意味しており、その使用には注意が必要である。



フッ素は天然(自然界)にも単体では存在しておらず蛍石や氷晶石などとして在る。
酸化性が極めて高い物質。
反応性が高く取扱いが非常に難しい危険な物質であるため、酸化剤として用いられることはまずない。
研究などであってもおいそれと使える物質ではない。
あのNASAも諦めたくらいである。
単体のフッ素やClF5などの化合物はロケット燃料の酸化剤として、1950-1970年頃にかけNASAを含むいくつかの機関で検討されたことがある。例えばNASAでは液体酸素の代わりに液体酸素-液体フッ素の混合物(フッ素を70%含むFLOX-70や同30%含むFLOX-30等)をアトラスロケットのエンジンを用いて試験しているし、ソビエトでも同様の実験が行われていた。これはフッ素を酸化剤として使用した場合の比推力が酸素を用いた場合を上回るためであったが、性能向上がわずかであったのに対しフッ素の危険性ゆえに取り扱い上の困難が非常に大きく、結局ロケット燃料としての利用に関しては断念されることとなった。
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by yumimi61 | 2017-01-14 16:22
2017年 01月 13日
日本国憲法の秘密-449-
原子炉建屋内には運転に用いている核燃料(ウラン110トン)のみならず、使用済み核燃料も冷却されて保管されていた。
事故の状況によってはウラン100トン分の放射性物質が放出されるだけでは済まないということである。


福島原発事故の際、原子炉などの説明として報道機関の報道をはじめとしてよく用いられてた図はこのようなタイプが多かった。
e0126350_1354490.jpg


こちらはこの間も掲載した電力会社の原子力発電(沸騰水型)の仕組みの説明図。
(今回分かりやすいように「原子炉格納容器」という言葉と矢印を私が書き入れました)
e0126350_136427.gif


原子炉格納容器(原子炉を格納している容器)(外側の容器)の一番下の部分には水が溜めてある。これを圧力抑制プールという。
(一番上の図では断面図であるためプールというイメージが少々涌きにくいかもしれない)
約3,000トンの水が入れられているそうだ。
温度がコントロールできないのも困るが、圧力がコントロールできないのも困る。(温度と圧力には関係があるけれども)
圧力が上がり過ぎれば容器の破損に繋がるからだ。
何らかの不具合(故障・事故)で原子炉圧力容器の圧力が上がり過ぎた場合に、原子圧力容器の弁を開けて蒸気を圧力抑制プールに送り込み、貯めておいたプールの水で冷却し圧力を低下させる役目を持っている。
送り込まれた蒸気が多ければ、あるいは原子炉圧力容器が破損して蒸気が漏れだしているようなことがあれば、原子炉格納容器も蒸気によって圧力が上がってしまい破損しかねない。それを水による冷却によって防ぐという役目もある。
いざという時には炉心(核燃料)を冷やす役目も持っているそうである。

では事故発生の時に散々耳にした炉心溶融(メルトダウン)とは何なのか。

炉心溶融、あるいはメルトダウンとは、原子炉中の燃料集合体が(炉心を構成する制御棒やステンレススチール製の支持構造物等をも含めて)核燃料の過熱により融解すること。または燃料被覆管の破損などによる炉心損傷で生じた燃料の破片が過熱により融解すること。

炉心溶融は原子力事故における重大なプロセスの一つであり、さらに事態が悪化すると核燃料が原子炉施設外にまで漏出して極めて深刻な放射能汚染となる可能性がある。それに至らないまでも、溶融した炉心を冷却する際に発生する放射性物質に汚染された大量の蒸気を大気中に放出(ベント)せざるをえないことが多く、周辺住民の避難が必要となるなど重大な放射能汚染を引き起こす可能性がある。

臨界状態の核燃料が炉心溶融を起こす場合もあるが、原子炉の運転中に生成蓄積された核分裂生成物が臨界停止後も大量の崩壊熱を発生するため、未臨界状態の核燃料であっても炉心溶融を起こしうる。


早い話、燃料棒(燃料被覆管)か、その中に収められていた核燃料(固体の酸化ウラン)が融けることである。(図の赤い部分)
要するに密封されていたはずの核燃料が被覆管の外に出てしまうということ。そこには放射性物質が多数存在している。

福島原発事故では、まず地震による停電で外部電源を失った。
しかし外部電源喪失は地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機の起動によってカバーできるようになっていた。
ところが津波によって非常用ディーゼル発電機も海水に浸かって故障。
同時に電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリーなども流出したり故障したりで、全電源喪失状態(Station Blackout、ステーション・ブラックアウト)に陥った。
電気を作っている原子力発電所自体も電気なしにはやっていけない。
電気がストップして一番に問題になるのは原子炉圧力容器や原子炉格納容器に水が送れなくなることである。

水が送れないと蒸発する一方なので水位はどんどん下がっていき、通常は水(沸騰水)に浸かっている燃料棒が顔を出すようになる。
さらに続けば完全に水(沸騰水)が蒸発してしまう。
やかんに水を入れて火にかけ、かけたことを忘れるといずれ水が全て蒸発して、空焚き状態になる。
新潟県糸魚川市の大規模火災も元を正せば鍋の空焚きだったとか。
温度がどんどん上昇して火災にも繋がる状況である。(最近のコンロならば空焚きを感知して止まるようになっているらしいけれども)

それならば蒸気を逃さないようにすればいいじゃない?
普通の鍋に水を入れてしっかり蓋を閉める。
そのまま熱し続ければ、蓋がガタガタしだして、蓋が外れたり煮こぼれたりしますね。
蒸気を逃してやらないと中で圧力や温度が充満して耐え切れなくなってしまう。
蒸気や液体を逃さないように密封し、ある程度の圧力に耐えられるのが圧力鍋である。
しかし爆弾を作るのに使われたりする。圧力鍋だって限界を超えれば耐え切れない。
原子炉も蒸気を逃さないで熱し続ければ、結局容器が耐え切れなくなってしまう。


ボケ老人じゃないんだから(失礼!)忘れてたなんてことはないでしょ、まず火を止めなさい?
原発は火を止めたのである。緊急停止装置が作動したのである。
原発の「火を止める」とは緊急停止装置が制御棒を全て入れて「臨界反応(核分裂連鎖反応)を止める」ことである。
しかし実際のところ、この停止はほとんど意味をなさない。
何故かと言うと、人間には原子核が崩壊することによって生じる熱を止めることが出来ないからである。
原発の核燃料で核分裂に用いているのはウラン235の比率は3~5%。
残りの97~95%はウラン238である。
このウラン238、またウラン235の核分裂によって生じた放射性物質(分裂片)と、ウラン238の核崩壊によって生じた放射性物質が、どんどん核崩壊を続けている。熱を発し続けている。
だから実際のところ「火を止める」ことは出来ない。
考え方を変えて見ると、核分裂などさせなくても危機に陥るほどの熱を生じるのだから、端から核分裂なんか必要ないのである。
事故防止に大事なのは「火を止める」ことではなく「水を送り込む」ことなのだ。


ウラン単体は、融点(固体→液体)1132 °C、沸点(液体→気体)3745 °Cである。
燃料に用いている酸化ウランの融点は2850℃。
燃料被覆管に用いているジルカロイという物質の融点は1850℃。

温度は熱源の温度ではなくて物質の温度である。
物質(固体)の温度がこれ以上になれば融けて液体になってしまう。
熱源の温度が高ければ物質の温度も当然上がりやすいが、前にも書いた通り、温度の上がりやすさ(熱の蓄積)には熱伝導率や熱容量なども関係してくる。

燃料被覆管のジルカロイはジルコニウムと他の金属を合わせた合金。
主となるジルコニウムの熱伝導率はだいたいステンレスと同じくらいで、金属の中では熱伝導率は低いほうである。熱するまでにやや時間がかかるが熱は外に逃げにくい(熱しにくく冷めにくい)。

圧力容器内の冷却水(沸騰水)(水蒸気)の温度は約285℃。圧力は約70気圧。
水の沸点(液体→気体)は100℃であるが、これは常圧(1気圧)の時であり、それより圧が高いので100℃を超えて285℃となっている。
原子炉圧力容器は厚さ約15cmの鋼鉄(鉄と炭素の合金)製で90気圧まで耐えられるという。
純粋な鉄の融点は1535℃だが、一般的な鉄は炭素を含んでおり、1535℃よりも融点は低くなる。
鉄や炭素の熱伝導率はステンレスよりも高い(より早く熱し、熱を外にも逃しやすい)。
上にも書いたように圧力容器内の圧力が高くなりすぎた時には、弁が自動的に開いて高温高圧の水蒸気を圧力抑制プール(ウェットウェル)に逃し圧力を下げる。

沸点に達してから初めて蒸発すると勘違いしている人がいるかもしれないが、蒸発は低い温度でも発生する。
常圧にある水は沸点100℃にならなくても表面から蒸発している。
但し温度が高いほうがより蒸発しやすく、温度が低いと蒸発は少ない。
液体内部から蒸発が起きて一斉に蒸気になろうとする温度が沸点である。

内側の核燃料がジルカロイに熱を与え、ジルカロイは外側の水に熱を逃す。
燃料被覆管が融けてしまったら話にならないので、通常は被覆管ジルカロイは融点1850℃を超えない温度にある。

しかし不具合が起きていた。
何らかの不具合(故障・事故)で原子炉圧力容器の圧力が上がり過ぎた場合に、原子圧力容器の弁を開けて蒸気を圧力抑制プールに送り込み、貯めておいたプールの水で冷却し圧力を低下させる役目を持っている。
送り込まれた蒸気が多ければ、あるいは原子炉圧力容器が破損して蒸気が漏れだしているようなことがあれば、原子炉格納容器も蒸気によって圧力が上がってしまい破損しかねない。それを水による冷却によって防ぐという役目もある。


格納容器を守る役目もある圧力抑制プールであるが、福島原発の事故では格納容器内のプールではない部分(ドライウェル)の蒸気を外に逃すことも行われたそうだ(ドライベント)。
ウェットウェルだけでは間に合わなかったということだ。
被覆管や圧力容器に異常があってすでに放射性物質が被覆管や圧力容器外に漏れ出している可能性が高い。
そうは言っても原子炉格納容器は厚さ3cmの鋼鉄製。圧力容器より厚さがない。
水は気体になると体積が1700倍にもなる、逃さなければ爆発に繋がる。
だから放射性物質がすでに漏れ出している状態の蒸気を外に出すしかない。
でも結果的に福島第一原発の原子炉は爆発が起こった。
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by yumimi61 | 2017-01-13 14:18
2017年 01月 11日
日本国憲法の秘密-447-
本日2本目の記事となります。

ヨウ素が取り沙汰された理由は半減期の短さだけではない。
いまいちど甲状腺がんのリスクとして挙げられている要素を思い出してほしい。

<リスク>
・放射線被爆
・遺伝
・体重増加
・ヨウ素(ヨード)摂取量
・ホルモン(ホルモン異常,経口避妊薬使用の有無,女性ホルモン補充療法の有無,不妊症治療薬使用の有無,乳汁分泌抑制剤使用の有無など)
・月経(初経年齢,閉経の有無,閉経年齢など)
・妊娠(妊娠回数,分娩回数,流産の回数,初回妊娠年齢,初回分娩年齢など)
・魚介類の摂取量
・アルコールや煙草


被爆とは別に「ヨウ素摂取量」自体がリスクの1つなのである。
ヨウ素(ヨード)は人間にとって必須成分であり、その半分は甲状腺に集まっていて、甲状腺ホルモンを生成するという役目を果たしている。
ヨウ素は食事などから定期的に摂取する必要がある。
多く含む食品は、昆布、ワカメ、ヒジキ、ノリ、寒天などの海藻類である。
こうした海藻類や魚介類を他国より多く摂取する日本ではヨウ素不足が問題になることはなかった。
(それでもヨード卵などという卵が売られていますね)
しかし世界的にはヨウ素不足は深刻で、これで命を落とす人も少なくないのである。
欧米では塩にヨウ素を添加することで改善をみたが、大陸の山岳地帯の発展途上国を中心に現代でもヨウ素不足は改善されていない。

ヨウ素過不足については過去記事でも触れている。
放射性ヨウ素を蓄えてしまう前に、安定ヨウ素で先に満たしてしまおうという考えで放射線汚染時に用いられるのがヨウ素剤である。
ヨウ素は通常でも過不足で健康障害を引き起こすことがある。
ヨウ素を含む海に囲まれる島国であり、広大な大陸でもないため土壌のヨウ素含有率も深刻に少ないという状況ではなく、さらに海産物を食べる習慣のある日本人は不足にはなりにくい。よってどちらかと言えば過剰が問題であった。
健康な人であればヨウ素摂取量が多少増えても排泄により自然に調節可能だが、長期間の過剰摂取は過剰症を引き起こすことがある。また疾患を持つ人は自然調節が上手くいかない場合もある。
外国では塩にヨウ素を添加していることも多いので日本人は注意が必要。
過不足ともに主に甲状腺(ホルモン)や妊娠や胎児に影響がある。


ヨウ素の過不足(特に不足)は周産期(妊娠22週から生後満7日未満)死亡に繋がる。
また先天的疾患や脳障害の原因としても非常に重要で、知的障害(精神遅滞)の最大の原因は世界的に見るとヨウ素不足なのである。

このヨウ素の過不足が甲状腺がんの発生にも関係しているという論文は幾つもある。
ヨウ素不足地域では性質の悪い未分化がんという種類の甲状腺がんが多く発生し、過剰地域では大人しく治りやすい乳頭がんの発生が多いそうである。
同時にヨウ素過不足と甲状腺がんの関係性は認められないとする論文も幾つかある。
両方を尊重すれば未だよく分からないといったところ。


ロシアは塩にヨウ素を添加している国である。
チェルノブイリ周辺の旧ロシア地区も比較的ヨウ素の摂取量が少なくヨウ素欠乏症が認められる。

2013年ロシアの状況
下院保健委員会のニコライ・ゲラシメンコ第一副委員長が、店舗で販売される全ての食塩にヨウ素を添加する法案を提出した。今、わが国では食塩へのヨウ素添加は任意である。ゲラシメンコ第一副委員長は、卸売・小売用の食塩にヨウ素添加を義務付け、パンの製造にもヨウ素添加塩の使用を義務付けることを提案した。

このような法案の根拠となったのは、内分泌学研究センターの研究である(2002〜2006年に行われた研究)。わが国では長い間、甲状腺の病気の状況が良い状況とはいえない。調査された19地域のうち15地域では、ヨウ素不足のために甲状腺腫(ヨウ素不足に関連した甲状腺の病気)の罹患率が5%から19%である;3地域(アルハンゲリスク州、ニジェゴロド州、アストラハン州)では甲状腺腫の罹患率は20〜29%の範囲にある。また、スヴェルドロフスク州では30%を超えている。これらのデータは法案への解説文に引用されている。

甲状腺腫を予防する最も単純な方法は、ヨウ素添加塩である。「実際、20世紀初頭、ソビエト政府によりすでにこの有益な実地応用は行われていました」―このように、「食事と健康クリニック」のミハイル・ゼイガルニク、主任医師は述べている。「これは深刻な病気―幼い子供の知的障害から大人の甲状腺機能低下症まで―を予防するための、最も安価な方法です。成人を完治させることができる一方で、子供たちのヨウ素不足は深刻な知的発達障害を引き起こしうるのです」。



摂取されたヨウ素の多くは甲状腺に運ばれる。
特に成長期の小児は甲状腺の働きが活発であるので、より多くのヨウ素を取り込みやすい。
慢性的にヨウ素が不足気味だったところにヨウ素が入ってくれば、待ってましたとばかりにそのヨウ素が使われる。
喉が渇いてれば水をゴクゴク飲むのと同じである。
チェルノブイリ周辺はヨウ素不足気味な地域であった。
従って原発から放出された放射性のヨウ素(ヨウ素131など)を甲状腺にたっぷりと取り込んでしまう。
日本ではこれまで健康な人が普通に生活していればヨウ素不足になるということは考えにくかった。
そうであるならば、不足気味で甲状腺に多くを取り込んでしまうチェルノブイリの小児と、不足の心配はない福島の小児とは、同じではない。

ヨウ素の種類が安定でも不安定な放射性でも、甲状腺細胞がそれを取り込む。
ヨウ素131など放射性のヨウ素が取り込まれると、放射性ヨウ素は甲状腺で放射線を放出し原子をイオン化させ、それがやがてがんになっていく。
がんになると手術でそれを取り除く。
もしも甲状腺を全摘するとなると、以後甲状腺ホルモンが作れなくなるので、ホルモン剤の服用が必要になる。
手術による甲状腺摘出や放射線療法による甲状腺機能廃絶後は、医源性の甲状腺機能低下症となってしまうのだ。
もともと疾病として持っている甲状腺機能低下症は原発性と言う。(原子力発電所の原発ということではない)

甲状腺ホルモンは全身のエネルギーを促すホルモンであり、それが利用できなくなるため、症状は多岐にわたる。 主な症状は、強い全身倦怠感、無力感、皮膚の乾燥、発汗減少、便秘、上下肢、脇、眉の外側の脱毛、声がかすれる、聴力の低下、目に光がなくなり,顔もぼてっとする,鍵の開け閉めなどできにくくなる、体重増加などである。 全身の活動が低下し無力感を持ったり低体温になる。
本症で最も問題となる症状は早老による動脈硬化などである。 また子供のクレチン症の場合は生育に必要な甲状腺ホルモンが欠如するので、発育障害や知的障害にいたる場合がある。
甲状腺機能低下症のその他の症状のうち、うつ症状、鼻閉、便秘/腸閉塞、多関節炎が非定型的で見逃されやすく、注意を要する。


上記の他、不妊の原因にもなりうる。
ホルモン剤で改善が見られる人もいるが、なかなか難しく何もする気が起きないという人も少なくない。
甲状腺にがんが見つかって甲状腺を切除してしまうとこうした厄介な問題を後々抱えることになりかねない。
成長期で後の人生が長い小児の場合はより深刻となるだろう。


実は放射性ヨウ素は甲状腺がんの原因になるだけでなく甲状腺がんの治療に用いることがある。放射性ヨウ素内用療法という。
放射性ヨウ素ががん細胞に取り込まれ、がん細胞を破壊するから有効なのである。
この治療が適応となるのは甲状腺がんで甲状腺を全摘した者。
全摘したのに何故必要?と思うかもしれないが、手術では甲状腺を完全に取り除いたつもりでも目に見えないほどの小さな甲状腺組織が残っていることがほとんど。
その残った甲状腺組織の中にもしもがん細胞があれば増殖してしまう。
それを防ぐために放射性ヨウ素をあえて飲んでもらい、放射性ヨウ素を甲状腺に送って、残っている甲状腺組織を破壊してしまうのである。
また肺やリンパ節などに転移している場合にも転移したがんは甲状腺と同じ性質を持つため、そこも破壊することが可能。
一方、全摘ではなくて甲状腺組織を一部残している場合、内用療法の利用は十分な検討を要する。
何故かというと、正常細胞を破壊してしまうからである。
従って治療ではなく体内に取り込んでしまった放射性ヨウ素にも細胞を破壊する(生命力を奪う)能力があると考えるのが妥当であろう。
がん細胞でも正常細胞でも非選択的に破壊してしまう能力があるということなのだ。
取り込んだ放射性ヨウ素の量によって結果は多少違うと思うが。


ここまで放射性ヨウ素について語ってきたが、私は以前何度か述べているように、核分裂利用についても懐疑的である。
もし核分裂を利用していないとなれば、ヨウ素131は生成されない。
それでもウラン238とウラン235は崩壊するので放射線は放出するし、違う種類の放射性物質も出来る。
でもヨウ素131やセシウム137は出来ない。
そうなれば原発事故で小児の甲状腺がんが他のがんに先駆けて発生する理由はなくなる。
甲状腺がんが有意に増えなくても良いということである。

でもチェルノブイルは有意に増えている?
それはヨウ素不足から発生したがんとは考えられないのだろうか?
不足しているところにヨウ素131が取り込まれてもがんの原因になるが、ヨウ素不足だけでもがんの原因になる。そういう論文がすでにある。
さらにスクリーニングによるバイアスも完全には否定できない。
核分裂の証明にはヨウ素131があったほうが都合が良いのだろうけれども。
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by yumimi61 | 2017-01-11 18:19
2017年 01月 11日
日本国憲法の秘密-446-
昨日の記事にて広島・長崎原爆後の調査とチェルノブイリ原発事故の調査が「甲状腺がんの増加は放射線被爆と関係がある」との結論を導き出したと書いた。
但し広島・長崎原爆とチェルノブイリ原発事故では被爆の在り様が違う形で捉えられている。
広島・長崎原爆ではγ線の被爆(外部被爆)という認識。
一方のチェルノブイリ原発事故では放射性降下物という認識である。

放射性降下物(英: nuclear fallout)またはフォールアウト(英: fallout)とは核兵器や原子力事故などで生じた放射性物質を含んだ塵を言う。広域な放射能汚染を引き起こす原因はこの放射性降下物である。
一般には死の灰という俗称で知られる。日本では第五福竜丸事件が有名である。


第五福竜丸とは1954年のアメリカの水爆実験に遭遇して被爆したマグロ船のことである。
先日書いたように死の灰を浴びたが、乗組員の異変は「輸血による血清肝炎」だとアメリカは主張した。

放射性降下物とはウランなどの放射性物質(核種)(原子が集合し微粒子となり、さらに塵などに付着し粒子となったもの)のことで、それが広範囲に拡散されるのである。拡散されるということは密度は低くなる。
放射性物質があれば放射線を放出するが、放射線を放出するのは核崩壊する時であり、随時及び長期に亘る。
密度は低いとしても微粒子1個でも人間の体内に入れば原子のイオン化という異常をもたらす。リスクは有る。
つまりチェルノブイリ原発事故の調査は内部被爆の影響が念頭にあると言うことが出来る。

広島・長崎原爆では外部被爆(γ線)の影響で甲状腺がんが増加したと考えている。
一方のチェルノブイリ原発事故では内部被爆(放射性降下物に含まれる放射性物質から放射されるα線・β線・γ線)の影響で甲状腺がんが増加したと考えている。
両者には違いがある。

何が念頭にあるかによって調査の仕方は変わる。
特に後ろ向き研究の症例対照研究(ケースコントロール研究)では、対象者からそれに合わせた情報を得る必要があるので、何が念頭にあったかによって結果は随分違うものになる。
福島の原発事故の際も、日本では原爆の調査と同様に、ほとんどがγ線や外部被爆を中心に報道されたり論じられていた。
これにずっと違和感があった。
人々は福島第一原発から放射線が飛んでくるようなイメージを持っているかのようだった。


原爆も原発も核分裂を利用していると言われている。
核分裂を起こさせるにはウラン238ではなくウラン235が必要である。
それを完全に分離して使用することは出来ないので、238と235の比率を変えて利用する。これがウラン濃縮である。
広島・長崎原爆の比率がどれくらいだったかは分からないが、核兵器に用いる場合にはウラン235の割合が相当高くないとダメだと言われていて分離できないにしても100%近くになっていないとダメだという話があった。
現在一般的には核兵器などの軍事利用には70~90%の高濃縮ウランが必要と言われている。
原発の燃料に用いているウランのウラン235の比率は3~5%ほどだという。
劣化ウランは天然ウランのウラン235の比率0.7%よりも低い。
ではウラン235以外は何かと言えばウラン238である。

核分裂では放射線は放出されない。
もし100%のウラン235を用いた原爆ならば、爆発(核分裂連鎖反応)の瞬間に放たれる放射線はない。
厳密に言えば分裂後の放射性物質(分裂片)から幾らかは放射されるかもしれないが、取るに足らないものである。
もっと厳密に言えばウラン235の自然崩壊による放出もあるが、崩壊してしまうとウラン235ではなくなるということで核分裂連鎖の成功が怪しくなってくるので、崩壊はないことになっている。
核分裂は直ちに全ての放射性物質(分裂片)が崩壊を起こして放射線を放出するわけではないのだから、放射線はそれほど放出されない。
新たに生じた放射性物質(分裂片)の種類と量と半減期によって、どんな頻度で崩壊してどの程度の放射線が放射されるかは変わってくる。
ウラン235の比率が高いということは、瞬間的な放射線の放出量は少なくなるということなのだ。
広島や長崎の原爆が爆発した瞬間に多くの放射線(α線・β線・γ線)が放出されたということはない。
それなのに急性放射線症が被害の中心であるかのように謳っていることも、私があれは原爆ではなかったとする根拠の1つである。
(どこで摩り替えたか被害をもたらしたものは「熱線(赤外線)」になってはいるけれども)


原発に用いられているウランは原爆とは逆でウラン238のほうが圧倒的に多い。
ウラン238は核分裂しないのだから、来るべき崩壊の時を待つしかない。
核燃料内のウラン238は、適宜、順次、長期に亘って崩壊が続く。崩壊に従って放射線が放出されている。
核燃料内に3~5%ほど含まれるウラン235は核分裂連鎖反応を緩やかに継続させている。

以前、福島第一原発の3号機を例にして酸化ウランの量を計算した。
 ・ペレットの大きさは直径1cm×長さ1cmほど。小さな円筒形。
 ・ペレット1個の重量は約8g。
 ・燃料棒1本につき350個のペレットを用いる(燃料被覆管に350個のペレットが密封されている)
 ・燃料棒を束ねたのが燃料集合体であり、1体あたりの燃料棒数は72本
 ・原子炉一基あたりの燃料集合体数は548体
 ⇒8×350×72×548=110,476,800g=110,476.8kg≒110t(トン)


3号機という原子炉一基あたりではおよそ110トンのウランが使用されている。(これで4年間運転継続可能だそう)
そのうちの3~5%がウラン235であるので、3.3~5.5トンのウラン235が含まれている計算となる。

では原爆にはどれくらいウランが使用されていたのか?
科学者が計算で弾き出した数値としては、以下のとおりである。
・核分裂連鎖反応による爆発を起こさせるには、純度100%のウラン235が20kg以上必要。
 (ウラン10kgはおおざっぱに500mlペットボトル1本分くらいの大きさである)
・プルトニウム239でも、純度100%で5kg以上ないと核爆発しない。

しかしウラン235を分離することは出来なかったため、ウラン総量で75kg積載した。(ウラン235の比率が80%で60kg含有)
後年、このうち核分裂を起こしたのは60分の1程度、つまり総量で1.25kg・ウラン235で1kg相当だったと言われるようになる。(つまり不完全爆発だった)
ともかく原発一基に使用されているウラン量に比べたら遥かに少ない。

【ウラン総量】
 ●原爆 75kg
 ●原発 110,000kg(110t) 
※原爆の1467倍のウランが福島第一原発3号機には存在していた。

【ウラン235量】
 ●原爆(純度80%として) 60kg
 ●原発(純度4%として)4,400kg(4.4t)
※原爆の73倍のウラン235が福島第一原発3号機には存在していた。



原発事故後にその名が取り沙汰された放射性物質は「ヨウ素131」や「セシウム137」、「ストロンチウム90」。
これらはウラン235の核分裂後に出来る放射性物質(分裂片)である。
「ヨウ素131」や「セシウム137」が崩壊して別の核種になる際に放射線を放出する。
核分裂後に出来る放射性物質(分裂片)はこの2つだけではないし、核分裂しないウラン238だって崩壊によって放射線を放出する。

「ヨウ素131」「セシウム137」「ストロンチウム90」の崩壊過程は下記の通り。
15過程を経るウラン238に比べると過程は少ないし半減期も短い。
(物質としてはウランのほうが不安定なはずなのに半減期がやたら長いという矛盾があることはすでに指摘してきたこと)
※原子番号(原子番号が大きいほど不安定) ストロンチウム38 ヨウ素53 セシウム55 ウラン92

●ヨウ素131(半減期8.0207日)→β崩壊→キセノン131m(11.934日)→γ崩壊→キセノン131(安定)

●セシウム137(半減期30.1671年)→β崩壊→バリウム137m(2.225分)→γ崩壊→バリウム137(安定)

●ストロンチウム90(半減期28.90年)→β崩壊→イットリウム90(64.053時間)→β崩壊→ジルコニウム90(安定)

大きさが1μm(0.001mm)の酸化ウラン微粒子1個からは年に3~4回放射線が放出される。
・大きさが5μm(0.005mm)の酸化ウラン微粒子1個ならば1日に1回放射線が放出される。

1回の放出でもリスクはある。
ウラン238の半減期は44.8億年である。
それに比べてヨウ素131の半減期は8.0207日である。
微粒子の大きさが同じならば放出回数がもっとずっと多くなるということである。
1回の放出でもリスクはあるのに沢山放出があれば・・・。
現状、半減期が短いと放射線被爆リスクが高いということになる。
だから事故後真っ先に「ヨウ素」が取り沙汰された。
しかし反面、ヨウ素の半減期が短いために、その間に何もなかったからと放射線被爆から解放されたような気持になっていった人も多かった。
ヨウ素131は多くの放射性物質の1つに過ぎない。
またヨウ素を取り込んで被爆したとしても外部被爆による急性の放射線症ではないのですぐに影響が現れるわけではない。一般的には4~5年でも早いくらいである。
但しヨウ素は半減期が短い(被爆リスクが高い)という特徴があるので、それによって出現時期も早いと考察することも出来なくはない。
原発ではヨウ素131が生成される可能性のあるウラン235の比率は3~5%。
97~95%はヨウ素131を放出しないウラン238である。ウラン238の崩壊ではβ線より電離能力の高いα線を放出する。
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by yumimi61 | 2017-01-11 12:06
2017年 01月 10日
日本国憲法の秘密-445-
高齢者の罹患は社会的に盛り上がらない、若年者の罹患のほうが訴求力が高い。

そこで原発事故でクローズアップされたのが甲状腺がんである。
甲状腺がんを発症する年齢は10代から高齢者までと非常に幅広い。
言い換えると小児と呼ばれる若い年齢層でも大人と同様に罹患する可能性がある珍しいがんなのである。
大人に多い胃がんや肺がんは小児ではみられない。(がんを見つけるための検査もしてない)

小児が罹患するがんを「小児がん」という総称で呼ぶ。(小児とは15歳以下を指す)
小児がんの中の割合。
①白血病 33%
②脳腫瘍 22%
③悪性リンパ腫 9%
④神経芽腫 6.5%
⑤骨腫瘍 4.1%
⑤軟部腫瘍(全身のあらゆる軟部組織に発生する腫瘍) 4.1%
⑦腎腫瘍(腎芽種) 3.5%
⑦網膜芽腫瘍 3.5%
⑨肝腫瘍(肝芽腫) 2.3%
その他 11%

①②③以外は大人ではまれなものばかり。
芽種は胎児期に細胞の分化が上手くいかずに、なるべき細胞になりきれず異常な細胞となり増殖して発生すると考えられている。これらには遺伝的要素があるものもある。
小児がんの場合には同じ腫瘍でも種類(病態)が沢山あり細かく分かれていて治療法も異なる。
大人の胃がんのようにがんが見つかったら手術して除去すれば良いというような単純なものではない。
そんなこともあってかつては小児がんは不治の病だった時代もあるが、現在はかなりの確率で治るようになってきている。

若い人のがんの進行は早いと言うが、小児がんは大人のがんよりも治癒率が高い。
現代では小児がんの70〜80%は治癒すると言われている。小児がんは不治の病ではなくなったということだ。
但し代わりに問題となってきたのが晩期障害・晩期合併症(Late Effects)である。
小児がんは克服しても、薬や放射線、手術など治療の影響(副作用や新たな疾病)がそのまま残る、あるいは何年か後に、場合にはよっては何十年も後に発症することがある。


日本では小児10,000人に約1人の割合で小児がんと診断されているような状況である。
1年に2,000~2,500人の小児ががんと診断される計算。
小児のうち10~14歳は死因のトップががんとなるが、それ以下の年齢ではがんがトップではない。

日本で甲状腺がんと診断されるのは、大人も含めて1,000人に2~3人くらいの割合。
そのうちの85%は、自覚症状が無く、進行も非常に穏やかな、治りやすい乳頭がんという種類のがんである。通常若い人が罹るのはこのがんである。
高齢になってからの罹患は若干予後が悪くなるが、それでも甲状腺がんで死亡する人は少ない。
甲状腺がんで問題となる(自覚症状があり、悪性度が高く、進行も速く、きわめて予後が悪い)種類のがん(未分化がん)は1%ほどである。発症するのは40代以降で高齢になるほど多い。
その他のやや問題になる種類の甲状腺がんを含めても、全体で90%は死を心配する必要はないがんである。
全てのがんの中でも最も大人しいがんと言われるくらい。

甲状腺疾患はがんよりも機能亢進症や機能低下症、甲状腺炎などホルモン異常事例のほうが遥かに多いし、現実的にはこちらのほうが問題となる。。
内分泌・代謝疾患のテキストを見ても甲状腺腫瘍(良性・悪性)の扱いはごくごく僅かである。


甲状腺がんとはそのようながんであるが、そのうえでリスクの話をすれば、甲状腺がんのリスクとして真っ先に挙がるのは放射線被被爆である。
この場合は若いほどリスクは高いとされる。
<リスク>
・放射線被爆
・遺伝
・体重増加
・ヨウ素(ヨード)摂取量
・ホルモン(ホルモン異常,経口避妊薬使用の有無,女性ホルモン補充療法の有無,不妊症治療薬使用の有無,乳汁分泌抑制剤使用の有無など)
・月経(初経年齢,閉経の有無,閉経年齢など)
・妊娠(妊娠回数,分娩回数,流産の回数,初回妊娠年齢,初回分娩年齢など)
・魚介類の摂取量
・アルコールや煙草

リスクがあるとかないとか何が決めるかと言うと「論文」である。
誰が決めるかと言えば、その論文を書いた学者や医療従事者ということになる。
実験や調査研究の結論で有意にリスクがあるとかないとか言うわけである。
これが「科学的に証明された」ということにもなる。
だけど前述したように調査者やその手法によって結論なんてどうにでもなってしまうものである。
だからと言うか何というか同じことを調べても真逆の結果がでることがある。リスク有りとリスク無しという論文がどちらも存在することはよくある。
そのどちらかだけを取り上げて何か言うならば「有り」か「無し」になるし、両方を尊重すれば「はっきりしない」「明らかになっていない」ということになる。
また調査数自体が少ないという場合もある。
「リスク有り」という論文を誰か書いたとしても、それ以外の人が誰も興味を持たずに調査研究していないという状態。それでも反論がないということで堂々と「リスク有り」と取り上げることも出来る。

放射線被爆は「有意にリスク有」りとされているが、この元になっているのは広島・長崎原爆後の調査とチェルノブイリ原発事故の調査である。
広島・長崎原爆後の調査で被曝量と甲状腺がんの発生には有意な直線関係が存在している、若い時の被爆ほどリスクが高いという結論が導き出されている。
但しこちらの調査は戦後すぐに行われたという状況ではなさそうだ。後ろ向き調査が主流だろうか。

チェルノブイリ原発事故では4~5年で甲状腺がんが増加したという報告があった。
一般的な大人のがんの場合にはリスクに曝露してから発生(発病)までにある程度時間があると考えられている。4~5年で発生というのは比較的短期である。
そのため増加したのはスクリーニングのせいではないかと疑われた。
スクリーニングとは集団全員を対象として「異常あり」「経過観察」「異常なし」などとふるいわけることである。
健康診断はスクリーニングの一種である。
事故が起きなければ調べることなどなかったのに、事故が起こったから調べた。
しかも原発事故なんていう特殊な状況で、調べる人も調べられる人も周辺の人々も平常心をやや欠いている。高ぶっている状態であるので余計にバイアスがかかりやすい。
しかしその後、スクリーニングだけでなく、症例対照研究やコホート研究(2つは代表的な観察研究である)もなされ、広島・長崎原爆と同様、被曝量と甲状腺がんの発生には有意な直線関係が存在していると結論づけられた。

■症例対照研究(ケースコントロール研究)・・・・後ろ向き研究
「異常あり」の集団と、「異常なし」の集団に対して、特定の要因への曝露状況を調査し、比較する。
特定の要因と疾病の関連を評価する研究手法である。罹患率を求めることはできず、リスクが何倍などと表される。
過去に遡ってリスク要因を調べていくので記憶に頼らなければならない。対象者から得た情報はどうしても不正確になりがち。
自分の記憶以外の情報から脚色されて自分のことだと思い込んでいることなどが考えられる。その傾向は「異常あり」とされた人に強い。
(原爆の被爆者があの日の空はこんなだった、とか言っているのを聞くといろいろと心配になる)
また自分の記憶も「異常なし」の人よりも「異常あり」の人のほうがよく覚えているという傾向が在り、記憶の程度からして違うため、そもそも両者が比較に耐えうるものではないという大きな欠点を抱えている。

■コホート研究・・・・前向き研究
特定の要因(リスク)に曝露した集団と、曝露していない集団を追跡して、研究対象とする疾病(例えば甲状腺がん)の発生率を調べる。
発生するかどうかも分からないものを長期間追跡するので、お金と時間がかかるという大きな欠点がある。
そのあげく、どちらもほとんど発生しなかったという悲惨な(?)結末も無きにしも非ず。
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by yumimi61 | 2017-01-10 13:54