人気ブログランキング |

by and by yumimi61.exblog.jp

カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

そして誰もいなくなった

e0126350_1359507.jpg




そして誰もいなくなった』はイギリスの作家・アガサ・クリスティの小説のタイトル。
原題は『Ten Little Niggers』であったが、Niggersが差別用語に当たるとしてアメリカでは『And Then There Were None』とタイトルを変えて発行された。
さらにストーリー中の'Niggers'という言葉も'Indians'に変更された。
これで問題解決と思ったのか、原題に準えた『Ten Little Indians』というタイトルが使われるようになる。
尤も最近では'Indians'も差別用語とする向きもあり、'Indians'が'Soldiers'と変えられる場合もある。

小説はある歌をヒントにした。
その歌のオリジナルはアメリカで作られた。1868年、『10 Little Injuns』というタイトルだった。
この歌をイギリスの作詞家がアレンジした。1869年、『Ten Little Nigger Boys』というタイトルになった。
この歌をヒントにアガサ・クリスティが小説を書いた。1939年、『Ten Little Niggers』というタイトルだった。
後にNiggerはIndianに変えられ、歌は『Ten Little Indian Boys』となり、小説は『Ten Little Indians』となった。

後発のマザー・グース『Ten Little Nigger Boys』のほうが『10 Little Injuns』よりも人気が出てしまった
マザー・グースは主にイギリスで作られている。歌詞に様々なバリエーションがあることも多い。また残酷な描写があることでも知られている

アガサ・クリスティは小説にマザー・グースを絡めるのがお得意だった。
『Hickory Dickory Dock/ヒッコリー・ロードの殺人』もそうである。
私は以前その歌詞を少し書いたことがある。
ここにはマザー・グース『London Bridge Is Falling Down/ロンドン橋落ちた』が登場する。
そこに書いた英文は『Mary Poppins Opens the Door/扉をあけるメアリー・ポピンズ』に書かれているものである。



●『そして誰もいなくなった』でキーになっているのはRed Herring(ニシン)である。
私のこの記事にもニシンが出てくる。
こちらに載せた尾崎豊の文章の中にもニシンが出てくる。

●小説はアガサ・クリスティによって戯曲化され、その戯曲をもとに舞台や映画が数多く製作されている。
1987年にソ連で制作された映画は『Десять негритят』というタイトルで、ウクライナのクリミア半島オーロラ岬に1911年に建てられた洋館で撮影されたそうだ。

●1926年12月3日、アガサ・クリスティは自宅から忽然と姿を消した。
その後、彼女の乗っていた車だけが発見される。
ミステリー小説を地で行くような失踪事件に世間は大騒ぎとなったそうだ。
11日後に保養地のホテルに別人名義で宿泊していたアガサが確認され解決したが、本人はその期間の記憶が全くないという。
そのため何故失踪していたのか明らかになることはなかった。
しかしながらこの一件によって彼女は「ミステリーの女王」という地位を不動のものにした。


ふたつの歌、ふたりの歌

アメリカで最初に作られた歌の歌詞と、イギリスで作られた歌の歌詞を比べてみよう。
どちらも和訳は私によるもの。

『10 Little Injuns』

Ten little Injuns standing in a line.     並んでいる10人の小さなインディアン。
One toddled home and then there were nine.   1人が家に帰って9人になった。

Nine little Injuns swinging on a gate,    門で揺れている9人の小さなインディアン。
One tumbled off and then there were eight.   1人が転げ落ちて8人になった。

One little, two little, three little,    1人,2人,3人,4人,5人のインディアンの男の子。
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,   6人,7人,8人,9人,10人のインディアンの男の子。
nine little, ten little Injun boys.

Eight little Injuns gayest under heaven,    夢見心地に戯れる8人の小さなインディアン。
One went to sleep and then ther were seven,  1人が眠って7人になった。

Seven little Injuns cutting up their tricks,  彼らの企みを断罪する7人の小さなインディアン。
One broke his neck and then there were six.  1人が首の骨を折って6人になった。

One little, two little, three little,    1人,2人,3人,4人,5人のインディアンの男の子。
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,   6人,7人,8人,9人,10人のインディアンの男の子。
nine little, ten little Injun boys.

Six little Injuns kicking all alive,     あらゆるものに反抗する 6人の小さなインディアン。
One kicked the bucket and then there were five, 1人がバケツを蹴って(1人が死んで)5人になった。

Five little Injuns on a cellar door,      地下室の入り口にいる5人の小さなインディアン。
One tumbled in and then there were four.    1人が落ちて4人になった。

One little, two little, three little,    1人,2人,3人,4人,5人のインディアンの男の子。
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,   6人,7人,8人,9人,10人のインディアンの男の子。
nine little, ten little Injun boys.

Four little Injuns up on a spree,       どんちゃん騒ぎする4人の小さなインディアン。
One got fuddled and then there were three.   1人が酔いつぶれて3人になった。

Three little Injuns out in a canoe,      カヌーで漕ぎ出す3人の小さなインディアン。
One tumbled overboad and then there were two. 1人が水中に落ちて2人になった。

One little, two little, three little,    1人,2人,3人,4人,5人のインディアンの男の子。
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,   6人,7人,8人,9人,10人のインディアンの男の子。
nine little, ten little Injun boys.

Two little Injuns fooling with a gun,     銃を担ぐ(鉄砲ごっこをしている)2人の小さなインディアン。
One shot the other and then there was one.   1人が本当に銃に撃たれて1人になった。

One little Injun living all alone,       いつも一人ぼっちでいた小さなインディアン。
He got married and then there were none.    彼は結婚して幸せになった。

One little, two little, three little,    1人,2人,3人,4人,5人のインディアンの男の子。
four little, five little Injun boys,
Six little, seven little, eight little,   6人,7人,8人,9人,10人のインディアンの男の子。
nine little, ten little Injun boys.


『Ten Little Nigger Boys』

Ten little nigger boys went out to dine,   晩餐に出掛けた10人の黒人。
One choked his little self,and then there were nine.   1人が小さな自分にうんざりして9人になった。

Nine little nigger boys sat up very late,  とっても遅い9人の黒人。
One overslept himself, and then there were eight.  (それなのに)1人は寝坊して8人になった。

Eight little nigger boys travelling in Devon,  デヴォン*を旅する8人の黒人。
One said he would stay there, and then there were seven.  1人がそこに残ると言って7人になった。

*Devon(デヴォン)
Devonはイングランド南西部にある地域。う地名はその地に住んでいたケルト人を侵入者であるローマ人が名づけたもの。「深い谷に住むもの」という意味があるらしい。

Seven little nigger boys chopping up sticks,   薪割りをする7人の黒人。
One chopped himself in half, and then there were six.   のろまな1人が自分を割って6人になった。

Six little nigger boys playing with a hive,  蜜蜂の巣(都市やビジネス社会、先進国などの比喩)で遊ぶ6人の黒人。
A bumble-bee stung one, and then there were five.  マルハナバチ(都会人やビジネスマンの落ちこぼれの比喩)に1人が刺されて5人になった。

Five little nigger boys going for law,  法に訴える5人の黒人。
One got in chancery, and then there were four.  1人が裁判所に捕えられて4人になった。

Four little nigger boys going out to sea,  海に出る(海外に出る)4人の黒人。
A red herring swallowed one, and then there were three.  ニシンが1人を呑み込んで3人になった。

Three little nigger boys walking in the Zoo,  動物園を散歩する3人の黒人。
A big bear hugged one, and then there were two.  大きな熊が1人を抱えて2人になった。

Two little nigger boys sitting in the sun,  日光浴をする2人の黒人。
One got frizzled up, and then there was one.  1人が縮れあがって1人になった。

One little nigger boy left all alone, 一人ぼっちで残された1人の黒人。
He went out and hanged himself and then there were None.  彼は首を吊って死んだ、そして誰もいなくなった。


オリジナルはアメリカ民謡である。(青字の方)
これはおそらく子供時代の遊びややんちゃぶり、無鉄砲さ、子供ならではの純な正義感を描写したものだと思う。
いつも仲間とつるんで遊んでいた少年が成長して結婚するまでの歌で、ハッピーエンドである。

一報、イギリスで作られた歌は黒人を風刺した歌である。(赤字の方)
「Little Nigger Boys」とあるが特別に少年の歌ということではない。
Littleは人間的な小ささを、Boysは下働きや雑用係を表現している。
ボールボーイって言うでしょ?あれと同じ。下っ端ってこと。
だから大人でもいい。


●どこで教わったのか私もこの歌を知っていたが、口ずさめるのはこの部分だけ。

One little, two little, three little Indians
Four little, five little, six little Indians
Seven little, eight little, nine little Indians
Ten little Indian boys.
Ten little, nine little, eight little Indians
Seven little, six little, five little Indians
Four little, three little, two little Indians
One little Indian boy.



●アガサ・クリスティは小説では全員を殺してしまったが、戯曲では殺さなかった。
映画で採用されたのは戯曲のほうである。


by yumimi61 | 2014-03-25 10:46