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甍(いらか)百五十九

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正反対の理由

看護学生時代の病棟実習ではすべての科をまわったが、厳しい病棟実習の中でほんの少し息抜きできたのは、整形外科と産婦人科だった。
私だけではなく学生の間ではそういう評判にあった。
息抜きと言ってもサボっていたわけではない。病棟の雰囲気が他とは若干違うという意味である。
他の科よりも若い患者が多いためか、その2つの病棟はどことなく明るく希望があった。
もちろん生死に関わるような患者もいる。
整形外科ならば将来に亘って感覚と運動機能が失われてしまうような患者やスポーツの選手生命を絶たれるような深刻な患者もいる。
それでもその場所は希望が感じられる場所だったのだ。
しかしそれとは逆で、まさにその整形外科と産婦人科の医師はどこでも慢性的に不足している。(小児科医も同様)
時間が読めず、緊急を要する科だからではないだろうか。
いつ呼び出されるとも知らず手術にでもなれば長く拘束される。
プライベートな時間を確保しにくい。他の病院でのアルバイトもしづらい。
緊急対応するがゆえにミスも起こりやすく、患者の若さと結果の重大性から訴訟も起こされやすい。
昨今目指す科として人気があるのは、医学界ではマイナーな診療科とされた眼科、皮膚科、精神科だそうである。


臨床が嫌ならば研究医という道があるが、一般的に稼ぐ気のある医者ほどは稼げない。(大学院+研究+大学教員はセットもの)
医学部入学までの先行投資と入学の難易度や一人前になるまでの年月と収入を考えると、研究医は割に合うものではないかもしれない。
医学部の難易度が高いために理学部経由で目指す人が沢山いる(医学部と理学部ならば理学部を選択したほうが難関と名の通った大学に入りやすい)ので、基礎医学研究の世界には医師資格を持たない者もおり(というか研究の本場は理学部)、且つ肩書が重要視される世界なのでやり難さがあると思われる。
また閉じた世界なので概して地味であり患者に感謝されたり称讃されることもない。
研究分野が分化されすぎて(まさにミクロレベルで)、研究者間においても隣は何をする人ぞ状態。
学生を手懐けたり教授という肩書を獲得して教授風を吹かせるくらいしかないが、教授になるのも一般的には茨の道。
だから思うほどは人気がなく、博士号というのものも実は思うほど価値あるものではない(ような気がする)。

一定以上の頭脳または資金源もしくはその両方を持つ、ある意味昔より賢く合理的で現実的となった若者が、割に合わない仕事など選ぶわけがない。
それはメディアが人々に植え付けたイメージの表出でもある。
医療の世界は先行きが暗い・・・。


広げた理由

看護師養成の修業年限が3年だということをこちらに書いたが、この看護師というのは正看護師のことである。
正看護師は国家資格で、准看護師は都道府県知事免許である。教育課程や制度が違う。
看護協会が発表した2012年の看護師就業者数はおよそ145万人。内訳としては正看護師が107万で、准看護師が38万人(約26%)。男性看護師は8万7千人(6%)
准看護師は年々少しずつ減少している一方、養成機関(大学)が爆発的に増えているため正看護師と看護師総数は増加している。
この他、保健師が5万5千人、助産師が2万3千人ほど就業している。

看護系大学は現在226校あるそうだ。
看護師養成の修業年限は3年であるが、大学と名を付けてみな4年制にした。
かつて3年で仕上げていたものをただ4年にしたのでは能が無いと言われかねない。
そこで保健師の資格が引っ張り出された。
4年制大学ならば統合カリキュラムによって看護師資格のみならず、看護師と保健師2つの国家資格がセットで取れますと謳ったのである。
国家資格が取れると言っても、国家資格は大学を卒業しただけでは取れない。
看護師と保健師それぞれ別の国家試験に合格する必要がある。(試験日が違うので同じ年に受験可)
所定の教育課程を修了したならば、それぞれの国家試験の受験資格が得られるということなのである。
しかしこのカリキュラム統合が資格に混乱を引き起こしたあげく、大学の実態は「看護師養成に4年」となっている。

卒業要件に保健師国家試験受験資格が指定されている大学、要するに入学者全員が保健師国家試験を受験できる可能性のある大学は226校中20校くらいしかない。
それ以外の大学は保健師養成のための選抜試験を課し、それに合格した10~20人程度のみが進める過程となっている。
保健師養成を諦めた大学もある。(看護師国家試験の合格さえ危うくなってきている・・)
助産師も同様で選択選抜コースである。
看護大学が増えてセット教育を謳ってみたものの保健師や助産師の養成コースは相変わらず狭き門である。
そもそも看護大学に入学した全員が保健師資格を取得できたとしても、その数に見合うだけの保健師就職先がない。
病院などは保健師よりも目先の看護師を確保する必要があるし、看護師チームにとっては目の上の瘤はないほうがよいだろう。(看護界にはすでに正看と准看のトラブルの歴史がある)


新人類の出現

医業―医師の医学的判断をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を反復継続する意思をもって行うこと。業として行えるのは医師のみ(独占業務)。


ここで問題になるのが「人体に危害を及ぼすおそれのある行為」の範囲である。
これまでも医師以外が行う気管切開や静脈注射などが社会的に問題になったことがある。
保健師助産師看護師法には診療補助という医行為が明記されている。

第37条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない

第38条 助産師は、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならない。ただし、臨時応急の手当については、この限りでない。


医業は医師の独占業務なので医行為を行うことは出来ないが、医師の指示があったり、臨時応急の場合にはこの限りではない、つまり行えるということなのだ。
どのような医行為を看護師一般が行える行為として特定するかは、医師などが看護師の教育内容等から判断するそうである。

さらにそれより先にこのような記述もある。

第5条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第31条 看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和23年法律第202号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第5条に規定する業を行うことができる。


診療の補助(ある種の医行為を含む)を行えるのは「看護師」であるが、「保健師」と「助産師」もできると規定されている条文である。
近年問題になったのがこの箇所だったのだ。
なぜこれが問題として浮上したかと言えば、看護師養成の大学化(修業年限4年化)に伴って保健師養成を抱き合わせにしたからである。

1980年代後半までは看護大学は全国で6校しかなかった。
ほとんどの看護師はそれ以外のコースで看護師国家試験の受験資格を得ていた。
数少ない看護大学がどの程度保健師を養成していたのかはよく分からないが、一般的には保健師と看護師の国家試験受験資格が同時に取得できることはなかった。
何故かといえば学校が違ったからである。
保健師になるためには看護師養成課程を修了した後にあらためて保健師養成学校に入学する必要があったのだ。
だから看護師国家試験→保健師国家試験という順番を経るのが当然のことだった。

ところが乱立した看護大学は統合カリキュラムで教育し、大学卒業にともない、保健師国家試験受験資格と看護師国家試験受験資格両方を与えるという手法を取ったのである。
しかし現実には教育も然ることながら同時期に2つの国家試験を受験するというのもなかなか大変なこと。
看護師や保健師の国家試験の合格率は高いが卒業すれば受かるというものではなく、最終学年にはみな「国試対策勉強」を相当しているのである。
なにせ資格がないと働くことが(食べて生きてくことが)出来ないから。
「2つは大変だから1つでいいや」と思った人がいたのか、2つ勉強したけれども1つしか合格できなかったかは不明だが、看護師の国家資格を持たずに保健師の免許を取得する者が出現してきたのである。
看護師としての基礎が不十分な保健師の誕生である。
これだけでも十分に問題があるのだが、さらに問題だったのは法律である。
保健師は「診療の補助(ある種の医行為を含む)を行える」と31条に明記されていたからである。

その法律を作った時点では看護師免許を持たない保健師など想定していなかったのだと思う。
いわんやそんな人が現場で働くとは思いもしなかった。
ところがそうした新人類が現れた。これには業界も慌てた。
そこで「2007年4月以降から、新たに保健師になるためには、保健師国家試験の合格と共に看護師国家試験にも合格しなければならず、保健師国家試験に合格しても看護師国家試験が不合格の場合には保健師免許は取得できない」とのお達しを出した。
出ちゃった人はもう仕方ない・・・か。


異星人の出現!?

新人類のその上を行く人がいるかもしれない。
たとえば・・・かつてiPS細胞騒動を巻き起こした森口尚史さん。(奈良県出身、1964年生まれ、東京医科歯科大学保健衛生学科看護学専攻卒業し大学院に進学したようです)
医師でもないのにハーバード大学で心臓手術をしたと平然と言ってのけた方である。
医科学研究者とあるが医師ではないし理学部出身でもないが、日本や世界の名だたる大学の学歴・職歴をお持ちの方。
ここから見えるのは、医師はもちろんのこと、看護師・保健師・助産師の国家試験に合格していなくとも、大学や研究機関が採用すれば、医行為や医科学研究や携われるということである。
資格が大事な医療業界において「資格」ではなく「博士」で食っていく人類の出現である。
大学やら大学院やら博士論文やらがコネ(根回し)で歩めるならば・・その先にあるのは・・・。
もっと言えば実態はなく自称(はったり・詐欺など)だけで世間を欺いてきたのだとすれば・・・・。







by yumimi61 | 2014-11-06 18:48