人気ブログランキング |

by and by yumimi61.exblog.jp

カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

昭和 玖拾

グッドイヤーではなくてグッドウィルよ

e0126350_23241036.jpg


企業買収した際にかかった「のれん代」は正規の勘定科目として認められており、左側の資産の無形固定資産に計上してよいことになっている。
貸借対照表の右側と左側は同額であるから、買収価格がのれん代なしで純資産額と同額であれば、資産と負債もそのままの状態である。
そのままの状態で選手交代ならぬ株主交代をしたような感じである。

しかしのれん代を上乗せするとなると「のれん」という資産が増える。
資産というのはお金になる物、すなわち換金価値のあるものだけを言う。
本来換金価値の無い物や絶対に売らないと決めている物は資産とは見做さない。
「のれん」は形を持った「暖簾」ではない。無形固定資産に分類されるように、形は無く、目にも見えない。
実際に形にすることが出来て視覚化が可能で法的な権利を持つ「商標権」を継承したり譲渡予定ならば、商標権の金額を控除して「のれん代」を決定する。
このことからも「のれん」にはすでに財産価値が無いことが分かる。

そうは言っても無形固定資産に科目があるのだから資産計上する。
左右対称なのだから、資産が増えるということは負債も増える。負債側にも反映されなければおかしい。
どこかから資金を借りてのれん代を払ったならば負債の部が増加し、株主の増資によって支払われたならばその分だけ純資産の部(株主資本)が増える。
右と左はそれで釣り合う。こういう理論になる。
負債は返金を伴い、増資は返金の必要がない。資産とのバランス関係にあるが他者資本である負債が増えるということはそれだけ経営破たんリスクが増していく。


固定資産の減価償却と、のれん代の償却

以前減価償却のことを何度か書いた。
長期間使用できる固定資産の取得に要した費用は一括計上するのではなく、一定の期間(物ごとに定められた法定期間)に亘って分割計上するという方法。
減価償却には税収入の安定化という国側の事情もある。
固定資産というのは購入価格と時価という2つの価格がある。購入時の価格の価値をずっと維持できるかと言えば、それはかなり難しい。固定資産は価格変動が大きいものである。
それと同時に固定資産は会社の売上(営業利益や経常利益)に長きに亘って関係することが多い。
その固定資産が無くては会社の事業が行えないような場合にはずっと必要経費であると考えられる。
要するに固定資産は、資産的価値という側面、売上との対応という損益計算の技術的側面、この2つの側面があり、両側面からのアプローチがあるので少々複雑である。
さらに償却時は実際には現金が動いていないためキャッシュ・フローにも注意が必要。


日本の会計基準では「のれん代」は20年以内で均等に償却することになっている。
国際的な会計基準やアメリカの会計基準では「のれん代」の償却は認めていない。

例えば、40億円の「のれん代」を2億ずつ20年で償却する。(減価償却をヘリコプターの例で紹介したこちらも参照

●10年目の貸借対照表では。
<借方>               <貸方>
(固定資産)              (固定負債)
 ・                    ・
 ・                    ・
のれん 4,000,000,000      のれん償却累計額 2,000,000,000 

※のれん(資産)4,000,000,000−減価償却累計額(負債)2,000,000,000=2,000,000,000 ⇒これが10年目の資産価値となる。
この方法では時期がくればいずれ資産の数字がゼロになって無くなる。

※損益計算書では必要経費に毎年200,000,000(2億円)が含まれてくるので、その分だけ毎年利益が減る(営業利益・経常利益の減少)。 

※償却の際に現金が動いているわけではない。

有形固定資産の資産価値と時価(市場価格)は一致しないことが多いということも以前書いたが、のれんに関して言えばもともと財産価値などない。
商標権もなにも含まれていない「のれん」をいったい誰が買ってくれるというのか。資産に計上されてはいるものの、その「のれん」だけを買う人はいないだろう。
実際のところ換金価値は無い。お金にはならない資産である。
そんな換金価値も無い資産のために会社は毎年利益を減らすことになる。

のれんに実際に価値があるとすれば、のれん代は高い値が付いてくるだろうから、買収する側の最初の出費が大きくなる。
それが自己資金ならばよいが他者からの調達だとすると、バランスをよく検討しないとペイできなくなる可能性も出てくる。
企業買収は実のところとても難しいものなのだ。

国際会計基準では左側の固定資産に「のれん 4,000,000,000」を計上したらそのまま。その後毎年少しずつ償却して金額を減らしていくなんてことはしない。 
自社が買収してのれん代を決めたのだから、その責任は全て引き受ける覚悟が必要。
値札が付いていたものを言われるままに購入したわけではない、自分が値を付け、自分の意思で購入したのだ。
市場価値がなくとも資産は資産である。
それを尊重しつつも、「換金価値の無い物は資産ではありません!」を忘れたわけではない。
外国の場合、「のれん代」は会社の収益性が悪いと判断された時に、バッサリ切られる。
経営者が自ら行う時もあれば、監査法人や株主に強制的に指示されることもある。
収益性にも2つある。
売上に対していかに利益を上げたか(いかに少ない経費で儲けることが出来たか)という取引収益性と、資本に対していかに利益を上げたかという資本収益性である。
両方の観点が必要なことは言うまでもないが、日本などの場合、取引収益性に目を奪われがちである。
株式会社が株主のものであることを忘れてはいけない。
ここでの収益性とは資本収益性である。
それまでの事業成績を突きつけられるようなもの。うかうかしていられませんね。

●ある日突然。
<借方>               <貸方>
(固定資産)              (固定負債)
 ・                    ・
 ・                    ・
のれん 4,000,000,000      のれん償却額 4,000,000,000 


のれん資産消失。
この時、4,000,000,000が一時に損益計算の際の経費に計上されるため、利益が大幅に目減りして、多額の損失を出すということが起こる。


問題の研究開発費

のれん代に似ているのが繰延資産である。両者の共通点は資産計上されていながらも換金性を持っていないということである。

■旧法(商法)における繰延資産
創立費、開業費、研究費、開発費、新株発行費、社債発行費、社債発行差金、建設利息の8つ。
但し計上は任意。資産に計上して少しずつ償却していってもよいし、実際に支出した時に全額を費用として処理してもよい(資産には計上しない)。
少しずつと言っても償却期間は最長で5年。

■新法(会社法)における繰延資産
繰延資産の限定列挙が廃止され、計上については会計慣行に委ねられることとなった。
そこで、2006年に企業会計基準委員会が「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」として、株式交付費、社債発行費等(新株予約権発行費を含む)、創立費、開業費、開発費の5つを繰延資産と定めた。
旧商法で繰延資産だった研究費、社債発行差金、建設利息は新法では除かれた。

創立費や開業費はその名の通り、会社創立や開業のために必要な手続き等に掛かる費用。
それが無くては会社は存在しえず事業も行えていないので、会社そのものに関係する資産と見做す。
株式交付費と社債発行費等もその手続き等に掛かる費用である。会社の資本や資産と関係が深いため資産に含まれる。
それらは会社が存在する上で重要なものであったにしても、換金価値のある財産ではない。それ自体を他者に譲渡できるものではない。
これはやはり売上対応という損益計算の観点からの資産計上になる。
ちなみに会計上の繰延資産と税法上の繰延資産は若干取扱いが違う。(ここでは会計上の繰延資産の話をしている)

問題は研究費や開発費である。
Q:研究費や開発費は資産でしょうか?それとも費用でしょうか?
A:資産の本来の意味合いからすれば研究開発費が資産であるはずがありません。
  特許権が資産ということならば分かりますが研究開発の「費用」が資産というのは極めておかしな話です。

Aは私の答えです。
設備投資で機械を買えば、その機械は有形固定資産となる。
会社の事業に必要なソフトを買えば、それは無形固定資産となる。
形ある物は分かりやすいのだ。目に見えて手に取って触ることができ査定も売買することも出来るから。
無形固定資産の場合には形が無く目に見えない。見えないものだけに、その権利や価値には統一的な基準がある物が多い。
研究開発費を設備投資や会社の事業に必要なものとして考えれば、固定資産と見做せなくもないかもしれないが、事業に必要なものと言うならば単なる必要経費でいいではないかという話にもなる。
研究開発費を資産に認めるならば人件費だって資産ではなかろうか?そうね全てが等しく大事なもの、会社に必要ないものなんかないの!そうよそうよ!!とだんだん収拾がつかなくなってくる。

研究開発費を無形固定資産にするには明確で標準的な価値基準が無さすぎる。
たとえ価値が出るにせよ、どれくらいその価値が続き、どれくらいその価値を失うのか、判断しにくい。
苦肉の策が繰延資産であり、計上もそれぞれの企業にお任せします状態だったのだ。
これは企業側の事情に起因した策だと思う。

しかし計上したりしなかったり企業間で統一されていなければ比較が出来ない。
また見かけの利益を創出したり、債務限度を上昇させたり、税金対策に使われたりと、その時々で重宝に利用される可能性がある。恣意的操作に利用されることが否定できない。
そもそも「費用=資産」ではない。研究開発なんか何年何十年経っても成果が出ない(商品化できない)ものが山ほどある。
財産価値のない資産をさもさもあるように錯覚させるのを手助けしてしまい、企業会計本来の意図から外れる。

こうした問題の多かった研究開発費は原則として支出した時に費用(一般管理費か製造費)に計上され、必要経費に含むことに統一され、研究開発に当てられた費用は別途財務諸表の注記に記載されるようになった。
従来の研究開発費(研究費・開発費)の一部だけが開発費として繰延資産に計上することが認められている。
繰延資産に認められる開発費は創立費や開業費に似た性質の費用。新たに物事(開発)を始める時に掛かる初期費用と考えてよいと思う。
要するに企業の経営企画の発足や組織運営に直接関係するようなものが開発費で、日々の研究開発に関係する費用は研究開発費(研究費)である。
特定の研究開発目的にしか利用できない機械装置なども固定資産ではなく研究開発費(研究費)となる。
研究開発が成果を上げて製品化に漕ぎつけ、大量生産のために製造設備を購入したということになれば、その製造設備は固定資産となる。
例え研究が成功しても、それだけでは会社の利益には繋がらないのだ。
特許権を得て特許収入が入ってきても経費に食われれば利益は上がらない。
特許権による収入と資産価値も別物である。




by yumimi61 | 2015-06-09 23:14