by and by yumimi61.exblog.jp

やがてそこに。


by yumimi61
プロフィールを見る
画像一覧
カレンダー

有視界飛行✇✇✇✇✇✇✇✇

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか」
「この中に医療関係者の方はおりますでしょうか」

飛行中に急病人が出た時に航空機内でなされるアナウンス。
学界その他、航空機を利用する医師や医療関係者は少なくないだろうと思う。
急病人だってそう頻繁に出るわけではない。誰もが無事に飛行を終える方が圧倒的に多いのだ。
しかしそれだけに、このアナウンスは思うよりずっと医師や医療関係者を追い詰めるものとなる。名乗り出るべきかどうか逡巡する。

国際線ならば、そもそもアナウンスが聞き取れないこともある。
アナウンスは聞き取れたとしても母国語以外の言語で症状や経過を間違いなく確認したり何かを的確に指示したりすることが出来るのかという不安もある。

Gigazine 2016年09月06日
「お客様のなかにお医者様はいらっしゃいませんか?」で実際に医師が対処した結果、わかってきた問題点とは?


上空を飛行中の飛行機で急病人が発生し、医師による対応が必要になるケースは日本航空の場合だと1年あたり200件ほど発生しています。そんな場合には「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」というドクターコールが行われることになるのですが、実は処置中や処置後に思わぬトラブルが起こることが懸念されることから、対応を躊躇するケースがあることが指摘されています。

2016年に入り、日本の2大航空会社である日本航空と全日空は、医師が飛行機に搭乗する際にあらかじめ医師であることを登録しておく制度をそれぞれスタートさせました。これは、各社のマイレージクラブのアカウントを用いる形で登録する仕組みとなっており、搭乗時に登録者がどの席に座っているのかを把握しておくことで、措置が必要な事態が起こった際の迅速な対応を可能にすること、そして機内に従来のような「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」というアナウンスが流れることで他の搭乗者に与える不要な動揺を抑える狙いがあります。

あらかじめ医師の存在を把握しておくことで、客室乗務員の対応がスムーズになること、そして医師以外の乗客の場合は万が一の際にも手際の良い対応を受けることが期待できるため、誰にとってもメリットがありそうな制度ですが、実際には措置後の責任をめぐって訴訟騒ぎになりかねないなど、一筋縄ではいかない状況が存在しています。
この状況は日本に限らず、世界中で同じようなことが起こっています


医師や看護師は養成期間に、飛行中の航空機内で医療や看護を行うことを学んでいない。(ドクターヘリに乗る場合は別途研修や講習を受ける)
航空機内にどんな医療器具や薬品が搭載されているのかを知らない。だからそれが使いこなせる物なのかも分からない。
アナウンスの段階で傷病者の状態が提供されるわけではないので、専門の範囲内なのか専門外なのかということも分からない不安もある。
医師や医療関係者は訴訟を起こされるかもしれないリスクを常に抱えている一方、航空機内の対応や処置について感謝・謝礼・報酬がない(断ったとかいうことではなく、する気がない。医療者なんだから行って当たり前だと思っている)ことが多いことも消極的となる理由であると思う。出張中であろうと休暇中であろうとハイリスクノーリターン状態。
また出張中であろうと休暇中であろうと医師として仕事をするからには病院や大学の看板を背負っている。無意識的にも医師という資格やその看板が重く圧し掛かったりしてしまう。

航空会社も訴訟沙汰やコスト増は出来れば避けたいであろう。1人の乗客の健康や生命と多数の乗客の予定や安全、乗務員の労働やローテーション、いったい何を優先すべきなのか迷うこともあると思う。
会社としての責任を考えて動くと、せっかく名乗り出てくれた医師に対して資格提示を執拗に求め気分を害させてしまったり、その場で資格が証明できずに活用できないということもあるようだ。

なぜ医者は「飛行機の中にお医者さんはいませんか」に手を挙げないのか?
医師の本音 中山祐次郎 | 一介の外科医  2016年8月4日
 

一度目は筆者が医師になって4年目の駆け出しの頃、ヨーロッパの国際学会に発表に行く途中のフライトでした。英語のドクターコールがあり、私はすぐには反応しなかったのですが、おそらく名乗りでる医者が居なかったのでしょう、次に日本語のドクターコールがあったので立ち上がりました。

その方は意識がぼんやりとしていて、血圧を測定すると60/30とかなり低下していました。私は慌て、ざっと全身を診察しました。そして救急バッグから大急ぎで見つけ出した見慣れぬ針をその方に刺して「saline(生理食塩水のこと、点滴で使います)」とかかれたバッグの点滴をしたところ、幸い数十分で元気になりました。原因はおそらく迷走神経反射だったと推測しますが、機上の救急バッグだけでは何もわかりません。もしその方が心筋梗塞や脳梗塞など重病だったとしたら、私にはなすすべがなくそのまま死亡していたでしょう。

機上で治せるのか?

医師なら強くご同意いただけると思いますが、乗客の方がなにか致命的なものを発症した場合にははっきり言ってほとんど治せません。もし致死的な状況でも医者がいたらなんとかなるかな、というのは、

・機内食などのアレルギーからアナフィラキシーショックになった場合のアドレナリン投与による救命
・突然の致死性不整脈(VTなど)になった場合の除細動(AED)による救命

くらいではないかと思います。筆者は救急のトレーニング(6年も前ですが)も積み日常的に外科医として働いていますから、一通りの救命行為は可能です。心臓マッサージ・気管内挿管を含む蘇生行為、止血、そして胸腔穿刺など。しかしそれでも、機内で出来ることはかなり限られるでしょう。

医師が急病人に対応する時は、「原因」を考えつつ「生命徴候(バイタルサイン、血圧や心拍数など)を安定させる治療」を並行して行います。ところが機内ではまずこの「原因」を考えるところが極めて困難です。機内には10数種類の薬とともに、いくつかの医療機器(聴診器・血圧計・挿管セット・パルスオキシメーター・AED)がありますがこれらで出来る診断はかなり少なく、「命が危ないかそうでないか」くらいしかわかりません


ところで生理食塩水の saline。sarin にするとオウム真理教が製造し使ったという神経ガスのサリンになります。
発音が違うから聞けば区別が付くはずだけど(区別が付く人もいるだろうけれど)、ぱっと見たらどちらもサリンですね。


病院はチームで動いている。医師だけでも看護師だけでも医師と看護師だけでも成り立たない。
医師を診断を下したり指示を出すが、実際には自分で行わない問診、計測・検査や処置も多い。
学生時代や研修期間にはやらされたけれど、一人前になってからはほとんど経験がないという処置などもあり、看護師のほうが扱いに詳しいとか上手くできるということもある。
チームであるというだけで安心感はあるし、それとなく助言を求めることや助言することが出来る。
機内でも地上にアドバイスを求めることも出来るが、緊急時に医師という資格者がそれを行うのもハードルが高そうだ。

日経ビジネス 一介の外科医、日々是絶筆  中山祐次郎
私が機内のドクターコールに応じたときの話
第17回 飛行機の中では、医者は何もできない 2017年10月26日


点滴が英語で書かれていて分からない

 まずは点滴を入れるための針を血管に入れなければなりません。医者はこの針のことを「ルート」と呼びます。血管にいろいろな薬を入れるための通り道なので、ルートと呼んでいるのです。適当に皮膚に注射するのではダメで、血管の中に入れると一瞬で全身に運ばれるのです。この時私の頭の中には「ルート確保、そして点滴を全開で入れる。それをやりながらこの人の状態が悪い原因を考えよう」というプランが立っていました。これは、地上で発生し病院に運ばれたすべての救急患者が受ける治療でもあります。

そこで私は、すでに3~4人集まってきていたキャビンアテンダントさん達に「血圧計とか、ルートを確保するための点滴の針とか、生理食塩水があったら出してくれ」と英語で言いました。しかし彼女らは全員それらのありかが分からず、代わりに大きなボストンバッグ4つを持ってきました。「おいおい誰も分からないのか……」私は眩暈を覚えつつ、全部ひとりでやるしかない状況であることを認識しました。大急ぎで全てのボストンバッグを開け、血圧計や注射、点滴や消毒用のアルコール綿を探しました。そこで再び危機が訪れました。なんと、点滴のバッグがすべて英語表記で書かれていたのです。当時経験の浅かった私は英語が分からず、ただ一つだけわかった「SALINE」、生理食塩水を使うことにしました。しかも点滴の針も外国製で、見たことがないタイプ。点滴って、0.1mmくらいのブレで失敗するようなかなり繊細な技術が必要なので、普段使っていないものを使うのは非常にストレスです。さらに、今目の前の患者さん(私の頭の中ではこの女性はすでに「患者さん」でした)は血圧が低く、血管が縮んでしまっているから点滴の針を刺すのが難しい。その上点滴の針はかなり細くて使えないものか、異常に太いものしか入っていない。さて、どうしたものか……。

頼む、入ってくれ点滴の管よ

 私はばたばたと動かしていた手を止め、一つ深呼吸をしました。このような場面、つまり自分がリーダーかつただ一人のプレーヤーで、条件が悪い戦いではパニックになったら100%自滅します。よし、これで落ち着いた。まずは現状分析だ。そう思い、血圧を測りました。血圧計も「水銀柱」というアナログのもので、国内のほとんどの病院では使っていません。私はたまたま学生のころ離島の診療所に行ったり地域の巡回診療をしたりした経験がありまして、このアナログ血圧計に慣れておりました。なんとか測ると、血圧は60/30mmHg。やはり危機的な数字です。よし、次は点滴だ。

 点滴を下げるための棒(点滴架台といいます)も当然機内には備えられていませんから、テープで点滴バッグを高い位置に貼り付け、そこから細いチューブをつなげて先端を患者さんのすぐ近くに置いておきます。なぜこんなことをするかというと、一人ぼっちだからです。他に医師やナースがいれば、そっち準備しといて、で済むのですが、一人きりでやらねばならずこんな準備をしました。そして、さあ刺すぞ、となった時。


m3.com スペシャリストの視点第6回 この中に、医療関係の方はいらっしゃいますか?  呼吸器 内山伸(浅草クリニック)

場所は機内ですが、自分の中では救急外来で、キャビンアテンダント(CA)もCAではなく看護師のように思えてきて、あれこれ薬のことや医療機器のことを聞いても何のことやら? という感じで、ふとわれに返って「そうかここは機内か……」と考えた瞬間、着陸前のシートベルトサインの点灯のアナウンスが流れました。


余談だけど、薬や医療機器がどんどん新しくなっていき、ブランクがあると全く別世界に来たようになることが、妊娠出産子育てで職を離れた看護師の臨床への復職を妨げる理由の1つにもなっている。


Gigazine 2016年09月06日
「お客様のなかにお医者様はいらっしゃいませんか?」で実際に医師が対処した結果、わかってきた問題点とは?


上空を飛行中の機内は、医療用器材が大きく不足していること、そしてエンジン音などの騒音が大きいために、聴診器で呼吸の状態を把握することすら難しく、上空の機内で判断できることは「この患者の命が危ないか、危なくないか」レベルでしかないと語る医師もいるとのこと。普段では診療できない環境で医療行為を突然担わされ、しかも結果的に誤診だった場合には大きな責任を負わされるということになると、たとえ善意で命を救おうという気持ちがある医師であっても、急病人の救護に手を挙げることが難しいと感じてしまうことも当然といわざるを得ないのかも知れません。しかも、医師には助けを求められた際にその要請を断ってはいけないという応召義務が課せられており、場合によっては「医師としての品格」を問われてしまうという、非常に過酷な前提が存在しています。

このような状況において、医師がリスクの存在に惑わされずに職責を全うできるようにするための考え方「善きサマリア人の法」というものが、欧米では取り入れられています。これは、「災難に遭ったり急病になったりした人などを救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法であり、医師が訴訟などのリスクを恐れて対応を躊躇することで、救われるはずの命が失われてしまうことを防ぐ狙いがあります。

日本には「善きサマリア人の法」はまだない。



m3.com スペシャリストの視点第6回 この中に、医療関係の方はいらっしゃいますか?  呼吸器 内山伸(浅草クリニック)

 フライト中に遭遇する疾患として浮動感、意識消失、悪心、嘔吐、呼吸器症状、循環器症状が多いようです。New England Journal of Medicineに掲載された論文(2015; 373: 939-945)によると、フライト中に一番多い症状は失神で(37%)、次に呼吸困難(12%)、嘔吐と胸痛と続きます。これはフライト中の環境が影響し、特にSpO2は92-95%と低下します。

フライト中の急病人で一番多いのは失神である。
上記論文では37%とドクターコールの3分の1を占める。
この失神は迷走神経反射によるもの。いわゆる「脳貧血」である。

迷走神経反射 (日本救急医学界 医学用語解説より)
ストレス,強い疼痛,排泄,腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して,脳幹血管運動中枢を刺激し,心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応。脳幹血管運動中枢からの刺激は末梢各臓器の運動枝を介して,伝えられる。運動枝は骨盤内臓器を除く全臓器に分岐し,気管喉頭や消化管機能に影響を与える。本反射は生命維持のための防衛反応であるが,過剰反応をきたして身体異常を生ずることがある。排尿時の迷走神経反射により血圧低下をきたしたり(排尿時失神),迷走神経の過緊張により一過性の心停止をきたし失神することもある(迷走神経性発作vagal attack)。

迷走神経にはストレス・興奮・運動などによって上昇した心拍数を元に戻す働きがある。
これが過剰に反応しすぎて必要以上に心拍数を下げてしまうことがあるのだ。結果、脳に十分な血液が回らなくなる。
学校の朝礼で倒れるのはこの脳貧血である。
起立状態は血液が下に溜まりがちなので心拍数を上げて循環を活発化させる。心拍数が上がるので迷走神経が下げようとする。
つまり上げ下げのバランスが崩れた時に脳貧血は起こってくるが、起立状態だけでなくストレスや睡眠不足などの要因があることが多い。
この脳貧血が暑い時期に起こると熱中症として扱われることがあるということを夏に書いた。

今は深部体温が上がるという本来の熱中症以外にも脱水症、ヒートショック、脳貧血、過呼吸(過換気症候群)、貧血や低血圧、めまい症、パニック障害などが暑い日に起これば「熱中症」として扱われていたりする。
同じことが起こっても、暑い日でなければ熱中症としては扱われない。
これでは深部体温の上がった人(熱中症重症者=かつての熱射病と日射病)やその手前にある人が増えていなくても、熱中症となる人が増加するのは当たり前のことである。
熱中症が増えたのではなく、熱中症の概念を広げたからである。

学校の朝礼や集会で倒れたり気分が悪くなるという子は昔も今も季節関わらず一定数いる。
倒れる子は「貧血」と言われたりするが、学校の朝礼や集会で体調不良になるのは血液中の赤血球やヘモグロビンが不足している貧血ではない。脳貧血(迷走神経反射)である。
急激な自律神経失調によって、血圧や心拍数(脈拍)が低下し、一時的に脳に十分な血液を送れなくなる状態。
これが発汗による脱水と末端血管の拡張によって起これば、熱失神(とその手前の体調不良)ということになるが、起こる原因は様々で脱水や末端血管の拡張によって引き起こされたとは限らない。
ストレスやショックや不安を感じていることが多い。
もちろん暑さも人によってはかなりのストレスになるが、人が集まっている状態にストレスを感じる人もいれば、たまに見る校長先生や物々しい雰囲気、先生のとげとげしい緊張感にストレスを感じる人だっているだろう。
ここで何か起きたらどうしようと思うことが原因になることもある。
病院などでは採血時や注射時になる人もいるが、それは自分に何か(例えば針)が向かってくるということが大きなストレスになっている。
当然痛みもストレスになるが、直接何か起こっていない状態でも人は実際に体調変化を来たしてしまうことがある


迷走神経反射を誘発する要因は、長時間の立位、運動、恐怖感や情緒的不安定、痛み、高温、脱水、アルコール、睡眠不足など。
極端な場合は失神(意識喪失)が起こるが、失神の前兆としては、浮動感(ふらふら感)、発汗、視野のぼけ、頭痛、吐き気、あくび、熱感や寒気などがある。

航空機内は平地よりも気圧が低い。そこで心拍数を上げて低酸素にならないように身体は自動調節する。
心拍数を上げるので、下げようとする迷走神経も働くが、それが過剰に反応してしまい失神(脳貧血)となる。
航空機内は非常に乾燥しているので身体の水分が奪われて知らず知らずのうちに脱水状態となっていることがある。
起立ではないが座位が長く続き血液は下に溜まりやすい。
そんな状態で立ってトイレに行き、排尿して水分を出して腹圧も下がる。だから航空機内ではトイレでもよく起こる。
だけど突然倒れた見知らぬ人を背景も分からず何の検査もせずに「脳貧血」と決めつけるのは医師と言えども結構勇気がいると思う。





[PR]
by yumimi61 | 2018-09-17 17:32