人気ブログランキング |

by and by yumimi61.exblog.jp

カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

隙間

e0126350_1239541.jpg


「臆病な私に壁を打ち破る勇気なんてないよ」

「打ち破る必要はないさ。その壁に隙間を見つけたらいいんだ」

「それはズルイことなんじゃないの?」

「君はハーマン・メルヴィルという作家を知らないかな?」





「地上の狂気は天上の正気、彼はそう言ったんだ。君は自分が100%正気だと言い切れる?」

「それは・・・・」

「君が彼しか愛せないと心底思っていたのに振り返ったら嘘になっていたようにさ。
友の嫉妬話に辟易し寛大な愛を説いてた僕が、
君を愛したら救いようないぐらい卑小なヤツに成り下がっていたようにさ」

「でもそのときは嘘じゃなかった・・・」

「そうそのとおり。僕たちはいつも矛盾の中を生きている。そこから逃れることができない。
自分の狂気に蓋をしたと思っても、その狂気はしなやかに姿を変えるだけなんだ。
自由と責任は、人と自然は、決して相和しない」

「なんか絶望的な感じだね・・・。それ以上聞きたくないな」

「本だってラストまで読まなくちゃ面白くないでしょ、まぁ聞いて。
ハーマン・メルヴィルが書いた白鯨という本のラストは、
この本の語り手になっているイシュメールという乗員ひとりが棺桶のお陰で生き残るというものなんだ」

「棺桶で・・・生き残る・・・」

「僕にはさ、ハーマン・メルヴィルという作家がその隙間に何かをみていたような気がしてしかたないんだ」
by yumimi61 | 2007-07-17 14:33 | photo