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情景

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あの人が燻らす香りがシャツに付いて 洗濯機の前抱きしめ想った

香りよりもあの人の匂いを欲したとき 恋になった

その匂いに嫌悪した日 すべては終わったと思った

あの日の香りに思わず振り返った時 思い出になったことを知った





マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」の中に、
紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間に昔の記憶を取り戻すというシーンがあって、
匂いと記憶の関わりはプルースト効果と呼ばれている。

おそらく誰もが経験あることだろうと思うけれども、
香水やシャンプー、洗剤の香り、金木犀や沈丁花といった花の香り、、
ふとその懐かしい香りに接し、キュンとなって立ちすくむことがある。
それはいつも不意打ちで、完全に打ちのめされる。
打ちのめされて思う。
人が時空を超えることなんて本当は簡単なんじゃないかって。

そしてもっとやっかいなのが匂いだ。
匂いはたまらない。
というより、たまらない匂いがある。
香りというのは饒舌だが、匂いは基本的に寡黙だと思う。
だというのに、嬉しいのか、懐かしいのか、哀しいのか、何が何だか分からない気持ちが
どっと押し寄せあっという間に覆われてしまう。
そのままそこに埋もれてしまいたくなる。

冬の終わりにふと漂う春の空気の匂い
夕方の町の匂い
秋の田舎の匂い
赤ちゃんの匂い
お日様と埃をまぜて熟成させたような布団の匂い
湿度と温度を持った愛する人の匂い


綺麗に整えられたホテルではなくて、適度にちらかった自分の部屋。
ゴミひとつないディズニーランドではなく、焼きそばとチュロスのゴミが一緒に捨てられているような児童遊園地。
雑草一本見つからないゴルフ場ではなくて、クローバーの花が一面咲いてしまう近所の公園。
匂いにはそんな安心感がある。


私の好きな匂いの一つにお線香の匂いがある。
お香というと香りという感じもするが、ここではあくまで匂い。
お彼岸やお盆のとき町角でふいに嗅ぐお線香の匂いがとても好きだ。
ふだん仏壇のない家に暮らしているせいか、お線香の匂いのする家にいくと妙に嬉しくなる。
大丈夫だ、と思うのだ。
何が大丈夫というわけでもないのだけれど、唐突に大丈夫だと思ってしまうのだ。
それは、私の中に悠久の時間が流れているのかもしれないと思う瞬間でもある。


生きていくことってもしかしたら、出会った香りを抱いて、匂いを作っていくことなのかもしれない。
ならば、纏った香りを脱がされるのも悪くない。


あなたの匂いになりたい。

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by yumimi61 | 2007-10-11 12:33