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花実

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わたしがわたしで あなたがあなたで ほんとによかった

わたしとあなたが 別々でよかった

あなたが気持ちと形どっちが欲しいって聞くから

私達は愛してると言いながら何度もキスをした





『贅沢な半径2m』 (作り話です)

日曜の夜、彼はテレビで古いサスペンス映画を見ている。
私は空気になって本を読む。

「そっか、そういうことか」
彼が意味ありげな訳分からない声を急に発したので、
私も本を置いて、代わりに両手でミルクティーの入ったマグを握り締め、思わず画面に引き込まれる。
「ねぇ、この人はいい人なの?悪い人なの?」
「悪い人だけど、いい人なんだ」
「ふーん」
分かったような分からないような、何だか上手く煙に巻かれてしまった感じもしたけれど、
その煙の感じはとても心地よく、落ち葉で焼き芋をしたときの匂いを思い出していた。
サスペンス映画から焼き芋の匂いってへんなの、と一人でうけて、
それを喚起させてしまうような言葉を事も無げに放つ彼の横顔をまじまじと見た。
(そうそう、これ)
私は彼がこの部屋で見せる油断だらけの顔が好きなのだ。
そう認識するだけで、マグから伝わる温かさが身体に回っていくようだった。
(でも・・この部屋だけじゃなくて、いろんなところでこの油断だらけの顔を披露しているとしたら・・)
と思いかけたが、考えるのはやめて
「そんなことないよねー」
と彼に言った。
「いや、わかんないな。もしかしてもしかするってこともあるからな」
彼がさっきの続きの映画の話だと思って返事をしたので、私は可笑しくなって、愛しくなった。


<それからゆっくり目の前に座る愛しい男に視線を滑らせた。>
最後の一文がストンと胸に落ちて、安堵のため息とともに、目の前にいる愛しい男に視線を滑らせた。
(あれ・・・)
愛しい男は、私が目測つけて滑らせた場所よりもっと下にいて、さっきよりさらに油断きわまりない格好で寝息を立てていた。
「もう」
私はちょっと呆れたふりをして、呆れたふりをしている自分に嬉しくなっていることに気づき、恥ずかしくなった。


昼間の彼は、私の入る隙なんてないくらいにいい男なのだ。
いい男というものにもいろいろ種類があるとすれば、私が譲れないのは生命力の有る無しなのだけれど、
ここでいう生命力は、病気の有無だとか、体力が人並みはずれてあるとか、長生きしそうだとか、そういうことじゃない。
空に広げて光合成する葉も、地下に伸ばす根も、両方備えた、そんな魂を持っている人。
そのいい男が時々こうやってくにゃっと枯れたように気を抜くところがまた、たまらなく好きだったりする。
だから私は「もう、またぁ」なんて言いながら、ひざ掛けを取りにいく。


「まだ私も使ってないやつだけど、しょうがない、貸してあげる」
昨日アロマオイルを買いに行ったお店の店頭に並べられていて、
その色の美しさと毛足が長くむくむくとしたあったかそうな感じが気に入って衝動買いした
薄紫色のひざ掛けを起こさないようにそっと彼に掛けた。
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「キミと私はこれ」
去年デパートでこれともう一つの色をどっちにしようか最後まで決められなくて、
彼にじゃんけんをしてもらって決めたオレンジ色のひざ掛けをおもむろに広げて、犬を湯たんぽがわりに抱いた。
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「世間は知らないんだろうなぁ、このいい男の枯れ具合を。ねっ」
犬にそう言うと、犬は私を見上げてキョトンとした。
「キミと私のひ・み・つ」
犬を撫でてやると何事もなかったように眠り始めた。

半径2メートルほどの全世界。
この小さな世界にぎゅっとすべてがつまっていて、秘密に満ち溢れている。
濃密で贅沢な半径2m。


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その日そこの横を車で通ったら、キンモクセイの下で工事の人が休憩をとっているのが見えました。
なんだかとってもいい雰囲気だったので、私もあとで行ってみようと思い、犬の散歩の時に足を伸ばしてその場所へ。
そしたら、そこにはキンモクセイだけでなくて、ムラサキシキブもあって、その一角はほんとにいい感じ。

日本のキンモクセイというのはすべて雄株なので結実することがありません。
一方ムラサキシキブは、古くにムラサキシキミといって〝沢山の実がなる〟という意味を持つくらい実をつける植物。
この二つの木を並べて植えた人、素敵です。
いやいやそれは偶然で秋の植物を並べただけです、と言われそうですが、そうだとしても素敵な偶然です。
そしてこの道には<創造の道>という名前がつけられてました。
色がついていたのはこの二つの木だけで、後は地味な感じでしたが、そこがまたいいんでしょう、きっと。
創造の道で休憩してた工事の人も、なかなか素敵です。これも偶然でしょうか(笑)。

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by yumimi61 | 2007-10-17 17:23 | photo