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繧繝(うんげん)

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いつも通っている比較的往来の多い道を、その日は夕焼けにつられて右折した。
ぱーっと開けた視界には、グラデーションを描く山々と今まさに染めあげようとしている空が悠々と広がった。
しばしその景色を堪能して、いつもの道へ戻ろうと車を走らせていたその時だった。
突如それは目の前に現れ、私は息を呑んだ。
車だったので一端はそのまま通り過ぎたのだが、戻らずにはいられなかった。
空とその建物の色や佇まいが不思議に調和して、なんともいえない雰囲気をかもし出していた。

そこはお洒落な外国の街でもないし、それは観光名所になるような歴史的建造物でもない。
けれど。
心が震えた。

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その建物はどこにでもあるような個人経営の運送会社で、道の反対側にはトラックが停まっていた。
おそらくこの建物に色を塗ったのは、この会社の人だろう。
少なくとも塗装のプロではないということは窓枠の辺りをみればわかる、と思いかけたが
もしかしたらそれさえも狙いなのかもと考えてみる。
木の辺りだけ色が違うのはなぜなんだろう。
ただ単に塗りにくかったのか、木の影に見せようとしたのか。
この絶妙な色配分はどこから来たのだろう。
そういえばトラックアートなんていうものもあるけれど、そういうことをする人が施したものなのだろうか。
雨どいにつる植物が絡んでるなんて心憎すぎる。
とにかく、いろんな想像を喚起させる塗り方だ。


これがもしも素人によるペンキ塗りによって偶発的にできたものだとしても
誰かの緻密な計算の上に作られたものだとしても
この人はきっと、この地の空の美しさを知っている人なんだと思う。
ここから何度も夕暮れの空を見つめた人なんだと思う。
たとえばそれを本人が自覚していなくても
細胞の一つ一つにこっそりそういうことが沁みこんでしまった人なんだと思う。


少し前に書いた『光彩陸離』という記事の中で「奇跡的調和の賜物」という言葉を使ったけれど
まさしくそんな感じだ。
この空とこの建物に、出会えてよかった。
この建物が歴史的建造物でなくてよかった。観光地にあるものでなくてよかった。
しがない町の、しがない会社の建物でよかった。(しがない会社とは失礼?ほんとはすごいのかも!笑)
自然とはおよそ似つかわしくない運送会社の建物が、こんな風で本当によかった。



そういえば、運送の「運」は、幸運とか運命の「運」と同じ・・ 
運は・・・めぐりあわせ。
ということは、「運送」って、めぐりあわせを送るってことなのかな。
およそ似つかわしくない、ってこともなかったりして。
そう考えたら・・
なんだかすごく嬉しかった。



私は写真を撮っているというより、
いつもこんな素適な巡り合わせに写真を撮らせてもらっていることのほうが多い気がする。
なんだかじんわり幸せ。


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一枚目は北側より撮影。夕方。
二枚目は西側より撮影。夕方。
三枚目も西側より。日中。
方向、時間によって色が違って見えます。
特に驚くのは二枚目の窓の色。
窓が夕焼けを映して・・・ちょっと感動・・



by yumimi61 | 2008-01-14 22:44 | picture