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2015年 07月 26日 ( 1 )

日本国憲法の秘密-12-

「他人の悲しみも喜びも決して自分のものにはならないのよ」
そう言う彼女が持つナイフが魚を器用そうに切り分けていく様子を僕は見つめていた。
「どうして?そんなことはないんじゃない?」
「冬は好きよ」
僕の話を聞いているのかいないのか、彼女は時々素っ頓狂な返答をする。
窓に映る常緑の街路樹が僕から季節を奪っていくようだったが、僕に四季があるかと言えばそれも心許ない。
「守らなければいけないから。皮膚も頭蓋骨もそう出来てるんでしょ」
疑問なのか断定なのか、語尾の抑揚を掴みきれなかった。
「街の空気を遮断するみたいに何枚も重ね着して、ぐるぐる巻いたり被ったり覆ったり。どうしてか分かる?」
「それは寒いからだろうな」
「もうホントは分かってるくせにー」と彼女は口を尖らせたが、僕は正真正銘寒いからだと思っていたので少し面食らった。



国連憲章

前記事に「戦争と武力行使は同じものか?」と書いたけれども、GHQ案ではWarという言葉の他に、マッカーサー原則では使われていなかった「The threat or use of force」という文言が付け加えられた。
これについてマッカーサー原則とGHQ原案の違いに触れているWikipediaには次のように書かれている。

2.「The threat or use of force(武力による威嚇又は使用)」の文言が加えられた。 これは前年に国際連合原加盟国によって調印されていた国連憲章2条4を受けたものとされている。

そこでその国連憲章の第2条4項を見てみたいと思う。
第1章 目的及び原則
第2条 原則
4. All Members shall refrain in their international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any state, or in any other manner inconsistent with the Purposes of the United Nations.
(日本語訳)
すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

確かにthe threat or use of force という全く同じ文言が使用されている。
日本語訳が非常に分かりにくい気がするが、分かりますか?
「国際関係において、すべての加盟国は、領土保全や政治的独立に対する威嚇や武力の行使を、また国際連合の目的と矛盾する他の方法を自粛する。」ということだと思う。


集団的措置と集団的自衛

国連憲章の第1条に集団という言葉が含まれている。
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第1条 目的
国際連合の目的は、次の通りである。

1 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること、並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。

2 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。

3 経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。

4 これらの共通の目的の達成に当って諸国の行動を調和するための中心となること。
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「集団的措置」と訳されている部分の英語は"collective measures" である。
「集団的自衛」は英語にすると "collective self-defense" である。国連憲章の第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」の第51条にこの言葉が使われている。

第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。


国際連合に加盟していれば集団的措置を取る(措置に加わる)必要がある。
第51条は武力攻撃が発生した場合に言及しており、その場合は緊急性が高いので国連決議を待たずに自衛措置を取って構わないという、ある意味至極当然のことを述べている。
つまり集団的措置にも2つあることが分かる。
国際連合が決定する集団的措置と、安全保障条約などに基づく各国固有の集団的措置(集団的自衛)である。
国連の行う集団的措置は狭義には自衛に含まれないものもある。
武力攻撃されたならば、その国独自の自衛や安全保障条約などに基づく各国固有の集団的措置(集団的自衛)を取ってもよく、その自衛に関しては国連は一切関知しないと言っている。
「但し国連の方針が決定したらそれに従ってもらいますよ」という話なのだ。

ついでに第2条も見ておこう。
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2条 原則
この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。

1.この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。

2.すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。

3.すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。

4.すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

5.すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。

6.この機構は、国際連合加盟国ではない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。

7.この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。
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2条の7でも国連の規定より国の権限が優先だということが述べられている。
しかし、但し書きによって例外が指定されている。
第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」に基く強制措置の適用は、各国の権限に妨げられないというのだ。

国際連合安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為の存在を決定し、勧告を行うとともに、非軍事的強制措置・軍事的強制措置をとるかを決定することができる(第39条意訳)。
また、措置を決定する前に、事態の悪化を防ぐため、暫定措置に従うよう関係当事者に要請することができる(第40条意訳)。

第41条
安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。

第42条
安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。


第41条が非軍事的強制措置で、第42条が軍事的強制措置ということになるだろう。
ロシアが軍事力によって現状変更を行った(ロシアによる平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為があった)とみなし非軍事的強制措置(経済制裁など)を使用することを国連が決定したら、加盟国は皆それに従わなければならないということである。


集合的記憶

集団的措置や集団的自衛の集団にあてられている英語は collective である。
逆の言い方のほうがよいだろうか。collective の訳にあてられている日本語は集団である。
collective で思いだすのが collective memory という言葉。日本語では集合的記憶。
こちらは集団ではなく集合となる。集団と集合はどう違うのだろうか?
集合はそこはかとなくばらけている印象がある。同じ性質を持った集まりだとしても淡々とそこにあるといった感じで、精神性を持ち合わせない集まりというかなんというか。
集団にはやや団結力を感じる。集団としての意思や意志が生まれてくるような。いじめは集団に起こるのだと思う。
だから集団的措置や集団的自衛にいじめの片影を見るのかもしれない。
もちろんこれは確かな裏付けあったり理論に支えられるものではなく私の感じ方に過ぎないが、あながち的を外しているとも思えない。
数学では数字の集合と言うが集団とは言わない。ところが統計学において調査の対象となる数値は母集団と呼ぶ。

では集合的記憶とは何だろうか?
個人の固有な記憶ではないはずだ。
いくら一つ所に人が集まっていたとしても、ばらばらな個人的記憶は集合的記憶ではないだろう。



by yumimi61 | 2015-07-26 12:48