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2017年 10月 24日 ( 1 )

2015年6月5日の国家戦略特区ワーキングループヒアリング(愛媛県・今治市に対して)
山下一行・愛媛県企画振興部地域振興局長の発言より

地元定着の誘導措置でございますが、そこの資料に書いてございます。県単独の奨学金制度を設けて、大学が設定する地域入学枠と連動させるということでございます。
奨学金は、今のところ1学年10名を考えておりまして、他の四国3県にも呼びかけていきたい

具体的には、毎月12万円の奨学金を貸与し、6年間の総額で1人当たり864万円、経年ベース、6学年で全部にいたとしまして、県支出は8,640万円で、卒業後、県の公務員獣医師として9年間勤務すれば全額免除、JA等の産業獣医師になれば半額免除という形で考えてございます
今治市は、16.8ヘクタールの大学用地を用意いたしますとともに、市内事業者の獣医学部卒業生の雇用を促進するための人件費相当額の奨励金の交付、大学と地域の交流事業の助成といったことを考えております。



昨日の記事で今治市が土地を無償譲渡し建設費の半分を寄付することを書いたが、愛媛県は奨学金を出すという話を最初のヒアリングで行っていた。
大学はどこの大学であっても基本、全国区である。学生はどこからどこに行こうと自由であるし、大学も地域を限って募集しているわけではない。
但し例外があって、大学(学部)が「地域入学枠」を設けていることがある。実は医学部にはこれがある。地域枠入試と言われているものだ。
へき地の医師不足を解消するために設けられた措置で、受験生を大学のある都道府県内出身者に限るものと、限らないものがある。後者は就職先が限られてくる。


2003年に文科省が大学学部の新設増員の告示を行い、その中で医学部や獣医学部の新設増員を実質認めないことを告知した。
その翌年2004年に医師の臨床研修が義務化された。それまでは努力義務であり拘束力はなかった。

日本の医学部は6年制で、この課程を修了すれば国家試験受験資格が得られる。
医学部は他の学部のように卒業論文を卒業の要件としていない。
その代わり秋に卒業試験がある。それをパスしないと国家試験受験資格も得られない。
卒業試験は国家試験と同じような形で行われる(国試の模試のようなイメージ)(だからここでもし同じ問題が出されれば・・・)。
国家試験受験資格と卒業がかかってくるので、学生は過去問を繰り返し解くなど国試対策勉強を相当行う。(国試が受からないと、先に受かっていた就職先もパーになる)
所定の課程を修了して国家試験受験資格を得る医師や看護師の国家試験合格率が高いのは(90%前後)、事前に各学校がハードルを設けているからである。国試合格率は学校のメンツにもかかってくる。
年齢も経歴も問わない誰でも受けられる国家試験の合格率とそうした形を採っている国家試験の合格率を比べて単純に難易度やレベルは比較できない。


ちなみに2016年度の看護師国家試験の学校別合格率で一番低いのは東京大学である。(上智大学と合併した旧聖母大学の1名受験で不合格の合格率0%は除く)
東京大学医学部の健康総合科学科の合格率は60%(10名受けて合格者6名)。
東京大学医学部の健康総合科学科は全国で2番目に古い4年制看護学科。
1980年代には4年制の看護系大学は数校しかなかったと先に述べてきたが、その1校である。
その後に医学部保健学科と名称変更し、さらに名称変更した。
東大には4年制のこの学科とは別に3年制の医学部附属看護学校が存在していた。看護師養成は3年制がメインだった。助産師や保健師を目指すならばさらに専攻科や別の養成学校に進む必要がある(結果4年)。
だから看護4年制は看護教員や国家公務員養成だと思って私は看護4年制には進まなかった。
各地域に存在していた国立大学の医療技術短期大学部(3年制)の看護学科も1990年代以降に医学部保健学科(4年制)になっていくが、東大の看護学校も2002年に閉校し、もともと別にあった4年制に吸収された。

健康総合科学科では、環境生命科学・公共健康科学・看護科学の3 専修を設け、専修間の相互連携を図っています。
学部教育を担当する講座は14 あり、それぞれが大学院医学系研究科(健康科学・看護学専攻、公共健康医学専攻、および国際保健学専攻)に属しています。
教養学部の前期課程から本学科への進学定員は40 名です。進学生は全科類枠を含め、理科二類が中心ですが、最近は理科一類も増えており、また、文科各類からも受け入れています。
カリキュラムとしては、教養学部2年後期(A1期)から共通科目を中心に開講され、進学後の3年次A1期から原則として希望専修の科目を履修することになります。
看護科学専修の卒業者は看護師の国家試験受験資格が得られます。また、所定の単位を取得すれば、中学校教諭一種免許状(保健)、高等学校教諭一種免許状(保健)が取得できます。


東大は他の大学とは履修のシステムが少し違うので知らないと分かりにくいとは思うが、最近の傾向としては理科二類よりも文科三類からの進学者が多い。全体の6割は文科出身である。
看護師国家試験を受けているのは10名であるが、そのうち6名しか受かっておらず、膨大に増えた4年制看護学科の中で全国最低の合格率なのは伝統校である国立東京大学というわけである。しかも並外れて低い。
健康総合科学科出身の芸能人やアナウンサーがいるらしく東大医学部卒だとか在学中を売りにしていた人もいるようなので、なるほどといった感じである。
旧医療技術短期大学の国立大学保健学科はそんな合格率ではない。


合格率の高い医師や看護師の国家試験でも不合格になる人が10%程度いるが、合格すれば晴れて専門職業人として仕事に就けることになる。
但し6年間の医学部教育には難点がある。
医師免許を持たない学生は法律的に医療行為を行うことが出来ないので、6年も学んでも大学卒業したてでは例え国家試験に合格して医師免許を持っていたとしても医師としての実地経験は無いに等しい。
医学生も病院実習(ポリクリと呼ばれている)に出て主要診療科を一通りまわるものの医療行為が出来ないため見学しか出来ない状態である。
その点、看護学科では看護行為や診療の補助行為を実習で実際に行っていく。保健師養成なども同じである。
もちろん限られた実習期間なのでそれで十分だとは言えないが、見学だけということはない。


アメリカの医師は大学4年、メディカル・スクール(専門職大学院)4年の合計8年の学生期間がある。これを終了するとMedicinæ Doctor(M.D.)。当然これは医師免許ではないので医師として働くことはできない。
学生期間8年後に臨床研修が始まる。
まず主要診療科を一通り回るインターン時代が1年。
次に科を絞っての研修期間レジデンシー。期間は科によってそれぞれ違う(3~6年)。この研修期間終了後に認定試験があって内科医とか外科医とかになれる。
その先はもっと細かな分野となる専門医研修がある。
アメリカの医療ドラマ『ER』の当初の主人公カーターは研修医だった。
医師免許は日本の国家試験のような1発試験ではなく3段階に分かれていて、2段階を学生のうちに、3段階目をレジデンシー期間に取得することが多い。医師免許を取得するには大学進学から10年ほどかかるので30歳くらいになっている。


日本でも学生中に医療行為を経験することができないので、制度化される以前より医師の多くは大学病院などで臨床研修として指導医から卒後教育を受けていた。
それを義務化したのが2004年で、大学病院や臨床研修指定病院で厚生労働省が定めた2年間の臨床研修に従事する期間を研修医(前期)と言っている。
病院によっては独自に後期研修期間を設けているところもあり、研修医期間が数年に亘る病院もある。
但し研修医であっても医師免許は有しているので外部的には医師であることに変わりない。
便宜的に病院で働く経験浅い医師をみな研修医と呼んでいるが、法律上の研修医とは基礎研究に専念するなど臨床とは関わらない道を選ぶ医師に義務付けられている2年以上の臨床研修期間の医師のことである。それが終了したら診療業務からは離れる人達のこと。


義務化の前は学んだ大学の附属病院、あるいは大学と提携していた病院に入り(つまりは最初の就職先)臨床研修を積んでいた。
義務化の後は臨床研修をする病院(つまりは最初の就職先)を学生が自由に選べるようになった。
病院側の希望と独自試験、学生側の希望と点数、それに基づいて病院は希望学生に、学生は希望病院に順位を付ける。
それを基に一定の規則(アルゴリズム)に従って、コンピュータにより組み合わせを決定するマッチングというシステムで研修先(就職先)を決める。そして病院と学生個人が契約を結ぶ。
アメリカなどもマッチングが取り入れられている。
出身大学に囚われることなく就職先を選べるシステムが導入されたということ。
通常は5年生で大学附属病院で実習を行い、6年生でその他の病院を見学(実習)して希望するなら願書を出して試験を受ける。
一般的な大学生が行う就活のようなものであるが、就活は早い方が良いとか言って4年生や5年生を受け入れている病院もある。青田買い。

これによって大学やその地域は、医学生=医師確保ということにならなくなった。
学生を育ててもそこに根付くとは限らない。
根付かないくらいだから他からも集まらないと考えれば、将来的に病院経営は困難となってくる。
臨床から離れる研究者が増えれば尚の事。
なにか病院の問題が取り沙汰されれば希望学生も減るので隠蔽なんてことにも繋がりやすい。
大学附属病院を持つ大学は病院収入に支えられている部分もあるので、大学経営にも響く。



医師数が減っているわけではなく年々増えてはいるものの、各大学や各地域は先が読みづらくなった。
制度化(義務化)から2年後2006年、政府(第3次小泉内閣)は地域医療に関する関係省庁連絡会議を発足し新医師確保総合対策を打ち出した。
実はこの時に一時的に医師養成大学の増員を認めている。
但しそれは将来の養成分を前倒して現在にくっつけたもので、純粋に増員を認めたということではない。要するに将来今よりも養成数を減らさなければならない時期が来るが、期間内に成果を出した県は元に戻すだけでよい。

医師不足県における暫定的医師養成増について

①対象県、期間、増員幅
○ 地域における医師不足の現状にかんがみ、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨の下、②から④までに掲げる条件の下、下記の表に掲げる10県において、最大10人、期間は平成20年度からの最大10年間に限り、現行の当該県内における医師の養成数に上乗せする暫定的な調整の計画を容認する。

対象県の基準
平成16年の人口10万対医師数が200未満
ただし、同年の100平方Km当たり医師数60以上の県を除外
(注:全国の人口10万対医師数211.7、東京及び大阪を除く全国の100平方Km当たり医師数 59.1)

対象県
青森 岩手 秋田 山形 福島 新潟 山梨 長野 岐阜 三重

② 対象県が講ずべき措置
ア 当該県の増員後の医学部定員の5割以上の者を対象として、同一県内又は医師不足県での特に医師確保が必要な分野(救急医療等確保事業)における一定期間の従事を条件とする奨学金の設定。この場合、地元出身者以外の奨学金被貸与者の割合の上限は6割とする。
イ 養成増を必要とする県が、奨学金を貸与する医師の卒業後の活用・配置の計画を策定し、国(厚生労働省)に協議
ウ 地域に必要な医師の確保の調整も含めた医療計画と医療費適正化計画の国への事前協議

③ 県の措置の実施状況が②のアからウに適合しなくなった場合は、①の養成増の必要性が見直されたものとみなす。

④ 暫定的な養成数の調整を行った県において、養成増に見合って医師の定着数の増加が図られたと認められる場合に限り、前倒しの趣旨にかかわらず、当該暫定措置の終了後も、当該県における現行の養成数(暫定措置を講じる前の養成数)を維持できることとする。

⑤これらの方針の下での当該県の取組を前提として、関係審議会において、大学の具体的な定員の在り方について検討を行った上で大学の定員増の申請の審査を行う。

⑥定員増(学士編入学を含む )を申請する大学は、地域医療を担う医師養成のプログラムを策定し、実施するものとする。



但しこの増員は2004年の医師数を基準にしているので、医師数不足と臨床研修制度の確立は直接関係がないものである。
卒業後も同じ所に比較的長い期間拘束される時代の医師不足は医学部が少ない(定員が少ない)(学生が少ない)ということが多少関係してくるし、それに付け加えて人口の増減も関係がある。
人口に対しての医学部定員が他に比べて特別少なくないということならば、その医師不足は若手医師不足ではなく、ベテラン医師が定着していないことが考えられる。


上記の件も不足原因と対応がマッチしているような気はしないが、ともあれ、愛媛県が主張している獣医師の不足に対しても、不足と獣医学部定員や区域に相関関係があり、全国的に当てはまることで、それを客観的なデータで示せるならば、このようなアプローチが取れたわけである。(獣医師の場合、人口は基本的に関係なく家畜数がベースになります)







by yumimi61 | 2017-10-24 16:21