2018年 01月 21日 ( 1 )

2018年 01月 21日
日本国憲法の秘密-656- (外貨準備と貿易について)
ナチスは世界恐慌後の最悪な経済状態の中で政権を握った。
オーストリアのロスチャイルド系の銀行の破綻(閉鎖)を機にドイツの全銀行を閉鎖。連鎖的に企業が倒産し、ドイツ経済は壊滅的状態となり失業率は40%にも達していたという。


世界恐慌は1929年から始まった。
オーストリアのロスチャイルド系の銀行の破綻(閉鎖)は1931年5月。
ヒトラー内閣が成立したのは1933年1月30日。

世界恐慌後の失業者増加に対し、ライヒ政府(ドイツ政府)には抜本的な対策が要求する声が殺到していた。しかし財源不足な上に、資本市場が停滞している状況では公債発行もままならなかった。
1932年初頭より、政府内部では労働者雇用政策の財源を手形によって調達することが検討されはじめ、9月に発表されたパーペン計画、1933年1月に決定した緊急計画において採用された。
具体的には政府・公共団体が発注した事業を受注した企業が、公共金融機関を引き受け手とする手形を振り出し、ライヒスバンクが再割引を保証し、銀行または銀行団が割引き、期間内にライヒスバンクがこれを決済するというものであった。


・事業が行われる時の関係
 政府・公共団体(発注)(代金支払い)(債務者)→企業(受注)(代金受け取り)(債権者)

・しかしそれらの企業は公共金融機関に借金があった。
企業(公共金融機関にお金を借りた側)(債務者)←→公共金融機関(融資した側)(債権者)

・お金の流れを大きく見ると
政府・公共団体(支払人)→企業(手形振出人)→公共金融機関(手形所有)

・企業に入ってきたお金はどうせ公共金融機関に返すお金になるのだから、手間を省いて政府・公共団体が直接公共金融機関に支払うようにする契約を結んだ(為替手形)。

企業(手形振出人)
政府・公共団体(支払人)→公共金融機関(受取人)(手形所有)

・手形には支払い期日が定められている。すぐに支払いが行われないので金利が乗る。しかし手形所有者が期日前に現金が欲しくなった場合(資金調達したい場合)に割引手形として売ることが出来る。手形所有者が手にする現金は期日までの残りの日数の金利分を引いた額である(満額よりも少し安くなってしまう)。

・割引手形を手にした新たな手形所有者に対して期日に支払人より満額が支払われる。(買った額より受け取り額のほうが多い。少し得をするということ)

・割引手形がさらに売られる場合を再割引と言う。上記の場合、再割引を引き受けるのが中央銀行であるライヒスバンクとなっている。
中央銀行が銀行に現金を渡して、手形所有者が中央銀行となる。
ということは政府・公共団体(支払人)が支払う相手は中央銀行となる。

中央銀行がこれに応えるには銀行に支払うために中央銀行自身が現金を持っている必要がある。(あるいは中央銀行が所有している債券などを売って現金化する必要がある)
また国からの支払いがきちんと行われるのであるならば、国の借金であることに変わりない。
しかしながら中央銀行と政府が親密な関係であるならば何かと融通が利く。
中央銀行は紙幣が発行できる銀行なので、紙幣を幾らでも作り出すことが出来る。
やろうと思えば何でもできるが問題は帳簿をどのように辻褄合わせするかということ。他人の目(他国)をどのように欺くかということに尽きる。
国家の信用に関わることだからだ。
国債でも同じことである。
皆で不正をする、言うなれば「赤信号みんなで渡れば怖くない」という論理も一理あるが、お金の性質や時間の連続性、不正規模が大きくなることを考えれば、必ずどこかに、必ずどこかで、そのしわ寄せがやってくるはずだ。


ヒトラー内閣成立後の雇用計画でも踏襲され、1933年3月の緊急計画の拡大、6月1日の第一次ラインハルト計画、9月21日の第二次ラインハルト計画でも手形による資金調達が行われた。
帝国宰相アドルフ・ヒトラーはかねてから再軍備を唱えていたが、1933年2月9日の政府委員会において緊急計画は再軍備を実行するために最適のものであり、軍備を政治的に偽装する手段であると言明した。このため雇用創出計画が再軍備に流用されたという説も唱えられている。
1937年までの財政関係文書の多くは1945年の敗戦に伴う混乱の中で焼却されたか散逸してしまったため、このあたりの経緯は必ずしも明確ではなく、追跡も困難である



第一次世界大戦賠償金の変遷と世界恐慌、ドイツの手形による資金調達までの流れを見ておきたい。

●1919年 パリ講和会議・・1200億マルク

●1919年 ヴェルサイユ条約・・200億マルクの物資・金、債券400億マルク、賠償金総額については賠償委員会に委任。

●1920年6月 賠償委員会・・2690億マルク
分配率ーフランス52%、イギリス22%、イタリア10%、ベルギー8%、日本0.75%、ポルトガル0.75%、残り6.5%は協定非署名国のため留保。
ドイツが賠償支払いを履行しない場合にはルール地方またはドイツ全土の占領が定められた。⇒不履行で占領

●1921年5月 賠償委員会(最終決定)・・1320億マルク(約66億ドル、純金47,256トン相当)を外貨にて30年間に亘る年払い。賠償支払い監視のための補償委員会をベルリンに設置。
⇒以後、マルク暴落、過度なインフレ進行

●1924年ドーズ案・・1年目は10億マルク、5年目以降は25億マルク、それ以降は経済状況によって判断。
ドイツは賠償金を外貨ではなくてマルクによって支払えばよい。賠償受け取り国が両替する。
賠償金支払いのための公債を募集し、それによってドイツに長期融資する(ドーズ債)。ドーズ債はアメリカを中心とした米欧で引き受けた。
ライヒスバンク(ドイツ中央銀行)を改組し、政府からの独立性を高めた。審査機関である評議会の半数を外国人が占め、ドイツ金融への監督を強めた。

●1929年世界大恐慌・・ドイツの蔵相は財政均衡を保つために外債を発行しようとし、アメリカの銀行がこれに応じようとしたが、ドイツの中央銀行総裁であるシャハトが赤字は租税で賄うべきと反対を表明。シャハトは1930年にヤング案にも反対し中央銀行総裁職を辞職した。

●1932年ヤング案・・賠償残額を358億マルクと決定。外貨にて59年に亘る年払い。(最初の37年間は平均19億8800万マルクとドーズ公債融資の元本を合わせて20億5000万マルク、残りの22年間は16億から17億ライヒスマルクを支払う)
国際決済銀行創設決定。賠償金は国際決済銀行がドイツ政府から徴収し、債権国の中央銀行に分配する形式が取られることとなった。
⇒この頃すでにドイツはアメリカ資本で支配されていた。
 ドイツでは国民投票が行われたが、94.5%の圧倒的多数の賛成によりヤング案は批准された。
⇒「ドイツ国民奴隷化法案」であるとして右派が反発。ナチスもここに含まれ、ナチスの台頭の一因となった。
⇒ヤング案制定に関わり、国際決済銀行構想を提案したのはドイツ中央銀行総裁シャハトだったが、国際決済銀行構想の矮小化に反発したシャハトはヤング案の反対に向かった。彼はドイツ民主党の共同創設者(1918年)であるが、1926年にドイツ民主党の左派寄り・リベラル志向を倦厭するようになり、同党を離党し、右派であるナチス(労働党)に接近するようになった。

●1933年7月・・ヒトラー政権が賠償金の支払いを拒否。
再開されたのは戦後ということだが、このあたりも何となく有耶無耶になっている気がしないでもない。
シャハトはヒトラー政権で再び中央銀行総裁となり(1923-1930、1933-1939)、一時期は経済相(1934-1937)も兼任したが、しだいにヒトラー政権とも意見が合わなくなってくる。


ドイツの賠償金は金額の多さも然ることながら外貨で支払わなければならないことがドイツにとって大きな痛手であった。(賠償額はヤング案で減額された)
自国で作れない外貨は外の市場に求めなければならないので、市場を巡る闘争が不可欠となってくる。外貨を稼ぐには貿易収支を自国に有利な状況にしておきたい。
ケインズが主張していた「各国が自国政策によって自国に完全雇用を実現」することはなかなか厳しい状況となる。
1921年後のインフレは外貨を調達(外貨と交換)するために自国通貨を大量に放出(増幣)したことによって起こったものである。
インフレは世界経済にとって健全な状態ではないので(投機家にとっては歓迎すべきものかもしれないが)、ドーズ案ではマルクでの支払いが許された。
だが世界恐慌で再び状況が変わり、ヤング案では外貨支払いに戻った。そのヤング案に反対していたのがナチスであったり、当時ドイツの中央銀行総裁だったシャハトだった。彼らは外債も嫌った。外国資本が大きくなると国の経済が外国に支配されていってしまうからだ。
だが彼らが手形という形で増幣させていたならば、結局のところ同じような結果を招くことになる。


ドイツはナチスのヒトラー政権になってからあっという間に景気回復したという話を先に書いたが、ヒトラー政権は発足半年後に賠償金の支払いを拒否している。
賠償金分を投資に回せると考えれば景気回復はある意味当然である。
同時に賠償金支払いさえなければ景気がすぐに回復し失業者を減らせるような素地がドイツに存在していたことも確かであろう。
ただここでも痛かったのが外貨不足である。
資源や食糧が自国で完全に調達できる国ならばよいが、そうでない場合、どうしても輸入に頼らなければならない。そうなると外貨が必要となる。
賠償金の支払いを拒否したくらいだから対外的に円満とは言えない。心証を悪くしたり経済制裁的なものがあったりして、外貨を稼ぐことも資源や食糧を輸入することも難しくなる。世の中、上手く出来ていると言うか上手くいかないと言うか。
さらに悪いことにドーズ案の時に外国から借金している(外債)。せっかくマルク支払いが認められても外貨を借りたら元の木阿弥。
長期融資であっても利子の支払いは毎年行われるわけだから、それなりに外貨が必要となってくるし、満期時にはまとまった外貨が必要となる。








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by yumimi61 | 2018-01-21 17:24