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2018年 05月 20日 ( 1 )

石油と天然ガス

一般的に数億年前の生物の死骸が化学変化を起こしてできたものと考えられている。
主成分は炭化水素。
それに少量の水素、酸素、硫黄、窒素などが混ざっている。

炭化水素は炭素原子と水素原子だけでできた化合物の総称であり、分子構造の違いによって種類が分類される。
燃料ガスとして知られているメタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレンなどが炭化水素。(最も構造の簡単なものはメタン)


石油や天然ガスは様々な種類の炭化水素が混ざっている状態にある。
存在する化合物は数万にも及ぶと言われ、その全てが解明されているわけではないし、植物の産地や栽培方法によって抽出される成分比が異なるように生物由来とされる化石燃料もまた産地や油田による成分比率の違いも存在する。
また単に単一の化合物が集合しているというだけでなく、混合の状態は複雑である。
それらを踏まえた上で、化合物ではなく元素で石油の組成を見れば次のようになる。

炭素 83-87%
水素 11-14%
硫黄 0.1-3%
酸素 0.1-1%
窒素 0.1-1%
金属 0.001-0.1%


石炭

石油が生物由来なら石炭は植物由来と考えられている。

地中に埋まった植物が地圧や地熱を受けて石炭になる変化を総称して石炭化と呼ぶ。これは多様な化学反応を伴った変化である。
セルロースやリグニンを構成する元素は炭素、酸素、水素であるが、石炭化が進むに従って酸素や水素が減って炭素濃度が上がってゆき、外観は褐色から黒色に変わり、固くなってゆく。
炭素の含有量は泥炭の70%以下から順次上昇して無煙炭の炭素濃度は90%以上に達する。化学的には植物生体由来の脂肪族炭化水素が脱水反応により泥炭・褐炭になり、次に脱炭酸反応により瀝青炭となり、最後に脱メタン反応により芳香族炭化水素主体の無煙炭に変わってゆく。植物が石炭化する速度は地中での圧力や温度の影響を受ける。


セルロースやリグニンは植物の細胞壁の主成分。
そのセルロースやリグニンの主成分となる元素が炭素。それに少量の水素・酸素・硫黄・窒素といった有機物、その他若干の水と無機物(燃焼後に灰となる)を含んでいる。
一般的には地中の深いところにある石炭ほど酸素と水素の割合が減って炭素の割合が増える。
炭素含有量の違いによって物理的・化学的構造が大きく変化する。(炭素の割合が多いほどよく燃える)
人為的に炭素以外のものを抜く炭化作業を乾留と言っており、これによって出来るのがコークス(炭素燃料)で、副産物がタールなどである。
乾留は燃焼させない。燃焼させないことによって出てくるものが人々が大層嫌っているタールである。


・炭化水素を燃焼させると、二酸化炭素と水が生じる。
例えば、1リットルの灯油を燃焼させれば、およそ1リットルの水が生じる。

・炭素を燃焼させると、二酸化炭素が生じる。



大気汚染の原因物質とされている二酸化硫黄(SO2)と二酸化窒素(NO2)

それらは、石油や天然ガス、石炭に少量含まれる硫黄や窒素が酸化したり燃焼したりする時に出来る物質。

硫黄 0.1-3%  ⇒ 二酸化硫黄
窒素 0.1-1% ⇒ 一酸化窒素→二酸化窒素


硫黄
「硫黄の匂い」と私達は日常的に使う。
すると硫黄は無臭だ!と怒る人がいるらしいが、「硫黄の匂い」は昨日今日に始まった使用法ではない。
長くて、且つ非常に分かりにくいかとは思うが、宮澤賢治のこの詩を引用しておこう。
詩の内容としても大気に言及したようで興味深いものがある。


    風の偏倚    

   風が偏倚(へんき)して過ぎたあとでは

   クレオソートを塗ったばかりの電柱や

   逞しくも起伏する暗黒山稜(あんこくさんりよう)や

     (虚空は古めかしい月汞(げつこう)にみち)

   研ぎ澄まされた天河石天盤の半月

   すべてこんなに錯綜した雲やそらの景観が

   すきとほって巨大な過去になる

   五日の月はさらに小さく副生し

   意識のやうに移って行くちぎれた蛋白彩の雲

   月の尖端をかすめて過ぎれば

   そのまん中の厚いところは黒いのです

   (風と嘆息(たんそく)との中(なか)にあらゆる世界の因子(いんし)がある)

   きららかにきらびやかにみだれて飛ぶ断雲と

   星雲のやうに決してうごかない天盤附属の氷片の雲

      それはつめたい虹をあげ

   いま硅酸の雲の大部が行き過ぎやうとするために

   みちはなんべんもくらくなり

      (月あかりがこんなにみちにふると

       まへには硫黄のにほひがのぼった

       いまはその小さな硫黄の粒も

       風や酸素に溶かされてしまった

   じつに空は底のしれない洗ひがけの虚空で

   月は水銀を塗られたでこぼこの噴火口からできてゐる

      (山もはやしもけふはひじゃうに峻儼なのだ)

   どんどん雲は月のおもてを研いで飛んでゆきます

   ひるまのはげしくすさまじい雨が

   微塵からなにからすっかりとってしまったのだ

   月の彎曲の内側から

   白いあやしい気体が噴かれ

   そのために却って一きれの雲がとかされて

     (杉の列はみんな黒真珠の保護色だ)

   そらそら、B氏のやったあの虹の交錯や顫ひと

   苹果の未熟なハロウとが

   あやしく天を覆ひだす

   杉の列には山鳥がいっぱいに潜(ひそ)み

   ペガススのあたりに立ってゐたのだが

   いま雲は一せいに散兵をしき

   極めて堅実にすすんで行く

   おゝ私のうしろの松倉山には

   用意された一万の硅化流紋凝灰岩があり

    (明治廿九年川尻断層のとき以来息を殺してまち)

   私が腕時計を光らし過ぎれば落ちてくる

   空気の透明度は水よりも強く

   松倉山から生えた木は

   敬虔に天に祈ってゐる

   辛うじて赤いすすきの穂がゆらぎ

     (どうしてどうして松倉山の木は

      ひどくひどく風にあらびてゐるのだ

      あのごとごといふのがみんなそれだ)

   呼吸のやうに月光はまた明るくなり

    雲の遷色とダムを超える水の音

    わたしの帽子のしづけさと風の塊

   いまくらくなり電車の単線ばかりまっすぐにのび

    レールとみちの粘土の可塑性

   月はこの変厄のあひだ不思議な黄いろになってゐる



硫黄の硫は漢字的にはこれだけで「イオウ」の意味があるので、日本ではあえてそれに何故に「黄」を付けたんだろうという疑問が生じる。
日本では硫黄のことを「ゆのあわ」「ゆのあか」「ゆおう」とも言っていた時代もあった。
そのためイオウ(硫黄)という言葉自体がユアワ(湯泡)から転じたものではないかと考えられている。

デジタル大辞泉
ゆ‐の‐あわ【湯の泡】
硫黄(いおう)。湯のあか。
「―、白土(しらつち)また和松(ひきまつ)あり」〈肥前風土記〉


和名類聚抄(平安時代の辞書)
流黄 本草リュウ云、石流黄焚石也(和名、由乃阿和、俗云由王)
(現代誤訳)
本草リュウによると、石硫黄は焚石だとのことである(和名は湯の泡【由乃阿和/ユノアワ】、俗に言う硫黄【由王/ユオウ】)


石硫黄は硫黄鉱石のこと。
火山大国(温泉大国)である日本は自然生の硫黄鉱石が豊富に採れたらしい。
朝鮮や中国への進物にされていたほか、輸出していたこともあった。
つまりかつて硫黄はエネルギー資源だった。

そんなことから人々は温泉地特有の匂いを硫黄(ゆのあわ)の匂いと言っていた。
温泉地特有の匂いの元は硫黄と水素の化合物である硫化水素であり、つまり昔の人々は硫化水素の腐卵臭を「硫黄(ゆのあわ)の匂い」と言っていたということになる。
科学的な硫黄(イオウ)がどうこうという時代は、「硫黄(ゆのあわ)」よりもずっと後の事である。
「硫黄の匂い」は誤った使い方というよりは、そちらの使い方のほうが化学物質としての「硫黄(イオウ)」より先なのである。

硫黄(イオウ)
沸点 444.674 ℃。大昔から自然界において存在が知られており、発見者は不明になっている。硫黄の英名 sulfur は、ラテン語で「燃える石」を意味する言葉に語源を持っている。



硫黄は消防法の第2類危険物にも指定されている可燃性固体。
第1類は可燃物を酸化する酸化性固体だが、第2類は自身が酸化されやすく着火しやすい固体や低温で引火しやすい固体。
粉状(微粒子)の固体が空気中に浮遊し、そこに発火源が存在した場合には粉塵爆発を起こし燃焼する。
身近な所では小麦粉やコーンスターチなどを原料としたカラーパウダーなども可燃性固体であり実際に事故が起きている。消防法では指定されていないが自治体が小麦粉などを可燃物として指定している場合もある。

硫黄は水には溶けない。
前述のように酸化剤と接触したり混合すると発火したり爆発したりする。

硫黄が水素と結合したのが硫化水素。
硫黄は窒素、酸素、フッ素に比べると水素結合の度合いが弱い。
硫化水素は沸点が-60.7 °Cと低く、常温では気体で存在する。可燃性ガス。
また硫化水素は水に溶けやすい。硫化水素水はとても不安定で空気中の酸素により容易に硫黄と水に分かれてしまう。つまり硫化水素が酸化され、酸素が還元されるということ。

硫化水素はあの温泉独特の匂いのもとである。
硫黄成分を含む人間を含めた生物や植物はみな多かれ少なかれ、あの匂いのもとを持っていることになる。
糞やおならや口臭の匂い、たまねぎやにんにくの匂い、植物や生物が腐敗する時の匂いなどにもその匂いが混ざっている。

硫酸塩を硫化水素まで還元するという特別の働きをもった細菌を嫌気性菌という。酸素がなくても生きていける菌であり、地球が出来たての頃の酸素がない条件下で嫌気性菌は有害物質を浄化し、酸素や各種の有機成分を合成し、生命進化の土台を作ったと考えられている。
一方、酸素呼吸しながら有機物を分解する酸素が必要なタイプの菌は好気性菌である。
植物や生物が生きていくためには嫌気性菌と好気性菌のどちらもが必要である。良質な土を作る条件でもある。
硫化水素は好気性生物にとっては有毒であるが、硫化水素を栄養源にして増える好気性細菌もいる。
空気が少なく好気性菌が働かない状態では有機物が悪臭を放ってどろどろになって腐敗しやすい。


化石燃料に含まれるのは有機硫黄化合物(硫黄の共有結合)である。
有機硫黄化合物
硫黄原子を含む有機化合物の総称である。有機硫黄化合物に分類されるものは多岐にわたるが、一般的に不快な臭気を持ち、糖鎖(炭水化物の鎖)や硫黄の化合物を含む生物が生長するときの老廃物として、あるいは腐敗する際に自然に生成する。
海洋においても生物起源の硫黄化合物も生まれ、海水に含まれる。
炭水化物や硫黄は化学的に活性であり、生物が腐敗する過程で容易に生成し、天然ガスなどにも含まれる。


有機硫黄化合物は水素と結合して硫化水素にもなりうるし(化石燃料自体に硫化水素が含まれる)、硫黄や硫化水素を酸化(燃焼)すれば二酸化硫黄など硫黄酸化物にもなる。


二酸化硫黄という物質はそれ自体は不燃性であると言われることが多い。
しかしそもそも不燃性という言葉の定義をどのように考え、あるいはどこに基準を置いているのかという問題がある。
燃えやすいとか燃えにくいとか個人の経験や研究など導き出した性質なのか、消防法によるものなのか、一般保安高圧ガス保安規則によるものなのか、各自治体の条例によるものなのか。それによって微妙に変わってくる。
古紙や乾燥した枝葉などは現実的に燃えやすいが「可燃性あり」とか「可燃物」と言うかどうかといったようなこと。

消防法では前述のように硫黄という固体が第2類危険物に指定されている。
これだってそれ自体は不燃性と言えるものであるが発火も爆発も起こる時は起こる。

一般保安高圧ガス保安規則では次の物質が対象となっている。
硫化水素は含まれるが二酸化硫黄は含まれない。

一  可燃性ガス アクリロニトリル、アクロレイン、アセチレン、アセトアルデヒド、アルシン、アンモニア、一酸化炭素、エタン、エチルアミン、エチルベンゼン、エチレン、塩化エチル、塩化ビニル、クロルメチル、酸化エチレン、酸化プロピレン、シアン化水素、シクロプロパン、ジシラン、ジボラン、ジメチルアミン、水素、セレン化水素、トリメチルアミン、二硫化炭素、ブタジエン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、ブロムメチル、ベンゼン、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシラン、モノメチルアミン、メチルエーテル、硫化水素及びその他のガスであって次のイ又はロに該当するもの


二酸化硫黄は不燃性でそれ自身は発火したり爆発を起こすことはない。しかし塩素酸塩類や他の物質との接触や混合による化学反応で発火や爆発することがある。(江藤酸素の説明)

二酸化硫黄は還元剤であるが、酸化剤にもなる。
二酸化硫黄は水に溶ける。
また二酸化硫黄と硫化水素との反応では二酸化硫黄が酸化剤、硫化水素が還元剤として働き、硫黄と水を生じさせる。
硫化水素と似た性質を持っている。
毒性で言えば硫化水素のほうが遥かに高い。

硫化水素で自殺する人もいるくらいで、条件によっては即効性が高い。
オウム真理教の使用したサリンより爆弾のほうが確実だと前に書いたけれども、ガスを使いたかったならば硫化水素にするという手もあったと思うけれど。
でも毒性が強いと言っても温泉に行けばぷんぷんと硫黄臭(硫化水素臭)が漂う温泉もあるくらいで、だからと言って人がバタバタと倒れていくわけではない。
薄ければ全く効果はない。硫化水素に限ることではないが。

第一次世界大戦で、他の毒ガスが不足したため、有用ではなかったが2度化学兵器として、イギリス軍によって使用された。




by yumimi61 | 2018-05-20 16:55