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2019年 08月 22日 ( 1 )

コンベンション

 音が1秒間に移動する距離

音が出ると必ず反響音や残響音も生じるものである。
反響音や残響音の時間が短いにせよ長いにせよ、特別に響かない仕様にしない限り、響きが無ということはない。

クラシック音楽、特にオーケストラの場合は、反響音や残響音が比較的長いほうが良い。

身近なところで反響音や残響音が強く長いのは、お風呂場やトンネル、洞窟や鍾乳洞(あまり身近ではないですか?)など。
材質が音を反射させやすいものであり、空間も狭いので、響きやすい。

音波が壁などにぶつかって往復することによって反響や残響は生じる。
空気を伝わってくる音は、1秒間に340m進む。
単純に一方向に進むものとして考えれば、壁から壁までの距離が10メートルだとして、片方の壁際で音を出せば、34回(往復17回)往ったり来たりすることになる。もちろん音の大きさにもよるし、距離が進んだり壁にぶつかれば音はだんだん弱くなっていくので、その全てを人間が聴き取れるわけではないが、それだけの回数を音は移動しうる。
もし壁から壁までの距離が34メートルだとすれば、上と同じ音だったとしても10回(往復5回)しか移動しない。
だから大きな会場ほど響きは弱いし、さらに音源から遠ざかるほど音の大きさも小さくなる。


残響時間と周波数特性

残響時間とは、音源が音を出すのを止めてから、空間の音の平均エネルギー密度が最初の100万の1に下がるまで、音の強さで言えば最初の音の大きさから60dB下がるまでに要する時間のことと定められている。
スピーカーからピンクノイズを発生させて測定したりする。
簡単に言えば、最初の音の大きさが60dBだったならば、それが0dBになるまでの時間である。
従って理論的には、最初の音が60dBよりも小さい音ならば、もっと早くに聴こえなくなっているはずだし、60dB以上の音だったなら、残響時間よりも長く響いている可能性が高い。


残響時間が同じでも高周波音が残響になる場合と、低周波音が残響になる場合では、音の印象はだいぶ変わってくる。周波数によるバラつきがない空間が良いというわけでは決してない。
だから本来は周波数ごとに調べて、最適な音響設計をする必要があるが、この評価自体が難しい。

・クラシック音楽で言えば、低周波音は重厚感を出す。音に厚みを付ける。高周波音はエネルギッシュな力強さを表現する。
ロックでは、低周波音がリズムを担っている。またPA使用時などで大音量を出す際には低周波音の比重が高くなる。

・音の広がりは、低周波音のほうが様々な方向に広がる傾向が強い。高周波音ほど直進しやすい。

・吸音されやすいのは、高周波音のほうで、低周波音は高周波音の15~25%程度しか吸音されない。

・多くのホールは、125Hz以下(日本語会話音域より低い音、低周波音)の方が残響時間が長い。

前記事には低周波音は一般的には聴き取りにくい音だということを書いた(聴き取れなくても振動として感じることはある)。
若く健康で感度の良い耳を持っている人であっても、低周波音は通常の音よりも大きな音でないと聴こえない。
しかし低周波音は楽器ではわりと身近な音でもある。
音に対する感度が悪くなれば(聴力が低下すれば)、それこそ爆音でも出さない限り、この低周波音も聴き取れなくなってくるわけである。


つまり、
低周波音は、残響しやすいが、人間には聴き取りにくい音でもある。

高周波音は、残響しにくいが、聴き取りやすい音である。(但し10000Hz以上は30代以降は聴き取りにくくなる)


このように全く正反対とも言える特徴を持つ音を、例えば「残響時間を延ばす」とか「大きな音を出す」といった1つの対策だけで、調和のとれた心地よい音楽にしようとすることには無理がある。
全体の音量を上げても、正反対の特徴が解消されるわけではない。
全体の残響時間を延ばしても、正反対の特徴が解消されるわけではない。

低音域の楽器が聴こえるようにと音を大きくすれば、低周波音だけがやたら残響している破目に陥る。
もともと聴き取りやすい高音域の楽器が響かせようようと音量を張っていけば、低音域の音を尚更掻き消してしまう。

オーケストラや吹奏楽の生演奏などは、会場特性、演奏者(楽器)の位置、指揮者の判断と指示、演奏者の判断と技量、これらが本当に全てピタリと嵌らないと音響的には素晴らしい音楽にはならないし、素晴らしい音楽だったとしても聴く席によってなお微妙に違いが出ることは避けようがない。
聴力の問題は前回書いたので省略するが、生演奏においても、どうしようもないのが聴力の問題である。


反響すれば良いというわけではないホールや体育館

多目的ホールでは音楽コンサートだけではなくて、講演会や記念式典など多様な用途で使われる。
従って当然にスピーチがメインになる催し物も沢山ある。

学校の体育館も運動以外の用途は、合唱や楽器演奏もあるけれども、負けず劣らずスピーチする機会も多い。
学校以外の体育館は運動競技が主である。ただそれに伴うアナウンスは必須である。
体育館は広いから反響しやすく残響時間が長いという音響関連の記述をわりと結構見かけるが、反響しやすいのは狭い方であり、広い方ではない。
もっとも体育館が広いか狭いかということは、何と比べるかによるけれど。

体育館が反響しやすいとするならば、構造体並びに天井と壁と床の材質が反響しやすい材質だからであろう。窓がありガラスが入っていれば、ガラスも反響しやすい。
但し、予めスピーチやアナウンスを見込んで、また防音などのために、壁などに吸音(音漏れ)対策を施して建造していることもあるので、反響するかしないかは体育館によって違う。対策を施していても経年劣化することもある。
もっとも冷暖房完備ではない体育館は季節を選ばないと、何をするにも問題が生じる。限界というものがある。

競技用の体育館で周囲にぐるりと観客席があり、中央で演奏するような場合には、アリーナ型となり音響的にはあまり良くない。
学校の体育館にはステージが設置されているが、ステージ上に幕だとか窓にカーテンなどが吊るしてあり、それが吸音の役目を果たしてしまうので、それらの物は生合唱や生演奏には向かない。
そのわりにはスピーチやマイクを通した音楽が聴き取りにくいという場合には、おそらくスピーカーの種類や設置・配置場所、個数、音響機器の不足や設定などに問題がある。

話を聞き手に正確に伝えるためには明瞭度の高い音づくりをする必要があり、その場合には反響音や残響音が問題になる。まさにこれが障壁になってしまう。

歌詞のある歌の場合も、反響音や残響音が強いと歌詞が聴き取れないで不快感が増してくる(満足度が減少してしまう)ので、PAを使用して音量が確保されるロックやポップスでは反響音や残響音をある程度抑える必要がある。
歌詞を知っている場合には、脳内で、あるいは声に出して歌い、よく聴き取れなくても自分で補うので、多少不快感は緩和されるかもしれない。(ライブに行く時には予め楽曲を聴きこみ、歌詞を暗記するくらいまでになっておくことを、人は予備練習と言う?←観客の話です)


齟齬

Musicman-net 第78回 大賀典雄氏 ソニー株式会社 相談役  2010年12月18日 より

−−軽井沢大賀ホールは5角形で平行壁面がない作りだそうですね。

大賀:シューボックススタイル(長方形タイプ)にしてしまうと平行壁面ができて音が消し合ったり、増幅されたりして音が悪くなるんです。東京芸術大学に講堂ができたときにオープニングの式典があったんですよ。そのときに学長が話し終わったら誰かがすっと立って「今仰ったことがひと言もわからないんですけど」と言ったんです。私も本当に平行壁面というのはこんなに音を悪くするものかと思って。ウィーンの楽友協会のホールは平行壁面ですが、あれは立地の事情から平行壁面で作らざるを得なかったんです。だから両側に彫像をずっと置いていったわけです。他にも上から大きなシャンデリアをおろしたり、正面はパイプオルガンのパイプで音を反射させているのですが、そういうことができればいいけれど、ただのシューボックススタイルだと音が悪くなるに決まってると。


シューボックススタイルの講堂で、学長が話をしたら音響が悪く、何言っているか分からなかったという話だが、シューボックススタイルは反響しやすいのだから、そんなの当たり前。
オーケストラの音楽とスピーチを一緒に考えてはいけないと思います。

但しシャンデリアなど何か物が何かあったほうが(それが吸音性の低い物ならば)、反響音を拡散させて空間全体に響き渡らせる効果があるのは確か。特に直進性の高い高周波音を散らすことが出来る。

ウィーン楽友協会↓
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軽井沢大賀ホールは2005年4月に開館した。
大賀(1930年1月29日 - 2011年4月23日)は、その時75歳だった。
こう言ってはなんだが、聴力的にはかなり微妙な年齢になっていた。
しかも先に書いたように、ジェット機操縦などもしていた御方である。

中年期に入る頃には、健康を損なうようにもなっていた。
そうでなくても中年期は、身体的にも精神的にも感覚器的にも転回期にあたる。
それに加えて、それまでの激務と不養生がたたり、病気のデパートとまでは言わないが、病気とは随分と親しくなったのではないだろうか。
周囲の心配もあっただろうけれど、救急搬送されたことは10回以上に及んだそうである。
2001年には北京でオーケストラを指揮中に脳梗塞で倒れた。飛行機で日本に運ばれたが一時期は意識不明だった。
残酷かもしれないけれど、大賀ホールを建設する頃には、大賀自身はもう音響を語れるような健康体ではなかった。





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by yumimi61 | 2019-08-22 18:15